友だちの話
早川睦心、16歳。
今日はクラスで、
インフルエンザで4人休んだ。
私の仲良しグループは、私以外みんな。
隣の席のみよちゃんのグループも同じ。
今日はお互いひとりぼっち。
いつも明るいみよちゃんも、
今日は何だか雰囲気が違う。
(私と同じ気持ちかなぁ…
友達も心配だし…
自分の感染も心配…そして…
ちょっとみんなとの距離が難しい…)
「早川さん」
「は、はい!」
「これ後ろに回して貰っていい?」
「あっ、ご、ごめん、佐藤くん」
前の席の佐藤くんから、
配布物を受け取って後ろに回す。
すると佐藤くんが話しかけてきた。
「大丈夫?元気ないけど」
「う、うん。
みんな休みだからちょっと…」
「早川さん。
病は気からだよ。
元気出して。
みんな笑顔で戻ってくるって」
「あ…あ、あっ、ありがとう。
ごめん…ね、心配かけて」
「そんなの当たり前だよ」
「そ…そうなんだ?
ほ、ほんと、ありがとう」
そして、
その日のお昼休み。
私はお弁当を持って教室を出た。
(今日はひとりだし中庭で食べよう)
中庭のベンチには先客。
「…みよちゃん?」
「あれ?むっちゃん。
どうしたの?」
「何か教室に居づらくて…
ここでご飯食べようかなって」
「私もおんなじ!
よかったら一緒に食べよ!」
「うん」
「……
難しいよね~。
露骨に避けてはこないけど、
気を遣われてる感じがさ。
空気でわかっちゃうよね」
「うん。
みよちゃん、体は平気?」
「全然なんともない。
でも、しょうがないよね。
クラスで誰かが感染したら、
私でもそうするかもだし…」
「落ち込んでる?」
「私は大丈夫よ~。
ただ話し相手がいないのが、
ちょっとキツいかなぁ…
私、お喋りだから」
「それ、みんな知ってる」
「だよね。アハハ。
そうだ、いい機会だからさ、
ちょっと私の悩み聞いてくれない?」
「みよちゃんの悩み?」
「そう!
何ていうかさあ…
これは友達の話なんだけどね…」
(これって、みよちゃん本人の話かな?)
「友達がどうしたの?」
「ある女の子の話なんだけど、
その子には大好きな人がいるらしいの。
どうすればいいのかわからなくって、
告白するか、告白させるかで、
悩んでるみたいなんだって」
「付き合うことになったら、
グイグイ行きそうなタイプの子だね」
「そうなの。
でも男子とのお喋りが苦手で、
友達のさらに友達の話によると、
その子見てると今行けよ~!って、
言いたくなるくらいの子なんだって」
(お喋り苦手?友達の友達?
あれ?みよちゃんの話じゃないの?)
「そうなんだ~。
その子の行動って、
ちょっとヤキモキするね」
「そうなんだと思う。
話を聞く限りでは。
一体誰なんだろう?」
「みよちゃん、その子知らないの?」
「相談してきた子も、
誰かは教えてくれなかったの。
話題にされるの嫌がるだろうからって。
でも気になるよね~クラスの子かな~。
落としたペン拾って貰っただけで、
耳が真っ赤になるみたいで、
一番後ろの席からでもわかるんだって」
「?!」
「どうやら去年のバレンタインデー。
通学路で待ち伏せて、
大好きな人にチョコ渡そうとして、
緊張のあまり見ず知らずの、
お爺ちゃんに渡したんだって!
そしたら貰ったお爺ちゃんに、
手を合わせて拝まれちゃって、
返してもらえなくなった話…
ドラマみたいじゃない?
ウケるよね?!
私、その話聞いた時、
超~笑ったんだけど!」
「みよちゃん…」
「ん?!」
「それ私…」
「え?」
「そのウケる話…
私の去年のバレンタイン」
「マジ?!」
「まじ…」
「嘘!まじ、ごめん!
まさかむっちゃんの話だったなんて。
じゃあ、好きな相手って佐藤くんだ!」
「!!」
「相談してきた子も、
友達の話なんだけどって言うから、
てっきりその子の話だとばっかり」
「…って言うか…
私の好きな人、何で知ってるの?!
友達には誰にも言わないでって、
あんなに言ったのに~」
「なに言ってんのむっちゃん。
佐藤くんを好きなことなんて、
恐らくクラス全員知ってるよ。
佐藤くん以外」
「ええぇ~~~!」
「あとごめん、むっちゃん。
私、むっちゃんに謝らないと」
「…なに?」
「私、そのむっちゃんの話…
私のSNSでフォロワーさんに、
相談しちゃった」
「ええぇ~~~!
それって学校の人も見てるの?」
「結構…いる…ね。
中にはむっちゃんと佐藤くんって、
気付いた人いるかも?」
「そんなぁ~~!
……
ちなみになんだけど…
みちょちゃんってフォロワー数何人?」
「え~と…
先週で12万人!」
「まさかのインフルエンサー!!
私…
休みたい…」
お疲れ様でした。