セクスィー田中さん
経理部。
「係長、これ確認お願いします」
「はいはい…
見させてもらうよ…
………
………
う~ん。
いつも完璧だね、田中くんは」
「どうも」
「おや?
田中くん…雰囲気変わったね。
何だろ?
いつもと表情が違う感じが…」
「いえ…そんなことは…」
「簡単に言うと、
キレイになったと言いたいんだけど、
上から女性社員への言葉選びは、
厳しく言われててね…。
でも、今の田中さんは以前より、
とても好感が持てるよ」
「ありがとうございます。
お友達にメイクを教わったので、
そのせいかと思います」
「そうか。
とっても似合ってると思うよ。
僕の語彙力ではそれぐらいしか、
言えないけど」
「いえ、そんな。
ありがとうございます」
「ちょっとぅぉ~~!
そんなぁ~レディ~に対してぇ~
当たり障りのなぅぃ~褒め方はぁ~
ないんじゃなぅぃ~のぉ~!」
「あなたは!
セクスィ~部長!!」
「あらぁ~田中すわ~ん!
メイク変えたのねぇ~ぇ~ぇ~!
ファンデェ~ションってぇ~
これぇ~あれでぇしょぉ~?!
ダ◯ルウィアじゃなあぅぃ~?
コンシィーラァ~のぉ~
のせ方もぉ~上手ぅ~
あなたぁ~肌も白~ぅぃしぃ~、
キメが細かいからぁ~
もぉったいないなぁ~とぉ~
思ってたぁ~のよぉ~」
「はあ…」
「メウィク~教ぅぇてくれぇ~た子ぉ~
ものスゴぉ~くぅ~
田中すわ~んのことうぉ~
よぉ~くぅ見てるぅ~子ねぇ~!」
「は、はい。
よくしてもらって…ます」
「しぃかもぉぅ~
あ・な・た・からぁ~
何やらぁ~フェロモォ~ンがぁ~
ビシッビシッっとぉ~
私のぉ~肌ぅぉ~
刺激するぅ~んですけどぉぅ~」
「そ、そ、そんな…私は何も…」
「ちょぉ~っとぉ~
そこんとこぉ~聞かせてくれるぅ~
なにがぁ~あ・な・たぅぉ~
そおぅ~させたのぉ~」
「いえ、あの、私…」
ポーーーン♪
「田中すわ~ん!
ランチ行くぅわぁよぉ~!」
「え、え、ええ~~!」
「ついでにぃ~係長もぉ~」
「ついで?!」
社員食堂。
「今日もぉ~繁盛してるぅ~わねぇ~」
「うちの食堂は、
美味しくて安いですから」
「私は初めてです。
いつもお弁当なので」
「お弁当、大丈夫?」
「大丈夫です。
会社の冷蔵庫に、
入れさせてもらいましたから。
持ち帰って晩ご飯にします」
「ところでぇ~
あなたのハ~トうぉ~
射止めたぁ~メ~ンわぁ~
どんなぅぁ~パ~ピ~なのかしらぁ~」
「それは…」
「言っちゃぁ~いなさぁぃ~
スゥ~ッキリィ~するわぁよぉ~」
「実は私もわからなくて…。
ある男性のことを、
私は好きだと思ってたんです。
でもこの間…
キスを迫られた時、私…
拒んでしまって…。
しかもなぜかその時、
異性として意識したことなかった人が、
頭に思い浮かんじゃって…」
「あらぁ~あらぁ~
あ・な・たぁ~
見た目ぇ以上にぃ~
恋多きぃ女ぁ~なのねぇ~
やるぅわぁねぇ~素敵よぉ~」
「そ、そんな…私はまだ男性と、
お付き合いなんてしたことがないので」
「恋愛は経験じゃないわ。
どれだけ相手を愛したかよ。
好きという気持ちを、
どれだけ熟成できるかなのよ。
迷いなさい。
そしてそれを楽しみなさい。
今が恋愛で一番、
楽しい時間なんだから」
「は、はい。
楽しみ…ます」
「まあぁ~私はぁ~
1年以上ぉ~同じぃメ~ンとぉ~
続いたことはぁ~ないけどぉ~ねぇ~」
「スゴいです。
セクスィー部長」
「ひとつの課が、
彼女のせいで消滅したことがあるんだ。
そしてその時の生き残り…
この人に…
1時間で振られた人が、
隣の課にまだいる…」
「ほんとですか?!」
「二人してぇ~
なぁ~にぃ~
ごちゃぽちゃいってぇるぅのぉ~」
「いえ、何も」
「特別なことは…」
列の前の方から声が。
「ヒャッハーー!
