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伊東のTUKUNE 23.5話 ロティサリーチキンのぶよぶよ

▼前回

https://note.com/fuuke/n/n44be08db8ed1

▼あらすじ

進学した僕はなんとなく不良になり、恥ずべき人生を送っていた。ある日の帰り道、僕は村上紫という少女を助けたことでお礼にしゃべるハムスター♀をもらった。果たしてハムスターとは「貰って」よいものなのだろうか。すると僕は自己の髪に宿った人形のことを思い出した。

その日、帰ったあと僕は狂ったようにロティサリー肉を食った気がする。これは僕が焼き鳥屋に妙に執着するようになる前だったか、あとのことだったのか思い出せない。

ロティサリーを食った理由なんてない。そこに冷蔵していたからだろう。ロティサリー肉を僕は冷蔵していた。中身を別に確かめずに買ったから、開封した時に中身の意味不明さに驚いた。

それはロティサリーであると思われる物体の他に、数多のコンソメ・ゼリーのようなものがあったから。恐ろしくて僕は味を確かめられなかった。だってなぜ鶏肉のそばに得体のしれないゼリーのような塊があるんだ?

とはいえ僕は性格上食べ物を粗末にできなかったから、ロティサリー然とした物体をあらかたオーブンにならべながら、その謎の物体もそのままオーブンに差し出すこととした。味付け調味料なのだろうと結論づけた。鳥の上に置いたりしてアレンジした。ぼくは弱火でゆっくり炙る行為に生き甲斐を見出しているので、そのように焼いて数十分間はそれらのことを忘れてしまっていた。後は任せた。

すると、いずれ僕は肉を焼いていたことを思い出すのだった。果たしてオーブンの中に残っていたのは、ロティサリー・パックの中に封じ込められていた得体のしれない物体群ではなく、白い鶏肉ばかりだった。すっきりとして可食部だぞといわんばかりの鳥の死体がそこにあった。

一般的に鳥の死体を焼いた物は生き物にとって極上に食欲を刺激すると僕は思う。つまり余裕で炭酸飲料なんかを持ち出して(もちろん、当時から僕はアルコールなど飲めなかった。生きた年数を抜きにしても飲めなかった)ガンガン行くつもりではあったのだが、ものすごい違和感に襲われた。

それはロティサリー・パックを開けた時にまるでロティサリーの周りを浮遊するかのように敷かれていたあのぷるぷるしたゼリー群が消えていたことに端を発する違和感である。あれらはどこに消えたのか?

単純に面倒なので、オーブンの下などいちいち僕は確かめなかった。後のことはいわゆる性欲人形である思春期の少年の前なんかにまるで水着の意味をなしていない水着を着せた25~28ぐらいの胸部と臀部がやたら発達した女を差し出した場合を想像してもらえばイメージに何の相違もない。食欲を性欲で喩えてしまった。何かこの行為に意味があるのだろうか?

そしてやがて少年の性欲がなんらかの結果を伴って消えゆくように僕もロティサリーを片付けたことだろう。その時に少年のように僕は我に返ったはずだ。あの物体群はなんだったのか。

これは鳥の無念さが思念体として顕現し、液体になったんだろうかと思った。

▼次回

▼謝辞

(ヘッダ画像をお借りしています。)

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