【完全版】DeNAで20代を過ごして学んだ5つのこと
退職エントリを書こうと思ったのですが、個人の回想録よりも、学んだことをシェアした方が有益かなと思ったので、20代の学びBEST5を書きます。
その時々の危機を乗り越えるために、心に刻んでいた学びを書いている感じなので、『スラムドッグ・ミリオネア』だと思って楽しんでもらえると嬉しいです。
注意点としては、インド映画にならい、1万文字を超えてますが、読み応え抜群ということでお許しください。
ただ、記載する学びについては、社会人が直面するリアルな悩みを書いているので、どなたでも楽しんでいただけるかと思います。
※なお、キャプチャしてTwitterに投稿されることは全く問題ございません。あと、最後まで読み進めていくと、付録が出てきます。
◆自己紹介
私は1991年生まれで、名前は坂井風太(さかいふうた)といいます。新卒でDeNAに入社し、20代の大半の8年間を過ごしてきました。
経歴としては、旅行事業、ゲーム事業、子会社代表、M&Aなどを経て、DeNAとDelight Venturesの出資を受け、HR領域で起業しております。
また、私的なところでいうと、私立中学(=栄光学園)を中退するというお茶目なエピソードも持ってます。
「180名入学なのに、なんで176名しか卒業してないんだ?」という小学6年生の頃のミステリーを自分で解決しました。私立中学退学芸人の方がいたら、ぜひ一緒にひな壇で語りましょう。
※中学の同級生には、estieの代表の平井さんもいるのですが、彼は凄いですね。明るくて頭が良くて性格がいいです!
ではでは、20代の学びを5つ紹介していきます。
1.スマートな事業家でいいのか? @Branding Engineer
DeNAに入社するキッカケは、創業期のBranding Engineer社でのインターンである。
今の起業にも繋がる経験なので、DeNAではないが、まずここでの学びから始める。
2020年に上場を果たしたBranding Engineer(以降BE)だが、自分がいた創業期はカオスな空間だった。
今でこそ、超かっこいいオフィスとなっているが、当時はまったく日の入らない、曙町の地下1Fのオフィスで、学生が寝泊りしていた。
寝床はジャンケンで決めるのだが、3段ベッドor暗黒ロフトの二択だったので、ジャンケンに勝っても、どっちが当たりだったのか分からない。でも、最高に楽しかった。
私は新卒でDeNAに入社したが、BEの環境に触れられたことは一生の財産である。
最も学んだことは、「勝つまでやり続ければ良い」というシンプルなことだ。
代表の河端ならびに高原は、商売の才能に恵まれているし、狂気的な執念と独特なカリスマ性を持っていた。ただ、それでも初期は苦労していたように思う。
「成功は星の輝き」という言葉がある。
ただし、
いつか遠くの誰かに届くほどの闘志を燃やし続けている人が、一体どれほどいるんだろうか?
