125ccで日本一周 西日本編#0 前途多難 埼玉県朝霞市
9月2日、朝も明けぬ午前三時。まだいびきをかいている朝霞の街に私はいた。
キャンプ用具にパソコン、着替えや食事などいろいろな物を詰めて、半年前から貯めていたバイト代20万を握りしめ、私は足つきの悪いCT125に飛び乗った。
エンジンを掛ける。起き抜けのエンジンに喝をいれるように、私は勢いよく国道254号線・川越街道へと飛び出した。
目指すは日本最南端・佐多岬。
と、なるはずであった。
お久しぶり、芙蓉である。突然だが、バイクがぶっ壊れた。
エンジンが壊れた訳では無いが、まあ、とにかくぶっ壊れたのである。
この記事を見ているバイクおじさん諸兄に説明を施すとしよう。まずシフトシャフトとシフトレバーが噛み合っているギザギザの部分が摩耗してツルツルになってしまい、ギアチェンジができなくなってしまった。そこで私はシフトレバーを交換しようとシフトレバーを留めているボルトを外そうとしたらボルトが折れた。こうして一速のまま動かないカスのカブが完成した。
しかも壊れたのは出発の5日前だ。
12時間かけて格闘したが折れたボルトが外せず、和光市にあるバイク屋さんに持っていったところ、一週間という時間と4万円を爆散させる羽目になった。
4万円はいいとしよう。また単発バイトを入れまくって稼げば良いのだ。問題は一週間という莫大な時間である。
ここでの機会損失は大変に痛い。私は一週間バイクを使えないことになったし、親が仕事で車を使っているため車も出せない。家の前を通る西武バスは全然来ない。
そんなところにメガネも壊れた。あとバーエンドがポロリした。どっか行っちゃった。川越街道の板橋区区間に落ちてるはずなんだけどな。
不幸とは大抵の場合、大挙して押し寄せるものなのである。
これらの対処に追われ、そしてロスしたお金を取り戻すために魂の単発6連勤をかましていたら、見事に時間がなくなってしまった。
ああなんという不幸まみれの人生!私はそう嘆き、ひたすらため息を付きながらカレンダーと日本地図を眺め、意識のある時間帯はひたすら酒を飲む毎日を過ごしていた。母親に「ため息ばかりつきよるけぇ不幸が舞い降りるんじゃ」と言われた。うるせえ。
私という人間はいつもそうだ。こういった大事な時の前には必ずと行っていいほど何かしら大きなミスをするのだ。ろくでもない人生である。悲観的にならざるを得ない。
人生において最後の長期休み・大学4年の夏休み。それをバイクの修理で無下にしてしまうなんて。
腹が立った。運命というものにムカついたので、今からでも佐多岬目指して家を出ることにした。私なりの、予定説への反抗だ。
本当は佐多岬まで行く予定だったのだが、おそらく無理そうだ。まあいい、行けるところまで行こう。行けなかったところは卒論が終わったときのご褒美にでも取っておくことにする。
さて、私はまだ卒論にほとんど手を付けていないので、旅行をしながらPCを持っていき、現地で卒論の執筆に追われる事になりそうだ。楽しそうで正直ちょっとワクワクしている。
とにかく、私は9月9日に埼玉県朝霞市を出発し、新学期が始まるその日まで、行けるところまで行くことにしてみる。
目指すは本土最南端・佐多岬。