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よそんちの猫の話は楽しい | 読んだ本『今日も一日きみを見てた』
猫はかわいい。
自分ちの猫がいちばんかわいいのは当然としても、よその猫も同じぐらいかわいい。
だからよそんちの猫の動画を見るのは楽しいし、話を聞くのも楽しい。
角田光代さんの『今日も一日きみを見てた』も、上等な「よそんちの猫の話」。
noteで連載されていたときから毎月楽しみにしていた。
犬派の角田さんが初めて一緒に生活することになった猫がアメショのトトさん。
初めてだからトトさんの行動すべてに驚く。
足音がしない
遊んで欲しいとボールを持ってくる
カーブを曲がりきれずに壁にぶつかる
そんなトトさんの行動がやや低めのテンションで描かれる。
どれも様子が目に浮かぶようで、あまりのかわいさに身悶えしながら読む。
例えば。
二度目に病院に連れて行かれたときに、人に向かってでなく壁に向かって小さな声で「シャー」と言うとか。
猫だましされたことにムカついて角田さんの脚にドロップキックするとか。
そんな怒り方ある?
私もドロップキックされたい。
続編の『明日も一日きみを見てる』でもトトさんは変わらずかわいい。
むしろかわいさを増している。
一軒家に引っ越して、家の中でしか生活したことないのに胴乱の幸助ばりに外猫の喧嘩の仲裁に飛び出したりしている。
角田さんがトトさんと暮らし始めて今年で15年。
この生活が1日でも長く続くことを願う。
『今日も一日きみを見てた』の巻末には、ボーナストラックとして「任務十八年」という短編がついている。
NHKの「ネコメンタリー 猫も、杓子も。」のために書き下ろされたものだそうだ。
本編も素敵なんだけど、このおまけは泣ける。
18年間諜報・謀略活動をしていた「私」は任務を終えて帰還する。
帰還後、「私」はあるできごとに接してまた同じニンゲンの元に派遣されることを願っていることに気づく。
うちの猫も私のところに18年間いてくれた。
私は猫のおかげでとても幸せだったけど、猫はどう思ってたんだろう。猫もまた一緒に暮らしたいと思ってくれていたら嬉しい。