誰かが諦めてしまう場面で諦めず、安易な賞賛や注目に目もくれず、ひたむきに打席に立ち続け、学習を繰り返した人だけが、この言葉を使えるのではないだろうか。
BEが教えてくれたのは、「やり続ければ、いつかは上手くいく」という言葉の前半部分の圧倒的な重みである。
彼らがすごかったのは、「これ当たるんじゃね?」からのスピード感で、上手くいかなそうと分かる頃には「これ当たるんじゃね?」とまた言っていた。その都度、市場仮説は持っていて、楽しそうにトライしていた。
強い起業家ってこういうもんなのかと思ったし、そこら辺のPdMがいうイテレーションなど、歯牙にもかけない速さで、「作って売る」という商売の基本を高速で回していた。
BEで坂井が目に焼き付けたのは、メディアで持て囃されるようなキラキラした「スマートな事業家」ではなく、「執念深い事業家」であった。
誰に評価をされなくても、日の目を浴びるまで時間がかかっても、勝つための準備と、利益確保のためのビジネスモデル構築を積み上げることの方が、ずっと重要なのだと思った。
内実が伴う前に認知度や肩書のレバレッジをかけると、人はコスパの罠に溺れて、次第に足腰が弱り、朽ちていく。
組織で言えば、役職や肩書には下方硬直性があるので、ピーターの法則の通り、変革の勇気も地肩もないのに、マネージャーに居座り続けてしまう。
鍛えるべきは足腰であり、何度でも打席に立つ覚悟と、成功への執念、そして現実的な楽観性であると感じる。(いま思えば、フレッド・ルーサンスの『心理的資本』の要素と近い)
ただ、この前、河端と話していたら「BEはまだまだだよ。次はこう仕掛けて~、今も自分はこう動いていて~」と言っていたので、もっと凄くなってしまうんだろうなと思う。
上手くいくかは坂井も誰も分からないが、彼なら「成功するまでやり続ける」の精神で、成功させるんだろうなと思う。
「大きな会社にいた人」よりも、「大きくなるフェーズにいた人」よりも「会社を大きくした人」からしか学べないことが、たくさんある。
遥か遠くから光を放ってきた人と、近くでコスパよく光を見せてきた人は、同じ光量でも熱量が全然違うのだ。目に見える光なんかより、距離を超える熱量の方がずっと大切だ。
3段ベッドの日の入らないオフィスから、何度も打席に立ち続けて、上場まで至った河端・高原は、友人としての贔屓目なしに、凄いなと思う。
キャリアの初期にBEに出会えたことは、私の人生にとって、大きな財産であった。
結局、半端な賢さなんかよりも、執念深いやつが勝つんだなと思った。
2.凡人である自分を超えろ! @PECO/岡崎さん
2014年は、DeNAでフルタイムインターンとして働いていた。
私の代は、コミットメンター制度という採用形式で、現場エースのお墨付きがあれば、それで採用!みたいな特殊な制度が始まった年だった。
私を採用してくれたのは、ペット領域で大活躍中のPECO社の代表の岡崎さんという方で、狂気的に猛烈だが、誰よりも優しい人だった。
私はコミットメンターの岡崎さんのいる新規事業にいて、その事業責任者が岡崎さんだった。
当時のDeNAには、エンターテイメント事業推進室という新規事業の部署/フロアがあった。ゲーム事業以外の柱を立てるぞ!という気合いに満ちあふれていて、ギラギラした環境であったのを覚えている。
強い人材が業界内外からかき集められていて、自分は無能感で死にそうだった。
このときに、メンターの岡崎さんから教わったのが「超人思考」という発想である。
ただ、これは選民主義的な思想とは真逆なものであり、ニーチェの超人思想とも少し違う。
簡単に言えば、
「凡人(=自分)が、サボりたくなるような時に、絶対にサボらず努力しろ」
である。
メイウェザーの下記の言葉に近いだろう
自らを凡人と思わなければ、この発想は出てこない。
現に岡崎さんは圧倒的な思考量と行動量だった。ずっと考え事をしていたし、ずっと手数を打っていた。
キャリアにおいて、最初の先輩や上司の水準値ほど大切なものはない。自分の当たり前水準値をぶち壊す存在が、自分の才能を引き上げ、水準値のショボさを気付かせてくれるからだ。
