猫の不思議⑤

愛用してた座椅子。
 
煎餅せんべいのようになり、
骨組みがお尻に当たるように。
 
それでも使ってきたが、
さすがに我慢がまんの限界げんかいが訪おとずれた。
 
街へ行き、
１人掛けのソファーを探す。
 
何店舗か巡めぐり、
赤札ではあるが、
自分好みの可愛いソファーを見つける。
 
気になって札をめくる私。
 
札は幾重いくえにも重なり、
定価札から１万円もお安くなっていた。
 
（なぜ、売れなかったんだろう？）
 
そんなことを思いながら、
椅子をレジへ持っていこうとした。
 
ふと思った。
 
（自分だけ買うのも忍びない…）
 
うちには節約生活で、
苦楽を共にした愛猫がいる。
 
（何か、買って行ってあげよう）
 
本当はキャットタワーを、
買ってあげようとずっと思っていた。
 
でも買おう買おうと思っているうちに、
お歳のせいか高く飛べなくなっていた。
 
そこで私は、
カマクラ型の寝床を、
買ってあげようと思いついた。
 
猫用トンネルが好きで、
よく遊んでいたのを思い出した。
 
実は前回、何も考えずネット購入した、
モップのような犬に似たクッション。

その柔らかさが苦手なのか、
使って貰えなかった。
 
（今回は喜んで使ってくれるといいな…）
 
その２つを台車に乗せて、
レジで会計を済ませる。
 
家に持ち帰り、
やっとの思いで部屋に運び込むと、
猫はすでに棚の上に避難ひなんしていた。
 
「おいで、おいで」
 
警戒けいかいしながらも、
少しずつ近づいてくる猫。
 
「ほら、これ！
　入って入って！」
 
近づき匂においを確認する猫。
 
そして…
 
ピョンと高く飛び上がり、
ソファーの上に寝転んだ。
 
とても優雅ゆうがな姿勢で…。
 
私はカマクラ型の寝床を被かぶり、
猫と一緒に記念写真を撮って、
記事にすれば面白いだろうなあと思ったが…
……冷静になって止めた。
 
そして今、
私はモップのようなクッションの上に座り、
ソファーに横たわる猫を撫なでている。

幸せだなあ…
そう思ふ。