送り迎え①
御年80歳の未来さんと光里さん。
今日も井戸端会議で盛り上がる。
近くて遠い…未来のお話。
光里「表の車って、
あれ…未来さんの車ぁ?」
未来「そうよ。
昨日やっと納車されたのよ」
「小さくて丸っこくて…可愛いねぇ」
「でしょ。でもお値段は可愛くないのよ」
「見るからに高そう…でも最新でしょぅ。
私は車…よくわからないけどぉ」
「私も詳しくないけど、
車屋さんが言うには、
月1度の充電でいいらしいわ」
「すごい。
最近のはみんなそうなのぉ?」
「そうらしいわよ。
走りながら充電するんだって。
あと運転しなくていいのは楽ね」
「自動運転ってやつだぁ」
「でもやり方が面倒で…。
何だっけ…
スマホの地図アプリを…開いて…
行き先を…指定したらぁ~
ホルダーにセットして…」
「セットしてぇ…?」
「確か青いボタンを押すといいはず。
あとは車が喋りだして、
案内してくれるから」
「なんかよ~くわからないけど…
全部スマホなんだねぇ」
「鍵も運転も全部スマホ」
「動かしてみたぁ?」
「一回だけ。
デイサービスまで」
「デイサービスゥ?
自分の車でぇ?」
「そうよ。
ほんと便利。
施設に車で行くとあとは、
車がひとりで家に帰るの」
「えぇ~?!」
「そしてデイの帰り時間に合わせて、
自動運転をセットしておくと、
駐車場まで勝手に来て待っててくれるの。
ハチ公みたいで可愛いのよ」
「車…勝手に行ったり、
来たりするのぅ?」
「車屋さんが設定してくれたの。
よく利用する場所の話になって、
介護施設って言ったら、
タイマー機能と車庫設定とか…
みんなしてくれたよ。
自宅と施設を自動で往復できるように」
「はあ~。
今の車って凄いんだねぇ。
それだと街へ行っても、
有料駐車場探す必要ないねぇ」
「そうね」
「未来さん、
お出かけ楽しいでしょぅ?」
「お出かけは好きなんだけど、
気軽に出かけられない事情があるのよ」
「どいうことぉ?」
「行きたい場所があっても…
車屋さん呼んで設定しないと、
自分ではどこにも行けないの」
つづく。