残念ながら、その新規事業は当たらなかったが、PECOの成長を見るに、狂気的な努力や本気で挑んだ経験は無駄にならないんだと思う。
ただ、強烈な挑戦意欲や部下指導は、心を折るというリスクがある。そんな中で、岡崎さんはとても大切な言葉をくれた。
実は、岡崎さんは坂井が15新卒として入社する前に退職している。
キツい言葉を言われた覚えもあるが、坂井に最後にくれた言葉は優しかった。
「お前は不器用だから、すぐには伸びないけど、5年後に伸びるタイプだ。信じてるぞ」と言っていた。
何をやっても上手くいかないと感じていた不遇の1年目を超えられたのは、この言葉のおかげである。
メンターとして大事なことは、「相手の現在の能力ではなく、未来の可能性を信じ抜くこと」と「最後まで味方/仲間であること」である。
マネージャーやメンターの本来の役割とは、相手のポテンシャルを信じて、高い目標を目指せるぞ!と励まし、自分と違う形で自分を超える人材を育てることである。
高い挑戦は、セキュアベース理論や社会的受容感とセットである。そうでなければ、人材が潰れて終わるだけだ。
また、岡崎さんのインプットは常に成長のために向けられていた。
メンターの中には、周りに「有能だ」と思われたいがために、能力を誇示したり、マウントをとる人もいる。
「人にインプットしている優秀な自分を見て!」と、自己陶酔に浸っている人の言葉には、耳を貸さなくていい。
彼らのカッコつけシャドーボクシングに付き合う必要もないし、承認欲求サンドバックにされる前に逃げるべきだ。
岡崎さんが与えてくれたことは、のちに「自己効力感」や「セキュアベース」という理論に近いことに気づき、人材育成プログラムの中心に据えるようにした。
先輩から教わったものは、後輩に10倍で恩返しの精神だ。
※補足
ちなみに、Give&Takeという言葉があるが、この言葉を使う人間は大抵Taker気質である。なぜなら、生粋のGiverはこんな言葉は使わないからだ。
3.鬼の経験学習理論 @ゲーム/井口さん
うだつの上がらない1年目を過ごしたが、ゲーム事業に移ってからは、嘘のように順調に育った。
それは、現在のゲーム事業本部長の井口さんのおかげである。
2013新卒にして、DeNAの中核事業のトップを務められているが、その裏には圧倒的な思考量があると感じる。
ゲーム事業部に異動したとき、ゲームプランナー研修があり、その研修の設計者の井口さんと毎日振り返りをする時間があった。
そこで、
「坂井くん、1日1個でも人に説明できる学びがなかったら退化しとるで」
と言われた。
自分は負けず嫌いであるのと、もやもやしたものを言語化して、体系化することが好きだった。その日から、毎日5個くらい井口さんに学びをプレゼンしていた。
なぜ上手くいったのか、上手くいくものと行かないものは何が違うのか、を徹底的に考えていた。
その上で、次の日には検証して、新しい学びを得るようにしていた。そこで生まれたのが「最強ノート」である。
「最強ノート」と書いているが、岡崎さんの思想で作られているため、「最強ではない凡人の自分は、せめて1日1個でも学びを得て、実践しなければ!」という想いで書き続けている。
社会人2年目以来、一度たりとも更新をサボった日はない。なぜなら、学びがない日なんてないからだ。小さな成功も、小さな失敗も、拾い集めれば学びになる。
1年で365個学ぶ人と、四半期ごとのフィードバックで4個しか学ばない人では大きな差がつく。大切なことは「経験期間」だけではない。再現可能性のあるレベルまで言語化する「経験密度」が重要だ。「学びのCVR」を徹底的に高めることが大事だ。
これを繰り返すうちに、井口さんも「坂井くん、考えるの得意だなー」とか「裏ミッションとしてそれ広めていってや」などを言ってくれるようになった。
いま思えば、経験学習理論をすべて井口さんが回してくれたということになる。
※実際、井口さんも経験学習理論マスターであり、「◯◯をやりたいんですけど~」と聞くと、5分くらいでコツが5個くらい書かれたSlackを送ってくれる。
