『男ともだち』 艶やかな世界にある、ぬるくてやさしい存在【読書感想文】
こんにちは、こんばんは、おはようございまーす!
読書をしているとさ、知らない世界を知るのと同時に、今の自分はなんて狭いところにいるんだろうって逆に淋しくなったりして、過去の思い出の中から、一際光っていたひと粒だけを取り出して、もう一度見つめてみたりする。
その瞬間、一瞬あたたかくなるんだけど、結局は、虚しさに押しつぶされる。
「あぁ、なんで連絡しちゃったんだろう。」
ってね。
さ、今日は千早茜さんの『男ともだち』の読書感想文です。
千早さんは、初読み作家さんだったのですが、とても良かった…。
すごく好き。
この衝撃は、吉本ばななさんの『キッチン』を、初めて読んだ感覚に似ている…そんな気がした。
ひとつひとつの言葉が繊細で美しくて、苦い気持ちを、ひとつひとつ水に溶かしてくれるような感じ。
さ、書いていきます。
※多少のネタバレ含みます。注意です。
◇
あらすじはAmazonさんがしっかり書いてくれているので、今回から引用。(手抜きごめんなさい)
この小説に登場する人物は、みんなどこか自分勝手で乱暴で、誰かを愛したいというよりも、自分の欲を満たしたいという気持ちが優っている。ように思える。
極端に描かれているだけで、誰しもが、「愛されたい」とか「ただ気持ちの良い関係でいたい」と思うのは当然のことであると思う。
愛を与えるから、愛される。愛することは自然にできるものではなく、鍛錬が必要なのだということを、ほとんどの人が知らないのだから。
◇
神名は恐らく、ハセオに対して友だち以上の何かを抱いているのだと…思う。
けれども、それはよくある男女の特別な何かではなく、学生時代の男も女もないただの心地の良い存在だということ。
男と女になるから、つまらなくなってしまう。
深く繋がって、心の内を思う存分曝け出して、相手を探ったり、愛を捧げて、見返りを求めて。
そして、いつか終わりが来る。
はじまるということは、いつか終わりが来ると言うことであって、はじまりは終わりへのカウントダウンである…と誰かも言っていた。
それなら、何も始めなければ良いんだよね??
特別にして欲しいと心の奥底で叫んでいたとしても、別れが怖いから、特別になりたくなかった。
男とか、女とか、恋とか愛とか、そうゆうのは、一旦置いておこう。
いつまでも、ふとした時に連絡が取れれば、まぁそれで良いか、って。
そんな関係性を続けていられるのって、ありがたいよなぁって思った。
◇
「男ともだち」って、本当に狡くて、都合の良い言葉だ。
神名のハセオのように、何も求めずに信頼し合える理性的な関係って、果たして本当にあるのだろうか…。
どちらか一方は、何かしらの見返りを求めてしまうのが、人間関係(特に男女)には、ある気がしてならない。
◇
生産性のないやりとりを…ただ暇を埋めるやりとりを続けていくのって、頭の片隅に「相手は楽しいのかな?」「このまま続けていても大丈夫なのだろうか」という疑問が浮かぶんだけれども、まぁ、この、男とか女の部分をたまに満たしてくれるけれども、根本は何も求めていない、ただの『暇つぶし』ができる相手というのが「男ともだち」であったり「女ともだち」の良い面なんだろうなぁと、なんとなく考えるようになった。
けれども、やはり理性を持って、一定の距離を保っていく必要がある。
どちらかが、寄りかかってしまうと、それは特別になってしまうから。
いつまでも、知らんふりをして、何でもないって言って、奥底に眠らせておく気持ちがあっても良いよね。
いつか、その気持ちと対峙してしまった場合、その時は、もう特別な存在になっているのかもしれない。
特別にしないためにも、その、『たった一言』を捨ててしまおうか。
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