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ちょっと・・・昔話 恩と怨

眠れない夜に…
 
ある町に、
有名なおじいさんがおりました。
 
おじいさんは町中を、
朝から晩まで…
 
ウロウロ…
ウロウロ…していました。
 
そんなある日のこと。
 
おじいさんはつかれて、
道の真ん中で座り込んでしまいます。
 
それを…
たまたま居合わせた男性が声を掛け、
おじいさんを家まで送り届けます。
 
するとおばあさん大層たいそう喜び、
その男性をもてなしました。
 
それから男性は、
おじいさんを見つけるたびに、
家まで送り届けるようになります。
 
そしてまた、
三人で夕食を共にするのでした。
 
そんなある日。
 
いつものように、
夕飯をご馳走ちそうになり、
帰ろうとした時、
おばあさんが封筒ふうとうを渡そうとしてきました。
 
「おばあさん、これは何ですか?」
「いつも優しくしてもらって、
 大変助かってるから、
 ほんの気持ちだよ
 
「いいえ。
 何だか分かりませんが、
 これは受け取れません。
 
 僕はただおじいちゃんが困ってるから、
 助けているだけです。
 
 それにいつもご飯まで、
 いただいてますし、
 それだけで充分です
「そんなことを言わず、
 受け取っておくれ。
 
 この近所の人は、
 みんな、じいさんを気味悪がって、
 困っていても見て見ぬ振り…。
 
 あんただけじゃよ。
 手を差し伸べてくれるのは…。
 
 だから本当に感謝してるんじゃ。
 
 じいさんの気持ちだと思って、
 受け取っておくれ」
 
「そうですか。
 そこまで言うなら、
 ありがたく頂戴ちょうだいします。
 でも、今回だけですよ
 
そう言って受け取った封筒には、
3万円が入っていました。
 
それからというもの、
おじいさんを助ける度に、
おばあさんは感謝の気持ちと言って、
男性にお金を渡すのでした。
 
やがて男性は仕事を辞め、
毎日、おじいさんを探すようになります。
 
そして自宅へ連れ戻しては、
ご飯とお金をもらう日々を、
繰り返すようになりました。
 
それでもおじいさんとおばあさんは、
毎日、ニコニコニコニコ…。
 
まるで孫でも見るような目で、
男性に微笑ほほえみかけます。
 
(…これで…いいのか?
 
 いや、これはボランティア…
 有償ゆうしょうボランティアなんだ。
 
 困っている人を助けて、
 その対価もらってるだけだ。
 
 何も悪いことをしてるわけじゃない)
 
そう自分に言い聞かせ、
男性はおじいさんの手を引き、
また家へと届けるのでした。
 
次の日。
 
いつもいる公園におじいさんはおらず、
どこを探してもその姿は見つかりません。
 
男性はあせります。
 
男性はいつもより遠い場所まで、
おじいさんを探しに行くことにします。
 
すると駅にあるバス乗り場のベンチに、
おじいさんがちょこんと座っていました。
 
「お、おじいさん…どうしたの?
 こんなとこまで来て~。
 心配したよ…」
「おお、あんたかぁぁ。
 おんぉんぉん…うぉんぉんぉん…
 
男性の顔を見て、
急に泣き出すおじいさん。
 
「どうしたのおじいさん?
 何かあった?」
おんぉんぉん…うぉんぉんぉん…
 
「ほら、おばあさんが心配してるよ。
 一緒に帰ろう」
おんぉんぉん…うぉんぉんぉん…
 
泣いているおじいさんの、
背中をさすりながら、
二人が家まで帰ってきた時には、
すっかり日はれていました。
 
しかし、家の電気は点いておらず、
入ると中は静まり返っていました。
 
「おばあさん!
 おばあさん!」
 
男性は呼びかけますが、
返事はありません。
 
居間の電気を点けると、
テーブルの上には一枚の手紙。
 
男性宛ての手紙。
 
あわてて中を確認すると…
 
そこには…
 
 
いつもおじいさんのこと、
ありがとうございます。
 
あなたのような、
親切な方にめぐり会えて、
本当に幸せです。
 
おじいさんのこと、
よろしくお願いします。
 
 
男性はおばあさんの、
カバンくつがないのを確認し、
事の真相に気付き…肩を落とすのでした。
 
おんぉんぉん…うぉんぉんぉん…
 おんぉんぉん…うぉんぉんぉん…

 

このお話はフィクションです。
実在の人物・団体・商品とは一切関係ありません。 

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二月小雨
お疲れ様でした。