経験学習理論をしっかり行うと、「今はダメだけど、昨日よりもこれできているしなー」でメンタルブレイクがなくなる。
また、もしも上手くいかなかったとしても、すべて「分析対象」として振り返ればいい。上手くいかないときは、「上手くいかないサンプルを拾っている最中」なのである。
成功と失敗を繰り返して、自分の体験と言葉で学んだことは無駄にならない。逆にいえば、学習や成長に近道はない。
「わかる」と「ためす」はセットであり、本を読んでわかった気になってはいけない。実力と自己評価の乖離が起こり、賢そうだけど何もしない人になってしまう。
経験学習理論も、人材育成プログラムのコアを成す部分であるが、これの回し方と落とし穴をマニュアル化しているというのが味噌だ。
「凡人である自分」はこの習慣を捨てたら終わりだろうし、これからも毎日続けていきたいと思う。
4.「ジョジョ5部とリーダーシップ」 @IPプラットフォーム事業部/安江さん
ゲーム部署のあと、私はエブリスタという子会社への異動を希望した。
当時は2017年で、テンセントのエンタメ統合モデルを観察する中で、本事業に強い興味を持っていた。
エブリスタは、小説投稿サイト運営を主軸に、出版化/映像化事業を行う企業で、直近では橋本環奈さん主演の『カラダ探し』が映画化される。すべて才能あふれるクリエイターさんのおかげである。
エブリスタでは、サービス責任者やプロダクトマネージャーを経て、子会社2社の役員を務め、後に代表取締役になった。
ただ、このとき、自分の中の業と戦うことになった。
当時の私は、マネージャーとして、民主主義的なマネジメントをしていた。
ミドルマネジメントのときは、組織の複雑性に対処して成果を出すことが仕事なので、「この部署と、この部署の関係を結ぶかー」などの立ち回りをしていた。
自分は高校時代、親の喧嘩の仲裁を毎日していたので、得意な立ち回りであったし、強みが活きていた。
特に、組織の混迷期こそ、自分のバリューは出しやすかったが、過去の強みは未来の弱みに簡単になり変わる。
私は当時、傾聴力の高さゆえに、明確なリーダーシップを取れないでいた。自分よりも業界歴が長く、年上の人々を前に、尻込みしていたこともあったかもしれない。
トップマネジメントの仕事は、事業の不確実性に対処して成果を出すことであるが、それを分かってなかった。
一方で、誰よりも一次情報は収集していた。小説投稿サイトで、運営が1位を取ることなど無理と思われていたが、岡崎さんから習った「超人思考の精神」で、毎日サボらず小説を書き続けていた。
下手くそなりに、平日は4時間程度、休日は8時間程度、ずっと書き続けていた。
「プロダクトで勝負をするならば、自分がプロダクトを隅々まで触っていなければならない」
これはDeNAで教わったことである。
UXは、「頭や理屈」で理解するものではなく、「心や現象」で理解するものである。
「自分はこのプロダクトが好きで~」と口でいうのは簡単であるが、顧客に接し、プロダクトを好きになるまで触りきってないと、理屈の範疇を越えない。
『EMPOWERED』にもあるように、プロダクトリーダーはプロダクトのエヴァンジェリストでなければならず、誰よりもプロダクトを愛し、社内外に良さを広めていけるレベルでないと話にならない。
フレームワークを聞きかじり、評論家気取りのPdMに価値はない。プロダクトの方針など決められるわけがない。NSMはコア価値がないと虚栄指標となり、コア価値は自ら体験しないと説得力を持って定義できない。
情熱とUXをデリバリングせず、機能をデリバリングしているだけならば、プロジェクトマネージャー止まりである。可処分時間を一度全部ぶっこめいないならPdMなど務まるわけがない。
それをやらない人ほど、綺麗事のプロダクトビジョンを掲げるが、自社サービスのPODと競合サービスのPOFを抑えきっていないプロダクトビジョンなど、ただの絵空事だ。一般商品カテゴリーとしての良さは、バリュープロポジションではない。
