029 報連相は部下に強いるものじゃなく上司の責任である
実は報連相は「上司の努力目標」なんだよね。
報連相を提唱した山崎富治さんの『ほうれんそうが会社を強くする』(1986)によると、報連相は「風通しの良い職場環境をつくるための手段」と書かれている。
ところが現在多くの職場では、あたかも部下の努力目標のように強いている。
そして誤用された報連相により、職場はギスギスとしている。
報告と連絡の違い
よく報告と連絡の違いが分からないと言われることがある。
と言いながら、ほとんどの人は無意識のうちに使い分けている。
まあ、感覚的に分かっているだろうね。
改めて両者の違いを示せば、次のとおりである。
このように報告には、考察や予測が含まれる。
これは報告書をイメージすれば分かりやすい。
報告には、要素として「目的」「行動」「結果」「展望」が含まれている。
目的を共有していない組織で「報告」を強いるのは無意味
報告には「目的」が含まれている。
このことはすごく大事である。
「共通目的」「コミュニケーション」「貢献意欲」が組織の3要素だけど、報告をすることが「組織づくり」になるからだ。
例えば、次のようなやり取りをどう感じるだろうか?
上記は「目的」「行動」「結果」「展望」のうち、部下に「行動」をやらせたケースと言える。
この場合、「言われたとおりに届けました」が報告になるかな。
でも、これじゃあ部下は宅配便である。
宅配便屋が報告しないように、部下も報告の必要はないと思うけどどうだろう。
むしろ報告すべきは上司の側じゃないかな。
目的と展望を握っているのは上司なのだから、これを共有せずに何を報告するのかと疑問に思ってしまう。
では、逆のケースを見てみよう。
上記は「目的」「行動」「結果」「展望」すべて部下が握っている。
従って、報告書はこれら4点が記載されたものになる。
特に重要なのは、繰り返しになるけど「目的」である。
自分自身で目的を見つけることを「主体性」と言うのだけど、主体だからこそ利害関係者への報告が必要になるんだよね。
チームがひとつの人格として動く場合「連絡」は大事
先ほど書いたとおり、連絡とは単に事実を伝えることだ。
したがってさっきのケース1は報告というより連絡に近いと思う。
でも、ケース1は連絡とも言えない。
なぜなら、組織の3要素のうち「共通目的」が感じられないからだ。
共通目的を持つ集団にとって、連絡とは「脳内のシナプス伝達」みたいなもので、常に発信しながら目的に沿った一体的な行動につなげている。
例えば、共通目的を持つチームによるラインのやり取りを見てみよう。
いかがだろうか?
みなさんもこういう他愛のないやり取りをしていると思う。
これが連絡である。
連絡は組織の3要素のコミュニケーションに該当する。
連絡を取り合うことで共通目的は強化され、ひとりひとりの貢献意欲が高まるのである。
相談とは「対話」のことである
さて、報告も連絡も、組織の3要素のコミュニケーションに該当することが分かった。
もちろん相談も同様である。
じゃあ、相談は報告・連絡とどこがどう違うのだろうか。
違いを整理すると次のようになる。
どういう場面で相談するのか想像してもらいたい。
実は相談は次の2種類の場面しかない。
人間関係、金、人生、経営…、色んな悩みがあるだろうけど、相談したいことって上記の2つしかないんだよね。
つまり、目的がはっきりしていない状態である。
ここで注意してもらいたいけど「何をしていいのか分からない」は、けっして手段の話ではないってことだ。
皆さんも経験があると思うけど、悩んでいる時に「こうすりゃいいんだよ」と手段を助言してもらっても納得することは少ない。
たまたまその手段が目的に合致していたら別だけど、ほとんどの助言は、上司風ふかしたマウント取りにしか聞こえないものだ。
ケース3を見てもらいたい。
ケース3は典型的に部下が行動しないパターンと言える
部下は「アプローチ方法」と言っているけど、聞きたいのは「私に合ったアプローチ方法」なんだよね。
これに対して、この上司は自分の成功体験を得意げに押し付けている。
上司は「これであいつも行動できるだろう」とほくそ笑んでいるかもしれないけれど、このアドバイスじゃ部下は行動できない。
それどころか「お前は何も考えるな、俺の言うとおりにやりゃあいいんだよ、でも失敗したらお前の責任だからな」と言っているようなもので、今まで以上に行動しなくなる可能性すらある。
これとは逆のケースを見てみよう。
いかがだろうか?
話し方はさて置いて、だいたいこういう風に部下の「やりたいこと」「できること」「求められていること」を確認しながら、部下の中に目的をつくり上げていく。
心理学者のアドラーも言っているとおり、人の行動はすべて目的で出来ている。
そこを外して行動だけやらせようとしたってうまく行きっこない。
報連相について一通り説明してきたけど、これらすべて組織3要素をつくり上げるための方策、「風通しの良い職場環境をつくるための手段」なんだよね。