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芙蓉
2024年11月15日 22:00
私には、逃げ癖がある。いろいろなことから逃げるくせに、大事なことからは逃げないので大変にタチの悪い人間であろう。今回も逃げてきた。半年後に迫った就職、人間関係のこじれ、卒業論文。それらを投げ出し、バイクに夢とロマンの詰まったものだけを乗せて家を出た。旅自体に意味はないのだ。ただの問題の先延ばしである。家に帰ったら、またそれと向き合わねばならないのに。私は、いつまで逃げ続けていれば気が済む
2024年10月11日 16:12
9月9日、日も落ち始めた朝霞の夕暮れに私はいた。キャンプ道具と服一式、何かあっても簡単な故障ならすぐに直せるくらいの工具、パンクした時のチューブ、大量の煙草、夜にフラッシュバックする苦しい記憶から逃れて早く意識を失えるためのウイスキー。そろそろ走行距離が6万キロになろうとしているCT125に半ば無理やり詰め込み、親に挨拶を済ませた。「一日一回は今いる所の写真送るんよ。家族みんな心配しとるけ
2024年9月6日 22:15
9月2日、朝も明けぬ午前三時。まだいびきをかいている朝霞の街に私はいた。キャンプ用具にパソコン、着替えや食事などいろいろな物を詰めて、半年前から貯めていたバイト代20万を握りしめ、私は足つきの悪いCT125に飛び乗った。エンジンを掛ける。起き抜けのエンジンに喝をいれるように、私は勢いよく国道254号線・川越街道へと飛び出した。目指すは日本最南端・佐多岬。と、なるはずであった。お久しぶ