毎日、下手な小説を書き連ねていたが、ランキング1位を取ることができた。「成功するまでやり続けるかどうかだけだ」と思った。
また、出口となる出版領域においても、各サイトのランキングをつぶさに見て、どのジャンルが売れているか、どこの出版レーベルが出しているかを見ていた。
リーダーの最も重要な仕事は、「誰もケリをつけたがらないことにケリをつけること」と「組織が不可能だと感じている天井を破壊すること」であると思う。
20代で代表取締役社長になったので、キラキラ経歴を飾れるなと正直思った。ただ、鎮座しているだけの雇われ社長に何の価値があるんだろうか。
自ら一次情報を集めて、誰も決断できないことを決断し、人に嫌われたとしても、事業を成長させることをやらないと、リーダーの意味がない。
ただ、上記のモヤモヤを抱えつつも、まだ本質的な一手に踏み込めず、勇気が出ないことがあった。
そんなとき、当時の上司であり、現在のマンガボックス社の代表の安江さんが「決断」や「覚悟」の話をしてくれていた。
合理的判断など、少し賢ければ誰でもできる。論点→情報収集→評価をすれば終わる。ただ、合理的判断と決断は、難しさの次元が違う。
事業において、すべて整理された情報があるとは限らないし、Aを選べばBが血を流すし、上手くいく保証もないし、自分がいま踏み込まないと事業がまずいかもしれない。
事業の命運を賭けたトレードオフの意思決定=決断である。
決断とは、「断」って「決」めるから「決断」なのであり、Bという道を捨てなければならない。捨てた上でAという道を切り開かなければならない。
ひとたび人にヒアリングをすれば、様々なポジショントークや、一次情報か怪しい意見で溢れかえっている。まさに『失敗の本質』のような話である。
それで一喜一憂してしまうと決断が揺れ動く。机上の空論で整理できるほど、決断は簡単なものでないと気付く。
人間関係等のウェットな問題も絡み合っているので大変だ。事業家とアドバイザーでは全然違う。
急にジョジョの話をするが、第5部のジョルノ・ジョバーナの
「覚悟」とは!!暗闇の荒野に!!進むべき道を切り開く事だッ!
が大事なのだ。
「正解の道を選ぶのではなく、選んだ道を正解にする」というが、この言葉も擦られ過ぎて、本来の意味が失われていないだろうか。
覚悟とは、
選んだ目的地へと繋がる道がないと気付いたが、泥を全部すくって、開拓して道を作る
であるはずだ。
合理的判断ばかりをやってると、それが仕事だと思うようになるが、決断と覚悟で道を切り拓くのがリーダーの仕事だ。
ただ、そもそもの話をすれば、
雇われ社長や会社員という守られた身分ごときで何を日和っているのか分からないな
と途中で気付き、不安な中を突き進んで、事業KPIの向上とM&A推進を同時並行で進めていった。
実をいえば、自分は父親が会社経営の末に倒産&自己破産していたので、こんなことで日和っていては、父親に申し訳が立たないと思っていた。
結果、ご縁もあって、株式譲渡に成功し、私が好きなサービスのさらなる拡大をはかることができた。
このとき、上司の安江さんがしてくれた「覚悟と決断」の話や、現ソリューション事業本部副本部長の渡部さんが言ってくれた「坂井さんが社長なんだから、坂井さんが決めればいいんですよ」という言葉には救われた。
Change Leader経験済みのServant Leaderがメンターにいなければ、ここの階段のネックは助けられない。どの壁にいるか、自分では俯瞰しにくいからだ。
ラム・チャランのパイプラインモデルにもあるが、トレードオフの決断をした経験のあるServant Leaderがいて、その者がChange Leaderを育てなければ、Change Leaderの不在問題が慢性化する。
慢性化の結果、Change Leaderの立ち回りはコスパが悪いので、組織はコスパを意識した評価&KPIハッカーだらけになってしまう。
「我、関せず」で、自部門に閉じた、確実性の高い領域のKPIをコスパ良くハックする集団がマジョリティーになれば、組織は硬直化の一途を辿る。