ウォォォォ~イエェェェェ~!!」
「あれはぁ~!!」
「あの奇声を上げてる方は、
誰ですか?」
「あれはさっき言った、
セクスィー部長に1時間で振られた男…
そう…
エクスタシィ~部長だよ」
「エクスタシー部長?!」
「もっとぉ~もっとぉだぁ~!!
大盛りぃ~イヤーー!!
特盛りぃ~だぁ~~!!」
「あの人は昔は将来有望視され、
誰からも一目置かれる人だった。
誰よりも仕事ができ、
破竹の勢いで若干25歳で部長に昇進。
だったのに…
彼女と出会い…わずか1時間で…
彼の人生は大きく狂ってしまった。
きっとショックもあったんだろうね…。
もしくは…
うちに秘めたる人格を、
彼女に引きずり出されたのか…
気付けばあんな感じに」
「お~ば~ちゃ~ん!!
その~あ~んかけはぁ~
もっとぉ~!もっとぉ~!
ベチャ~っとぉ!
ベチャ~っとぉ!
叩きつけるようにぃ~!
皿にぃ~!
よそってくれぇ~~!!」
ベチャッ!
「オゥ~~!!
最高ぅ~だぜぇ~!!
そのサウンドがぁ~!!
オレをハートうぉ~!!
たぎらせるぅ~~!!
ヒャッハーー!!」
ベチャッ!
「クォォ~最高ゥ~~!!
ファイナル~エクスタシィ~~!!」
「あなたぅぁ~久しぶりねぇ~
エクスタシィ~」
「おまえはぁ~!!
セクスィ~~!!!」
見つめ合う二人。
「ダメだ!
あの2人が絡んだら!!
田中くん、ここは危険だ!
離れるよ!」
「は、は、はい!」
………。
「……あの係長…」
「何だい…田中くん」
「この会社は上に行くと、
あんな感じになるのでしょうか?」
「そんなことは…ないと思うよ。
僕もまだ…かろうじてこんな感じだし」
「そうですか…
いえ、ちょっと、
この会社の未来を案じてしまって」
「大丈夫…だと思う…
としか言えないけどね」
「あら~
あ・な・た…は~
田中さんね~」
「え?
あっ…はい…
ど、どちら様でしょうか?」
「私~?
私は人事部のものよ~」
「人事部の方?
私に……何か?」
「あなた~
恋~~してるわね~~」
「いえ、そんな…私は…
まだはっきりとは…」
「いいのよ~。
私には分かるから~。
だ~って~
人事部ですもの~」
「そ、そうなんですか?」
「今のあ・な・たが~
気になってる二人の男性~?
田中さんにはどうかな~って、
私は思うわ~け~。
も~っと~
田中さんに相応しい相手~
いるわよ~~
社内では5名~
社外では12名~
私の方でもう抑えてるわ~~」
「お、抑えてる?
え、え、何で…そんなことを?」
「田中くん、その人はダメダメ!」
「係長?!」
「その人も有名人!」
「どなた、なんですか?」
「あれは、
ゼクシィ~部長だよ!」
「ゼクシィー?!
私、結婚させられる!?」