旅のオトモ
車で出張先へと移動中。
男女の会話。
「雨あがりましたね」
「出てきた時は土砂降りで、
最悪だ~とか思ってたけど」
「日頃の行いのおかげですか?」
「たまたまでしょ?
でも、そうだとしたら嬉しいな」
「何か日頃、
心がけていることあります?」
「特に意識してることはないけど、
頼まれたことは断らないぐらいかな…」
「だからゴールデンウィーク開けに、
出張なんですね」
「まあ…そうなるね。
部長から話があった時、
みんな顔背けて…
ひとりも手を挙げなかったし…」
「ゴールデンウィーク明けって、
みんな疲れてるんでしょ?
遠出で長距離運転された方も
いるでしょうし」
「そんな感じだったなあ。
連休明けは勘弁って顔してた。
うちは子供が部活や遠征で、
送り迎えがあって家に居て、
どこにも出かけなかったけど…。
でも、なんか疲れた感じあるなあ…」
「送り迎えも運転ですからね。
あっ、そこは左車線に」
「おっと…。
……やっぱり疲れの原因はそれかな?
最近、休日明けも疲れが取れてなくて…
何ていうの…こう…
体の芯に残ってるような」
「まず眠れてます?」
「これがほんと眠れなくて。
風呂上がりに寝ようと思って、
ベッドに入るけどスマホ触ると、
ずるずる動画見てりして…結局、寝落ち。
いつ寝たかわからないんだよね」
「気をつけて下さい。
それ睡眠というより、
気絶に近いと思いますよ」
「そんなことあるの?」
「まあ人によりますけど、
疲れのピークで、
急に意識が遠のくらしいです。
先日、交差点で寝てる運転手見ました。
クラクションで大袈裟なぐらい、
飛び上がってる姿、
生で見ましたから、私。
最近そういう方、多いみたいですよ」
「へえ~。
自分どうなんだろう?」
「私から見れば予備軍ですかね。
ゴールデンウィーク明けの、
体調を気遣って部長さんは、
このサービスを申し込まれたんだと
思います。
あっ、佐藤様。
右車線に路線変更しておいて下さい。
その先、大きな左カーブになってまして、
すぐのところ右手に下り口がありますから」
「ありがとう。
ひとり出張だから、
ちょっと不安だったけど、
給油以外で休憩することなく、
ここまで来れたのはあなたのおかげです」
「まだ目的地までもう少しありますから、
まだ挨拶は早いですよ」
「そうですね。
でもお一人様出張サポートナビって、
素晴らしいサービスですね。
車載カメラだけじゃなく、
スマホの映像も連動して、
リアルタイム通信できるのは凄いです。
助手席に誰かいないのは不安だけど、
運転中、隣で眠られると、
なぜか眠くなるんですよね。
こうやって話しかけられてると、
眠くならないし、まず道中が楽しいです。
AIのお喋りサービスもあるけど、
会話というより質問が多くて、
対話じゃなくて尋問されてるみたいで、
逆に疲れるんです。
あと、あなたのナビは完璧です。
何の心配もなくここまで来れましたから。
既存ナビって更新忘れると、
平気で嘘の道教えてくるから」
「よく耳にするお話ですね。
佐藤様は今回、
マニュアルサービスを選ばれてますが、
他にオート、セミもございます。
オートは完全な遠隔運転代行。
セミは緊急補助操作限定でございます。
障害を持たれてる方でも、
安心できるサービスになってます。
自動運転レベル4の車種も増え、
誰もが車を保有できるようになりました。
しかしそれでも事故はゼロではありません。
それもあってかお陰様で、
このサービスに申し込まれるお客様は、
年々増えてます。
佐藤様、まもなく目的地です。
本日は、
当社オートモバイルナビゲーションの、
サポートナビご利用頂き、
誠にありがとうございます。
この3時間とても素敵なお話が伺えて、
私にとっても楽しい時間となりました。
佐藤様、またのご利用お待ちしております」
「こちらこそ、ありがとうございました」
「本日の担当は高橋でした。
では佐藤様、失礼します」
ポロン。
「……
……
急に寂しくなったなあ…」
スマホを手に取る佐藤。
「あっ、佐藤です。
部長をお願いします…
……
あっ、部長。佐藤です。
無事、いま取引先に着きました。
それでですね…
これ帰りのサポートナビは?…
ない…そうですか…
え?…その時は自腹?…ですよね。
わかりました…考えます。
じゃあ、失礼します」
ポロン。
(2日間の出張費が……
宿泊をカプセルホテルに変更すれば…
…イケる!)
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