それでは会社は永遠に良くならない。良くならないと見限ったChange Leader候補の人材が抜ければ、不可逆的に組織は硬直化する。
組織はオセロであるので、マジョリティーがKPIハッカーになってしまうと、段々と組織は弱っていく。
ただし、悲観し過ぎる必要はなく、皆がみな、「KPIハッカーのままでいたい」なんて思っていない。
創業社長等を除き、全員が「勝ち馬に乗る人」と「勝ち馬にしたい人」の間を行き来しているだろう。自分も所詮はそうだった。
そもそも、組織はリーダーの写し鏡なので、「自分のメンバーは~」などと不満を垂れていたら仕方ない。それを変えるのが仕事なのではないだろうか。とはいえ、武器と仲間がいないと難しいのが現実だ。
だからこそ、挑戦的な人材を意図的に創出し、組織のオセロをひっくり返す仕組みとコアメンバーが必要になる。
また、人間はいつのまにか、「ここまでしか自分はやってはいけない」と決めてしまう生き物であり、それがゆえに「ジョブ・クラフティング理論」などの技術が必要になってくる。
この「リーダーシップ階層モデル理論」も「ジョブ・クラフティング理論」も、実体験で理解し、様々なベストプラクティスを収集したので、育成プログラムに織り込み済みである。
5.「南場さんと竹原ピストルの共通点」@デライト・ベンチャーズ/南場さん
会長の南場さんとは、最後の最後に坂井が起業する際にもお世話になった。
もっといえば、坂井はDeNAやDelight Ventures出資での起業となるので、様々な人にお世話になった。
Delight Venturesの起業家ファーストの精神は本当に凄いし、感謝している。
南場さんは、期待をかけてくれる反面、ズバズバ深層心理を見抜いて、突いてくるタイプである。
南場さんとの坂井の事業に関する会議にて、
「お前さ、誰かの意見を取り入れて、こんな感じにしてんだろ?」
と言われて、ギクッとした。
誰が悪いわけでもなく、坂井が様々なピッチ資料などを見た結果、おかしな事業戦略を作ってしまったのだ。「ピッチ資料ってこんな感じか?」みたいな変な考えを持ってしまっていた。
あれはひとつの競技であり、経営のリアルファイトは別のところにあると気付いた。
その後、
「お前さ、自分の良さを貫けよ。だからM1も落ちたんじゃねぇの?」
と光の速さで射抜かれた。
坂井は前にM1に出ていた。「正統派しゃべくり漫才」に憧れ、「システム漫才」を見下していたかもしれない。ど素人にくせに。
自分は小理屈タイプなので、小理屈ぶつけ合い漫才の方が、スタイルに合っていたかもしれない。
M1だけでなく、自分の事業もそうだった。
「正統派の幻想」につられて、自分のスタイルを崩すという失態を犯していた。
自分は賢くなく、泥臭い堅実な努力で突破するタイプであった。それは岡崎さんに教わったことであるし、BEの影響もあるだろう。
もっと前に遡れば、中学を中退している分、レールから外れるのをいとわず、「え?市場情報を徹底的に調べました?顧客に会いまくりました?」で貫けるタイプだった。
逆にいえば、キレッキレでスマートな事業家ではない。だからこそ、初期の地下室時代のBEにも「なんか面白そうだな」で抵抗感なく入れた。
嫌われることも怖くない。もちろん、仲間を作る上での立ち振舞いには気をつけるが、この自分のスタイルを貫けなかった。
矢継ぎ早に、
「お前はお前が一番正しいと思う攻め方で行けよ。」
と言われた。
怒られたのが悔しいというか、自分が情けなくて、その日は茫然自失となりかけた。
でも、起業に挑む身として、ひるむ時間すら勿体なかった。
ここで、竹原ピストルの話になるが、この日は「よー、そこの若いの」を聞いた。
よーそこの若いの、俺の話を聞いてくれぇいと前フリをしつつ、俺含め誰のいうことも聞くなよ。お前なりの咲かせ方で、でっかい花を咲かせて見せろよ、というカウンターをしてくる歌詞で、その日の自分にゲキ刺さりした。
南場さんは小手先が嫌いで、もっというと、人が本来の良さを捨ててしまうことが大嫌いな人だった。
「若くて経験も未熟なのに、唯一の強みである突破力を自分から捨てて、小賢しいことをするんじゃないよ」と自分に対して思った。
