王将の豚辛ラーメン
運命の出会いって、無いと思っていた。
餃子の王将にある、豚辛ラーメンが美味しい。
美味しい、というより、美味しすぎた。
とても感激した、なぜもっと早く、なぜもっと多く、豚辛ラーメンを食べなかったのだろう。
悔やんでも悔やみきれない。
豚辛ラーメンのことは、以前から気になってはいた。
王将はメニューが豊富だ。同じ物がたくさんあるように見えて、そうでない。
例えば、学校のクラスのような。
似たようなグループで固まっていたりするが、皆それぞれ違う。
今日はあいつ、昨日はあいつ、迷ったらあいつ、というやつもいる。
いつも王将に行くと、だいたいセットメニューにするのだが、今回は意を決して他のページを…
いつも飯類や麺類、一品料理の欄を見て、やっぱり迷うからセットにしておくか、と無難な橋しか渡らないことが殆どであり、今回こそはと麺類のページとにらめっこすることになったのだ。
あの子、もとい豚辛ラーメンのことは、もちろん以前から知っていた
一目見たときから、実は気になっていた。
その気持ちにずっと蓋をしていた。
メニューの端っこ、そのページに堂々と映る、まるでクラスのマドンナみたいなラーメンには敵わないけど、端っこでポツンと佇むその姿に、どこか惹きつけられる。
いつかきっと、ちゃんとお目にかかりたい。
そう思い続けてどれくらい経っただろうか
もう気持ちが溢れて止まらない、この思いを伝えなくてどうするんだ、いまにも走り出しそうなドキドキと不安を胸に呼び鈴を押す。
「すみません、豚辛ラーメンをひとつ」
ああ、言ってしまった、もう後戻りはできない。
どう応えてくれるのか、不安だ、どうしよう、この判断は間違ってなかったよな、たった数分のうちに、先ほどの言動を反芻する。
そして目の前に、豚辛ラーメンが現れた。
ああなんてキレイなんだ、なんて美しいんだ。
わかってはいたが、想像はしていたが、いざ目の当たりにすると緊張してどうしたらいいのかわからなくなってしまう。
しかしもう逃げる事は許されない。
自分から言ったんだ、落とし前をつけなければ。
いただきます、と手を合わせ、いざ口へ。
好きだ。
我が目に狂いはなかった。あまりにも好きすぎる。
一目惚れ、一口惚れ。
なぜあなたをずっと知らずに生きてこれたのか、甚だ疑問でしかない。
いままでの自分を恨む、ただ自分を羨んでもいる。
ここから、豚辛ラーメン様、あなたを愛することができるから。
あまりにも美味い。
なにがこうも美味しいのだろう、言葉で形容し難い、とてつもなく旨味が溢れ出る。
さっき食べた美味しいを、いま食べた美味しいが超えてくる。
怖い、ここまで美味いともう怖くなってくる。
クラスの一軍ではないのかもしれないけれど、毎度のように陽の目を浴びることはないかもしれないけれど、
でも、いつも僕は、あなたの事を気にかけています。
陰ながら、いつも見守っています。
いままで、気づいてて気づかないフリをしててごめんなさい。
ちょっと、照れくさくって…
ただ僕は正直になります。もうこの気持ちに蓋をしません。自分の気持ちはしっかり伝えようと決めたんです。
だから今回、行動に移しました。
この気持ちに嘘はありません。
僕はあなたのことが好きです。でも僕のことを好きになって欲しいなんて、そんなおこがましいことは言いません。
ただ、許してくれませんか?
気持ちが溢れて止まらないんです。
これを書く間にも、もうあなたに会いたくなっています。
また近々、会いに行きます。
好きです、豚辛ラーメン。
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