絵事常々 -制作のながれ①-
こんにちは。
暖かくなってきて体の動かしやすい季節となって参りました。
ぼちぼち温めていた大きめの作品制作にとりかかっております。
今回の制作と並行して、どんなながれで描いているかのご紹介をしていこうかと思い立ち、筆をとった次第。気長にお付き合い頂ければ。
それでは早速。
1.エスキース~小下図つくり
絵を描き出す前に、どんな絵にしようかなぁと考える工程です。
人によってどんな風に作るかはありますが、
なんやかんやこの2つは作ってから本画に入る人が大多数かと思います。
これまた人によるかもしれませんが、
エスキースは無責任かつ気楽に頭から好きなイメージを湧き出しながらむふむふできる楽しい工程。
小下図はそんな好き勝手した自分を冷静に諫めながら情熱をたかめていく大人な工程かと。
お察しの通りエスキースの方が楽しいだけの工程で好きです。はい。
①エスキース作り
まずは、楽しい楽しいエスキース。
スケッチしたものを元に絵を作る人、頭の中のイメージを描き出す人、それぞれあるかと思いますが、難しく考えずにちゃっちゃか描いていきます。
チラシの裏やノートの隅や何でも良いので、とにかく出す。
手の運動にもなりますし、紙にペンをすべらす感触を楽しめるだけでも楽しい楽しいエスキース。
②小下図
しかしながら、楽しいだけでは作品にできないんです。
計画を練らねばいかんのです。
ということで、縮小版の図=小下図を作って参ります。
小下図では構図・形・色を決めます。
自由気ままなエスキース、これをそのまま本画にもっていくと
まぁ十中八九、迷います。
上からジャブジャブ描き直すタイプの画材・作風ならそれもよしですが
いかんせん和紙だし膠だし墨だし岩絵具だしで、
1つ大人になって小下図を作ります。(そんなに嫌いなわけではありません)
小下図の下書き
まずは構図や形決めです。
小下図はA4サイズ程度で作っているのですが(あとでファイルしやすい)
そのくらいの大きさのきれいめの紙に形をとっていきます。
エスキースの時には気ままにしていた構図・形をここで決めて、
なおかつ実際に作品となる本画の大きさも決めます。
いくつか構図パターンを作ったり、この段階でトリミングしてみたり。
私の場合はエスキース時にだいたい構図もかたまっているので
絵の中のそれぞれの形を詰めていく感じで作っていきます。
小下図の着彩
小下図の白描、あるいは下書きができたら、それを転写用にコピーします。
着彩はガッシュが便利なので、水でビシャビシャにしても良いように
水彩画用紙を使って小下図を作っていきます。
小下図用に水彩画用紙をカットしたら、ぴたパネに貼ります。
前までは薄いベニヤに水張りしていましたが、この方法を教えて頂いて
すごく便利だったので最近もっぱらそうしてます。
画用紙のセットができたら、着彩するのみ。
何を使っても良いので、とにかくイメージを落とし込みつつ、
冷静に絵画としての説得力や見せ方など煮詰めます。
ガッシュが便利なのはすぐ乾くのと上から塗っても混ざったりしない点。
細かな描き込みは色鉛筆などなど。
これで小下図のヤマをひとまず越えました。越えたとも。
今回は「落月」2作品で「落月 武蔵野」、「落月 山月」と題してます。
めずらしくの縦長画面。はてさて。
2.材料調達~草稿・大下図つくり
まだまだ本画は描けません。
小下図ができたらイチ早くすることは、パネルの発注です。
③パネルの発注
大学の時は学内の木工所でパネルをイチから作ったりもしましたが
そんなに器用でもなく機械もなく、手ノコでやる元気もなく、
材料費と手間を考えると発注したほうが色々な意味で安心なため、
馴染みの木工屋さんに発注・購入しています。
「タテ・ヨコ・厚み、日本画制作用」を電話でお伝えし、おおよその納品日をうかがいます。
後日、日時をやりとりしたらばアトリエまで運搬頂け、本当にありがたい。
今回は2枚で12,000円。
定型サイズと言われる規格の大きさのものでなく、私はよくよく変形サイズを頼みますが、おおよそ近い定型サイズに換算してお代が決まります。
④和紙の購入
次に和紙を買いに行きます。
こちらは画材屋さんで購入。
「日本画制作用和紙」というよく考えたら不思議なカテゴリですが
そうした和紙が2~3種そろえてあります。
パネルに張り込むので、少し余裕をみたサイズを購入します。
滲み止め加工のあるもの・ないもの、各種厚みもあるのでご随意に。
今回のものは「雲肌麻紙」の生(滲み止め加工のないもの)。
7×9判の生1枚でおおよそ25,000円。
こうした材料を気負わず買うために働いてますとも。
この和紙をかなり自己流の揉み紙にしたものを使います。
揉み紙の詳細は以前投稿の絵事常々に。
⑤草稿・大下図つくり
そしていよいよ実寸サイズにとりかかります。
少しわかりにくいかもしれませんが、転写用が草稿。
実際の大きさで全体の雰囲気を確認できるものが大下図でしょうか。
草稿も大下図も作らない方は多いです。
と言いますか、大下図は作らない人の方が多いかも。
草稿は小下図白描の拡大コピーや、もう直接本紙に描いちゃう!という形でこなされる場合が多いです。
私は〆切などなく時間に余裕のある身ですので作ります。
というわけで、私の場合はというと。
大下図
まず大下図を描きます。
「純白ロール紙」という、昔々に閉店される画材屋さんで購入した、
用途はよくわかっていない紙の裏面に描きます。
(今調べてみたら包装紙でした)
小下図(あるいは小下図の白描)をコピーし、方眼を書き入れます。
大下図用の紙にも方眼を入れます。
小下図が1/8サイズなので、小下図に1㎝方眼を入れた場合は
大下図には8㎝方眼が入ります。
方眼が入ったら、小下図コピーを握りしめながらひたすら実寸に描いていきます。ひたすら。
形が実寸で入ったら、全体をみて形や大きさが適当か考えます。
今回は月のフチ幅が8倍では広すぎたので、大下図では少し狭くしました。
あとは陰影など、小下図ではどうしても描き込めなかった部分を詰めていきます。
パステルや薄墨で色をつける場合もありますが、今回は鉛筆のみ。
おろしたての4Bの鉛筆がちびこくなりました。
実際の大きさで絵が現れてくると、それだけで嬉しくなってきます。
草稿
大下図に満足したら、その上にトレーシングペーパーを重ねます。
今度は転写用の草稿をつくっていきます。
草稿では線を起こすことが目的なので、
大下図の線をただひたすら律儀に起こし、形を確定させます。
もうエスキースの時の自由はどこへやら。
小下図・大下図・草稿の段階で、ひたすら同じ絵を描いて描いて描き写す。
これに本紙への転写が付け加わりますからね。
描きたい絵でなければただの苦行です。
とまぁ、こちらの入れ込み具合を試されるような工程ばかり。
早く描きたいと逸る気持ちを抑えながら
かと言ってあまり寝かすと描く意欲が削がれます。
上手に自分とお付き合い。
本日、無事パネルに水張りしましたので
また転写から着彩もまとめてお届けしたいなと思います。
さてさてどんな感じに仕上がっていくのでしょう。
最後まで読んでくださいましてありがとうございました。
それではまた次回の投稿で。