芸風も同じであるが、他の誰かになんて自分はなれない。若くてバカな自分には、自分なりの勝ち方があったはずだ。それを捨てるな。
その次の週の南場さんとのMTGでは、謝罪をして、覚悟を伝えていた。
でも、その場で南場さんが色々工面してくれて、なんだか泣いてしまった。
泣いていたら、
「私は厳しいよ。絶対に成功させろよ」
と言っていた。
南場さんのコミュニケーション含めて、「DeNAぽいな」と思った。
退社が決まったこの日、入社を決めた日の感情が、再度押し寄せてきた。
踏みだしたい気持ちと不安な気持ちがせめぎ合っていたが、「人生1回だしな」で飛び込むのを決めた日だった。
最終章:そこには常にメンターがいた
「自分ひとりで育った」などと考えるから、人は傲慢になっていく。
そういう人ほど、「自分の背中を見ていれば、人は勝手に育つ」と思い込み、反省の道具である理論も学ばず、とんでも自論を垂れ流す。
学習の重要性を言う割に、本人は学習が足りていない。学習とは、未知を拒むことではなく、未知を受け入れ続ける姿勢であるはずだ。自分の常識が古くなってないか?を問い続けることであるはずだ。
つくづく、伊丹氏の「よき経営者の姿」は良書だと思うが、自分の実力で勝ち上がったと錯覚すると、経営者は足元をすくわれる。人の賞賛や過注目は、人の実力を誤解させる。
経営者ばかりの飲み会に行き、顧客や事業に向き合わず、「自分はこんな情報も知っているんだ」「自分にはこういう人脈があるんだ」と自慢げに語る経営者ごっこをしてはいけないという。
毛細血管のように細い人脈と、自分で力強く歩むことをやめた軟弱な足腰で、一体何ができるのだろう。
完全自戒であるが、こうはなってはならないし、そんなのでは、私を信じて育ててくれた諸先輩に申し訳が立たない。
何度でも、打席に立つことこそ、BEや諸先輩方が教えてくれたことだったではないか。
坂井の過去を振り返っていても、ここの5人のメンターに限らず、様々な人に助けられた。
社内に限らず、エブリスタはドコモ様との合弁会社であったので、ドコモ様側の役員の方にも、温かく育ててもらった。
先輩や上司だけでなく、自分の後輩やメンバーも、自分にとってメンターだ。20代のうちに、そういった人々に出会えただけでも、良かったんじゃないか。
きっと、80歳になっても、「DeNAを1社目にしておいてよかったなぁ」と思っているだろう。
DeNAを一言で表せば、「中途半端な挑戦者には厳しいが、腹を括っていれば、全力で応援してくれる会社」であると思った。鍛え上げられる上では、これくらいがちょうどいいんじゃないだろうか。
私は自己主張の強い、変な人間だったかもしれないが、熱量を殺さずに、活かしきってくれたことについて、DeNAには本当に感謝している。
これから
さて、メンターについて、徹底的に研究したのが、坂井の事業のひとつである『組織OSアップデートプログラム』である。
私は7年間、ひたすら書籍を読み続け、すぐに実験を行い、最強ノートに学びを書き連ねた。
それでは飽き足らず、良いメンターと悪いメンターの違い/どういう言葉掛けが、成長に繋がり、何が凹ませたかをヒアリングしていた。
理論学習と現場へのヒアリングをし、抽象と具体を繋ぎ合わせたものを作らないと、組織の共通基盤にならないし、現場では使えない。
その考えのもと、理論を体系化し、どんなメンター/マネージャーでも使える粒度にまで落とし込んだ。
日本中どこを見ても、ここまでの完成度のものは存在しないだろう、と思えるほどまでに執念で仕上げた。
私は、HR研究家ではなく、経営実務家であるので、実用性のないものは一切作らない。(が、時代は変わるのでこれからもアップデートし続けるだろう)
このプログラムは、すでにDeNA以外の、東証プライム企業、東証グロース企業、ベストベンチャー100の企業、大型資金調達スタートアップにも導入済みである。
IT企業に限らず、地方の老舗大企業含めて、組織OS変革のご支援をしているので、汎用性も確認済みだ。
