三月さんと編集さん ~砂下~
7月某日
雨のち晴れ時々、満喫
「ポケェ~~~」
「三月さん。
私、話しかけて大丈夫な状態ですか?」
「失礼ね。
大丈夫に決まってるでしょ。
私は変な人じゃないわよ」
「顔面脱力でポケェ~~って、
言ってる人はまともじゃないです」
「これは夏バテの練習」
「夏バテに練習っているんですか?」
「私はなったことないから、
なったらどうなるのか妄想してたの」
「相変わらずアホなことばっかり、
よく思いつきますね。
それで何かわかったんですか?」
「わかりましぇん」
「ほんとアホですね。
じゃあ何のためにやってたんですか?」
「夏バテを理由に、
原稿サボれるかなって」
「考えてることはクズですね」
「そんな~褒められても~♪
あれ美味しいもんね~♪
知ってた?
最近それ飲めるんだよ♪」
「葛違いですね!
いつも頭がお花畑で…
三月さんは落ち込むことないんですか?
気持ちが落ちたりとか?」
「ありますよ、失礼な!
にんげんだもの」
「相田みつをさん的に言ってますけど、
そんなことあります?」
「あれはちょうど去年の夏」
「去年の夏?」
「みんなで行った海水浴」
「海水浴?」
「みんながビーチバレーをやろうと、
私を呼ぶので駆けていったら、
見事に落ちたの…結構、深めに」
「それ落とし穴でしょ。
いや、物理的なお話じゃなくて…」
「そしたらみんなが笑顔で、
私の心の隙間を埋めるの」
「砂で埋められてますよね?
それ…」
「心が温まったわ~」
「砂風呂状態だからね」
「そしたらね、
みんな遊びに夢中になって、
私のこと忘れてしまったの…
その時、私思った…」
「それって…」
「海水、しょっぱ!って」
「それ潮が満ちたんでしょ!
どうしたんですか、それで!」
「もちろん友達が、
うっかりうっかりって言いながら、
助けに来たわ」
「それ…ほんと友達ですか?」
「でも潮が満ちるのが早くて、
あっという間に頭まで水を被ったの」
「それヤバイじゃないですか!」
「そしたら友達が親切に、
スキューバーダイビングさせてくれて」
「それ呼吸確保に、
シュノーケルつけただけでしょ!」
「楽しかった~」
「何でそう思えるの?」
「褐色の肌の男性陣に囲まれて、
幸せだった~」
「それ絶対、
ライフセーバーでしょ!」
「そして冬でもないのに、
男性にリフトアップされて、
キスアンドクライよ」
「助け上げられて、
人工呼吸されたのね」
「その時は…
さすがの私も…落ちた…」
「三月さん…」
「砂が綺麗に…
小麦色の男性の手で。
そして…恋に♪」
「聞くんじゃなかった」