踊る大会議室
会議室。
「時間ですよ」
「あれ?
始まりませんね」
「ですし…
まだ手元に資料も来てませんよ。
おかしくないですか?」
「鈴木と高橋がいないぞ?」
「ほんとですね。
どうしたんでしょう?」
中央のモニターが点く。
「ああっ、んんっ。
おはようございます、鈴木です。
みなさん、まことにすいません。
会議資料に不備がありまして、
現在、修正中です。
開始時間9時でしたが、
もう少々お待ち下さい。
みなさんはお待ちの間、
こちらの映像をご覧下さい」
♪~~
小笠原諸島 父島の海
♪~~
「水がキレイですね~」
「小笠原の海って、
こんなに魚がいるんだ~」
「海行きたいなあ~」
♪~~
小笠原諸島 兄島の海
♪~~
映像が切り替わる。
「おい!
これ、いちから作り直しって、
何分で出来るんだ!?」
「わかんねえよ!
とにかくベースはAIに任せて、
俺らはチェックだ!チェック!」
♪~~
小笠原諸島 姉島の海
♪~~
「さっきの映像、何ですか?」
「もしかして…鈴木くんたち…、
今頃、資料作りしてる?」
「海行きたいなあ~」
♪~~
小笠原諸島 妹島の海
♪~~
映像が切り替わる。
「おい!
これなんだよ!」
「何がっ!?」
「お前、
資料と肥料間違えたろ!
レジメが全部、
肥料の五大要素とか、
肥料の成分表になってるぞ!」
「マジかっ!!
もう1回、入れ直しだ!」
♪~~
小笠原諸島 弟島の海
♪~~
「あれは…大丈夫でしょうか?」
「もう10分経ってるけど…、
会議…やれるかな~?」
「海行きたいなあ~」
♪~~
小笠原諸島 姪島の海
♪~~
映像が切り替わる。
「お前、昨日!
定時で帰ったろ!」
「そんなの当たり前だろ!」
「確認もしないで!」
「できたと思ったんだよ!」
「お前、急いで帰ってたな?!
さては…合コン行ったな?!」
「そ、そ、そ、そんな、なな、ことは、
ねええよ~ぉ~」
「めちゃくちゃ動揺してるじゃねえか!
この野郎!
お前だけ、いい思いしやがって!
これは貸しだからな!
今度、誰か紹介しろよ!」
「あ゛~~~ん!!」
「あ゛~~んじゃねえよ!
露骨に嫌がってんじゃねえか!
だったらお前、ひとりでやれよ!」
「わ~ったよ~!
しょうがねえなぁ~!」
♪~~
小笠原諸島 嫁島の海
♪~~
「ちょいちょい挟む…、
ドキュメンタリー番組…」
「とても…見るに堪えない映像…」
「海行きたいなあ~」
♪~~
小笠原諸島 孀婦島の海
♪~~
映像が切り替わる。
「ヤバいぞ!
もう20分経ったぞ!」
「大丈夫だ!
手際が悪くて始まらない
国会中継を見習って、
その場しのぎの環境映像を流してるから、
みんな今頃、
キレイな海と魚に和んでるはずだ!」
「それなら大丈夫だな!
あともう少しだ!
頑張れ!!」
「おおっ!!」
♪~~
小笠原諸島 鳥島の海
♪~~
「もう、ひと家族…
全員紹介されたね~」
「ついにペットまで…
出てきちゃったね~」
「海行きたいなあ~」
二人が駆け込んでくる。
「遅くなって、すいません!
お待たせしました!
こちらが会議資料になります」
「…行き渡りましたね?
さて…
じゃあ、始めましょうか?」
「会議資料作成についての、
準備の仕方及び、
その内容の事前確認と、
ダブルチェック。
まずはこれについて、
話し合いたいと思いますが、
みなさんどうでしょう?」
「異議なし!!!」 「異議なし!!!」
「異議なし!!!」 「異議なし!!!」
「異議なし!!!」 「異議なし!!!」
「異議なし!!!」 「異議なし!!!」
「異議なし!!!」 「異議なし!!!」
「ヒィッーーー!!」
「ヒィッーーー!!」
「海行きたいなあ~」
お疲れ様でした。