また、採用よりも先に、育成/活性化の基盤を作った方がいい。
なぜなら、人材開発/組織開発は、売り切り型のサービスではなく、コミュニティーサービスなので、アクティベーション基盤を作るほうが先だからだ。
採用数という目先のKPIは目に見えやすい&説明しやすい。投資家との握りとしても重要だろう。ただし、目に見えやすいもの&説明しやすいものには、常に罠が潜む。
プロダクトマネジメントと同じで、水増ししやすいKPIを追うと、本質指標を見失うという罠に陥る。
熱量指標を追うべきときに、経営プレッシャーに負けてMAU/DAU/売上を追うから、プロダクトは死ぬ。
組織の足腰を鍛えなければいけないときに、拡大プレッシャーに負けて、採用KPIを追いすぎるから、組織は崩壊する。
そもそも、分かりやすさ&説明しやすだけに逃げないのがリーダーシップなのではないだろうか。合理的判断で解決できる領域にリーダーシップなど不要なのである。
組織は生態系であり、1+1は2ではない。組織は掛け算であり、掛け算を1以上にするか、1未満にするか、その岐路を作るのが組織OSというものである。
私も事業責任者として人員計画を作っていたから分かるが、数値上の人員の数と組織成果の出力は一致しない。成長への不安をかき消したいと思って、焦って人員追加をしようとしてしまうが遠回りだ。膨張と成長は違うのである。
※組織OSをまるっと強化できる人材が採用できれば採用だけで間に合うが、残念ながらそんなスーパースターが恒常的に採用できることはない。
「うちはそういう人しか採りません!」というが、人の活躍は環境依存であり、組織OS次第ではないだろうか。
ただ、採用を軽視してはならず、カルチャーフィットし、ブリリアントジャークのフラグのある人を落とさなければ、組織OSは脆弱になる。組織は生態系なので、ひとりの濁りが、水槽全体を濁らす。
人間の成長や活躍などは、メンターやマネージャーの存在/交代で簡単に変わってしまう。
自分が人事というより、事業経営/マネジメントに挑んできたために、痛烈に感じていることだ。
人材育成/活性化/組織OS強化で悩んでいる方/企業様は、ぜひご相談いただきたい。
すでに多数問い合わせをいただいているために、導入可能時期は分からないが、必ずお役に立てるようにする所存である。
なぜかというと、「人や企業の可能性が、メンター/マネージャー起因、理論基盤不在の起因で枯れてしまう」のは悲しいからだ。
それくらい、ここの組織OSは良くも悪くも組織人員のパフォーマンスや事業成果に影響してしまう。
下記がご協力できる事項ですが、問い合わせは、後述のDMまでお願いします!
「人材育成/組織開発/経営改革の右腕」として動きます。
※コンサルや研修屋ではなく、本業は経営実務家なので、事業会社ならではのドロッとしたカオスを整えるのが得意です。
その他、こんな依頼はできないのか?がございましたら、仰っていただけますと幸いです。
▼問い合わせ先
https://meety.net/matches/jUCMdoJDgkBj
https://twitter.com/fuuuuuta21
https://www.facebook.com/futa.sakai/
※ただ、もうひとつ仕込んでいる事業 (デジタル人材育成事業)があり、問い合わせくださったクライアント様には絶対に成果を出すためにも、社数を限定している。私は組織OSを強化し、今まだ世の中にない価値を作れる企業を増やしたい。
※なお、Twitterで放出している画像はプログラムの前提資料であり、プログラムで用いる資料500枚以上の資料は、1%も放出していない。もっというと、放出スピードよりも、増殖スピードの方が速い。
おまけ:最強ノート
※最強ノートについて、込み入った話をしてない部分だけ抜粋してDLできるようにしました。役に立つかは分かりません!
以上、DeNAには大変お世話になりました!
楽しかったです!
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