転来
行列に並んでる男。
(やっぱこうなるよな~。
ゴールデンウィークだし、
いつも以上に混むのはわかってたんだ。
これほぼ観光客…。
近場で来てるの俺だけかも…。
いや俺だって平日来たいよ。
でも、人気店で昼食なんて無理じゃん。
だとこうなるわけさ…。
会社の同僚や、
俺のSNSでもこの店、
大人気なんだよなあ。
そうなると、
来たくなるし…
来るしかないよね。
まあこれだけの人が推すんだから、
美味いんだろうし行列も当然か…。
あ~あとどれくらいだろ?
せめて1時間以内で中に入れれば…)
55分後。
「次のお客様、カウンターどうぞ」
(やっとだよ。
なんだよ、あと2人からのあれ。
まさかの買い物してきた観光客が、
俺の前の人物に、
買い物終わったよ~
ちょうどいいタイミングだね~的な?
あれはないわ~!
しかも12人…
前に1人に12人足して…
割込様が13人。
しかもどこの国の人かわからんけど、
みんなタトゥー入っててデカい!
俺はこう見えて…、
言えないタイプよ。
身長180あるけど…。
その外国人と目が合った時は、
ちょっと屈んだし…。
無理無理。
会社でもそのスタンスよ、俺は。
あとから言える時に言う派…。
だから、ほぼ言ったことない派…)
「お客さん、注文いいですか?」
「あっ、すいません。
もうちょっと待って下さい」
(うわ~やっちまった~。
考え込んですっかり注文忘れてた。
どれにしよう…
なんか…
入口付近から視線感じる…
怖っ!
何、もう犯罪者を
見る目じゃん、それ。
これはすぐにでも決めないと、
通報レベルだ!
え~い、もうこの限定でいいや)
「すいません!
この限定を、大盛りで!」
「お客さん、今日限定やってないよ。
書いてあるでしょ」
「え?!」
(どこ?!……あった。
このメニューは日曜・祝日はやってません。
…って、ちっさいよ文字…。
いや、そんなことより、
もう行列の視線が殺意に変化してる…。
これは危険だ!
もう店名のついたこれしかない!)
「すいません!
花子ラーメン普通盛りで!」
「花子1丁~
あ~がとうございや~す!」
(ふ~良かった~
何か生きた心地がしなかった~。
でもこれで何とか…)
「花子1丁~
お~たせしやした~」
「あっ、はい」
(早っ!
こんなに早く出るのに、この行列って…
一体この店、1日何食出してんの…って、
まず、そんなことはどうでもいい!
もうさっさと食えよ圧が、
背中に容赦なく刺さってる。
ヤバい、早く食べないと。
どれ…まずは麺から…
……普通の…ちぢれ麺だな。
じゃあ、スープは…
……この前食べた…よくある味。
いやいや、
きっとチャーシューが…
……溶けた…。
俺の好みのは、
こんなゼラチンみたいなのじゃなくて、
こう~何て言うか~
ここまで煮込まない…
少し歯ごたえのあるやつがいいのに…。
はあ~。
まあ、食べれないわけでもないし、
さっさと食べてしまおう…。
待て!
この状況ヤバいぞ…。
ラーメンの感想どうする?!
同僚に絶対聞かれる!
散々自慢してきたぞ、俺!
感想…
答え…
何が正解なんだ~~?!
まだまだピンチは…
つづく。