店主パタパタ
本屋。
女性二人。
「ねえ」
「……」
「ねえ、ちょっと」
「ん?
どうしたの?」
「どうしてそんなに、
落ち着いてるの?」
「ん?何で?」
「だって私、
漫画の立ち読みなんて、
人生初だからさ」
「そうなの?
私もだけど」
「だから何でそんなに、
落ち着いてるのよ」
「別に、
ドキドキする必要もないじゃない」
「そう?
私、何だか悪い事してないけど、
悪い事してるような感覚なんだけど」
「あ~そういうこと?
気にしすぎだって」
「だって私が見た昔の映画で、
立ち読みしてる人は、
はたきっていうの?
何かフワフワの付いた棒で、
追い払われてたよ」
「大丈夫よ。
ここは心配ないって」
「しかもさ…何で私、
こんな派手な服選んじゃったんだろ…」
「それ、自分で選んだんでしょ?」
「まあね…
最初、可愛いって思ったんだけど、
冷静になると…ちょっと恥ずかしい。
これ、10代で着るような服じゃない?」
「そう?
似合ってるよ。
そのイヤーカフも素敵だし」
「ありがとう。
でも、よく見ると、
私みたいに子供っぽい人、多いね」
「そうね…でも実年齢はどうなんだろうね?」
「ここは少年少女漫画コーナーだから、
若い人が多いよね、きっと。
この裏は青年成人向けでしょ?
客層違うのかな?」
「そうなんじゃない」
「でもよく考えたら、
この店では子供でも、
大人の漫画読めるんだよね?」
「規制はないんじゃない?
場所移動も自由だし、
年令制限なかったでしょ?」
「ゆる~い感じ…いいよね。
あんまり厳しいと、
落ち着かないから」
「昔の立ち読みって、
やっぱり注意とかされたのかな?
それに読んでる人たちの罪悪感とか…
どうだったんだろうね?」
「どうだろう。
でも、立ち読みのために来店した人が、
何かただで読んで申し訳ないから、
買っていくって人はいたと思う」
「それは絶対いたと思う!
今でも、
コンビニでトイレ借りただけなのに、
わざわざ何か買って出てくる人いるし」
「それ私」
「そうだそうだ。アハハ。
あれ?
ちょっと待って。
私の時計、止まってる」
「ほんとだ。
止まってるね。
私のは…
あれ、ちょっと!
おしゃべりしてたら、
残り時間1分切ってるよ」
「やだ!
私、これ最後まで読みたいのに」
ピピピピッ!
ピピピピッ!
「やだっ!時間!」
「あと、もうちょっとなの!」
パタパタパタパタ!
バサバサバサバサ!
「何か、キターー!!」
「これが噂の、
ハタキを持った本屋の店主!」
「お時間デス!
お時間デス!」
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お疲れ様でした。