あなた…どうして？

リビング。
 
正座している夫。
 
その前に、
陽気ようきなピエロの格好かっこうをしている妻。
 
急に室内に流れる音楽。
 
♪タタタン～タタタン～
　トンテントン♪
 
「♪どうして～お金が～♪
　減るのかな～？ん？」
 
「いや、返すつもりだったんだよ…
　金曜日借りて土曜日のレースで…
 
　でもガチガチ本命だと思ってたら…
　１０年に１度ぐらいの大穴が来て…
 
　で、どうしようかなって考えて…
 
　そう言えば今日…
　新装オープンの店あったの思い出して…
 
　並んで打ってみたんだけど…
　全部のまれちゃって…
 
　いま…
　こんな感じ…です」
 
「……」
「……」
 
「……」
「……」
 
♪タタタン～タタタン～
　トンテントン♪
 
「♪どうして～チョコが～♪
　減るのかな～？ん？」
 
「そ、それは…
　昨日、疲れて帰ってきて…
 
　なんか甘いもの食べたいなぁって、
　冷蔵庫開けたら…
 
　見慣みなれない箱があって…
 
　あ～誰かから、
　貰もらったんだろうなあって…
 
　１個試しに食べたら…
　ちょうどいい甘さで…
　
　疲労感ひろうが和やわらいで…
　これは疲れた体に最適だなぁって…
 
　ゴディバ？…
　知らないメーカーだなあ…
 
　でも結構、イケるなぁ…
 
　ふと…気が付いたら…
　ほとんど食べちゃってた…からです」
 
「……」
「……」
 
「……」
「……」
 
♪タタタン～タタタン～
　トンテントン♪
 
「♪どうして～お店を～♪
　決めるかな～？ん？」
 
「それはあのぅ…
　１回聞いたよね？
 
　どこで食べたいって？
 
　でも…忙いそがしかったのかなあ…
 
　どこでも良いよって…
　僕には聞こえたんだよねえ…
 
　どこでもいいの？
　いや、行きたい場所あるでしょ？…
 
　そう思ったよ…
　そう思ったけど…
 
　同じこと…また聞かない方が…
　いいかな～って…
 
　だから僕の好きな店にしたんだけど…
　やっぱりダメ…だった？
 
　…サイゼリ◯？
 
　いや、これでも悩なやんだんだよ…
　うん。ほんと…ほんとに…
 
　餃子◯王将と、どっちにしようかって…
 
　え？！
　どっちもダメ？
 
　結婚記念日のお祝い？」
 
「……」
「……」
 
（助けて下さい…
 
　妻のピエロの格好が怖すぎです。
　笑顔なのが特にきます。
 
　もう…
　もう…しませんから誰か～
 
　この地獄から…僕を……）
 
「……」
「……」
 
♪タタタン～タタタン～
　トンテントン♪
 

このお話はフィクションです。
実在の人物・団体・商品とは一切関係ありません。