ベッド
二人組。
「どうも~よろしくお願いします」
「いや~もうすっかり春ですね」
「そうですね。桜も満開で」
「あと、この時期は年度始めで、
新しいランドセルを背負った子供、
よく見かけますね」
「街中でよく見ますね。
おろしたてのスーツを着てる
新社会人なんかも見ますね。
いいですね、初々しくって」
「俺、ああいう、
人が新品とか持ってるの見るとさ、
自分も欲しくなるんだよね」
「ランドセルを見て?!
しかも、新社会人でもないのに?!」
「そうなんだよ。
なんか急に物欲ってのが、
抑えられなくなって。
今、特に欲しいのは、ベッドだね」
「それなんか聞きましたね。
寝起きに体がバキバキになるとかって。
あなた枕、買ってませんでした?」
「買った。
今度はそれに合うベッドが欲しくてさ」
「じゃあ、どういったベッドがいいの?」
「やっぱりこの春の陽気でウトウトできる、
ふかふかのベッドかな?」
「ああ~なるほどね。
確かに、温かい日差しを浴びて、
寝転ぶのは気持ちいいですよね。
つつみこまれるようなやつ。
顔を埋めて、
ああ~お日様の匂い、とか言ったりしてね」
「あと、カジュアルなベッドね」
「いいですね。
今はオシャレなものたくさんありますから。
周りのインテリアも考えて、
小物も合わせ買っちゃったりしてね。
お値段以上の快適さですよ~とか
店員さんに言われたりしてね」
「あと、ジトジトのベッド」
「なに~これ~~?
なんなの~寝汗~~?やだ~~。
寝起きにじっとりしてる
このベッドなに~~。
まだ梅雨には早いのに~~。
ほら~!
肌着がピタ~って吸い付いてきて~」
「ギリギリのベッド」
「あれ?これどうした~?
なんでこんな小っちゃくなった?
これ寝たら頭と手足はみ出るよね?
だら~んって、なるね、これ。なるよね?
一回寝てみた?
どうやっても、
エクソシストみたいになるでしょ?
え?切った?ベッドを?
入らなかった?!入り口でぇ?
縦にしなかったの?思いつかなかった?
なんでぇ!どしてぇ!
他にもやり方あったでしょ!
な~んで簡単に切っちゃうの!つってね」
「あと、ガムシャラなペット」
「お~よしよしよしよし~。
ポチ可愛いな~おまぇおお~
ブペッペッペッペって、
お前顔は…ブペッ…
もういいから…顔はいいって!
おっとっとと、
ポチもういいんじゃないかな~~
お~よしゃっしゃっしゃ…
ん~~顔は…止めな…なあ…
もうよだれで、
パックみたいになってるから…つってね」
「ギトギトのベッド」
「ねえ、お母さ~ん!
寝室で天ぷら揚げた~?知らない~?
妙にギトギトしてるよね、このベッド…。
寝てるとピタ~っと
張り付いてくるの全体的に…
イッタィ!なに?!背中イッタァ…
ちょっとなにこれ?天かすぅ~?
お母さん~なに揚げた~?」
「あと、ぽかぽかのベッド」
「あれかな?フジテレビの屋上に
置いてあるのかな?
ぽかぽかのベッド。
日替わりゲストが
添い寝してくれたりしてね。
神田さんが子守唄を
歌ってくれたりするのかな…つってね」
「あと、サクサクのベッド」
「イッタィ!なに~?また、天かすぅ~?
なんで?!
な~んでここに敷き詰めた~?
揚げたて?…ほんとサクサクだ!
お母さん~ちょっと揚げすぎ~!
ポチっ!ダメ!そんなの食べちゃダメ!
お・な・か・こ・わ・す!…つってね」
「あと、スキンなヘッド」
「俺な!俺のことな!
スキンヘッドな!
何で間に"な"入れてっか知んないけど…」
「あと、オーバーなヘッド」
「サッカーのな!
また"な"入ってるけど…。
バイシクルシュート!って、
カッコいい名前のやつな!
こうバーン!って身体を反転させて、
足をグーン!って伸ばして、
ズバーン!と打つシュートのことね…」
「あと、オーバーなスキンヘッド」
「今さっきの俺な!
大きな動きで説明してる俺のことな!
大袈裟な擬音使ってまで熱演してたしな!
そしてちょいちょいお題が俺のことな!」
「あと、タジタジのヘッド」
「あっ、もしもし。トーマ?俺。
お前どした~?
隣町のチームドラゴンと今日やり合うんだろ?
ヘッドのお前がいないと
示しがつかないだろ…。
え?子供が熱出した?いつ?さっき?
お前、子供いたの?いない?
なんですぐバレる嘘つく?!
ん?え?
延滞してるDVD返しに行かないと?
TUTAYAに?
まず出てこいよ!
ここTUTAYAの隣だから~!
え?なに?あんよが痛い?
さっさとスクーターで来い!つってね」
「あと、磁気なヘッド」
「もう途中から関係なくなっちゃったベッド。
結構序盤でベッドの話関係なくなっちゃったよ。
お前は本当にベッド欲しいの?」
「べつ…に…どうでもいいかなって」
「もういいよ」
お疲れ様でした。