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色々事情があるのよ

御年80歳の未来さんと光里さん。
今日も井戸端会議で盛り上がる。
近くて遠い…未来のお話。
 
光里「そういえば未来さんの施設、
   スマホ事情ってどんな感じぃ?」
未来「どんな感じって、
   みんな自由に使ってるわよ」
 
光里「そうなの?
   うちは持ち込み禁止なのぉ」
未来「まだそういうとこあるわね。
   プライバシー保護とかでね」
 
光里「でも学校じゃないんだし、
   私たちの世代はスマホが
   当たり前だったじゃない?
   それをみんな一律禁止なんてぇ」
未来「光里さんの施設では、
   以前、何かあったんじゃない?」
 
光里「そうかもしれないけど…
   何かに落ちないよねぇ」
未来「そうね。
   私たちにとってスマホ利用禁止って、
   ちょっと戸惑とまどうわね」
 
光里「そうでしょ。
   何とかしてほしいなぁ。
   ところでみんな使ってるのぉ?」
未来「そうね。
   8割ぐらいは持ってきてるみたい」
 
光里「8割?
   もうほぼ全員だねぇ」
未来「そうね。
   大部屋に大きなテレビ1台
   置いてあるけど誰も見てないわね」
 
光里「うわ~、
   うちらはそれしかないから、
   仕方なく見てるのにぃ」
未来「テレビも大変でしょ?
   自分の好きな番組見れないと」
 
光里「そうなの!
   いつも偉そうなお爺ちゃんが、
   自分の見たいスポーツに変えるのぉ。
   ひどくない?昭和じゃあるまいしぃ」
未来「どこにでもいるわ、そういう人。
   だたスマホがあるからって、
   良いことばかりでもないわよ」
 
光里「え~そう?
   楽しそうだけどぅ」
未来「みんなが好きな時間を
   過ごすという意味ではいいけど、
   問題も多いわよ」
 
光里「どんなぁ?」
未来「みんな難聴なんちょうで、
   イヤホンからの音漏おともが凄いの。
   音量調整が上手にできないの…。
   本人が歌ってるのかと思ったわよ。
   その人の口から音楽が流れてるように
   感じた時があって二度見したわよ」
 
光里「それはヤバイ」
未来「それ一人二人じゃないからね。
   まあ、あと人を勝手に撮影する人。
   これも多いわね」
 
光里「いるんだぁ?
   そういう時、どうするのぉ?
   お願いして消してもらうの?」
未来「それは絶対やっちゃダメ。
   喧嘩けんかにしかならないから」
 
光里「でもそのままだと、
   勝手にアップされたり、
   悪用されたりするんじゃ?」
未来「今のスマホのカメラには
   人物フィルターがあるから」
 
光里「人物フィルター?」
未来「設定された人物を撮影しても、
   スマホに映像として残らないのよ。
   スマホ持ち込み希望者全員、
   利用日初日に設定してるの」
 
光里「それ良い!
   え~それで解決じゃない。
   うちの施設もそうしてくれればなぁ」
未来「まあ方法のひとつとしてね」
 
光里「いいなぁ。
   スマホさえあればあの7時間も、
   別の過ごし方ができるのにぃ」
未来「そうよね。
   スマホが使えるというのは、
   施設選びの中で好印象だったのは、
   確かね」
 
光里「私もじっくり調べればよかったぁ。
   民生員みんせいいんさんにすすめられるがまま
   だったから…。
   未来さんはスマホどうなのぉ?」
未来「私はおしゃべりが多いかな。
   でも、仲のいい人が入浴中とか、
   その間、色々見たりするわ」
 
光里「そう、それがしたいのぅ。
   ちょっとした時間をつぶのが、
   苦痛なのぅ」
未来「私たちの世代はね。
   でも、スマホ使ってるの見てて…
   考えさせられる人もいるわよ」
 
光里「さっきの迷惑行為の人?」
未来「そうじゃなく、
   施設に来てまでっていう人達」
 
光里「人達?迷惑集団?」
未来「迷惑はかけてないけど、
   ずっとスマホばっかりの人も、
   半分ぐらいいるのよ」
 
光里「結構、いるんだぁ。
   でもそれは自然な感じが
   するけどぉ」
未来「いや、みんながしてることが、
   社会問題なのよ」
 
光里「社会問題?何がぁ?」
未来「だってみんな、
   スマホでずっとお金稼ぎしてるの。
   配信動画編集してたりして」
 
光里「え?!」
未来「みんなそれで、
   今月の利用料払うんだって、
   言ってるんだから」
 
光里「……切実せつじつな社会問題ぃ」
 
 


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二月小雨
お疲れ様でした。