後継者をそっと見守る。漁家の安心・安全を支える船舶の位置モニタリングサービス"イチダケ"。
「やっぱり船がどこにいるかだけでもわかると自分の気持ちが楽になるんだよな」
浜坂漁協組合長の川越さんがポロリと口にされました。
川越さんは組合長だけでなく、水産会社「幸榮」社長としても精力的に活動されています。そして現在、会社が所有している大型漁船「幸榮丸」は息子さんが引き継いでおられます。社長として、また親として、漁に出た息子さんのことをいつも気にかけているのだとか。
しかし、これまで沖に出てしまった船の位置情報は陸側ではモニタリングすることはできず、特に出張などで事務所を離れる際は全くわかりませんでした。そこで今年1月にフルノからリリースされたクラウドサービス「ichidake(イチダケ)30」を「幸榮丸」に導入したことにより、いつでもどこでも船の位置がわかるようになったとのこと。
そう、イチダケとはその名前の通り"船の位置情報だけ"をモニタリングするサービスです。それだけ?と思われそうですが、川越さんは導入により早速効果を感じておられるそうです。
今回デジタライゼーション推進部の豊福さん、香住出張所の道下さんと共に浜坂漁協を訪れ、川越さんにお話しを伺いました。
安心は何にも変えられない、親心からイチダケ導入に繋がった
浜坂漁協は兵庫県美方郡、日本海側で鳥取県との県境に位置しています。周辺を海と山に囲まれた豊かな自然環境の中、温泉やビーチなどもあり保養地としても人気があります。
そんな浜坂漁協では10t未満の船が200隻ほど、10t以上の船が20隻と大小多くの漁船が操業しており、松葉ガニやホタルイカなど様々な海産物が年間を通して水揚げされています。
川越さんは高校卒業後に漁師となり、カニ漁などに従事。2007年から第7代浜坂漁協組合長に就任され、ホタルイカのブランド化や販路開拓など、浜坂漁港と港を取り巻く周辺地域の活性化に精力的に取り組まれてきました。また水産会社「幸榮」の社長としての顔もあり、組合長と社長の2足のわらじで忙しい日々を過ごされているとのこと。
出張などで漁港を離れることも多い中、自社の船が今どうなっているか、ちゃんと操業できているかが心配になることもあると言います。そんな想いもあり、自社の船「幸榮丸」に「イチダケ30」を導入されたそう。
川越さん「私はもう船を降りていて、現在は息子が操業しています。ですが今どこにいるんだろう、漁は上手くいってるんだろうかとついつい気になってしまいますね。
漁師というのは漁場を他に知られないようにすることもあり、沖に出るとAISを切ることも多いですからそうなるとどこにいるのかが全くわかりません。イチダケ30を導入してからはパソコンでもタブレットでもどこにいるかが確認できるのでやっぱり安心しますね」
道下さん「川越さんが仰る通り、操業中はAISの信号発射を止める船もある中で、イチダケ30はAISと異なり、契約者だけが搭載している船舶の位置情報を確認することができます。そのため、陸で待つ家族や従業員の方々に安心を提供できるのではないかと感じました。
「幸榮丸」への設置もさせていただきましたが、ケーブルが要らない機器はイチダケ30が初めてで、設置の簡単さに結構感動しました」
またクラウドサービスであるため、陸側ではインターネット環境されあればどこでもサービスにアクセスできることもメリットと感じていただけているようです。
豊福さん「イチダケのサービスをリリースするときに考えていたセールスポイントをご実感いただけていたことがとても嬉しいですね。近年船舶関連の事故が大きくニュースで取り上げられることも多く、安全・安心への意識が皆さん向上していると感じますし、そこに貢献していきたいと考えています」
漁師の目はすごい
位置情報だけでも船上の様子を読み取れる
位置情報がわかるだけで本当に安心に繋がるのかとお尋ねすると「自分も漁師だったからこそ、様々なことがわかるんだよ」と川越さん。
現在イチダケ30は30分ごとの船の位置情報とそれらを結んだ航跡を専用のビューワーでみることができるため、船がどのように動いていたのかを一目で把握することができます。しかし、川越さんが見れば航跡以上の情報を読み取れるとのこと。
川越さん「だいたい時期や海況で漁場がどのあたりか想像できますが、そこで船が様々な漁場を忙しなく移動を繰り返していると『あー結構探し回っているな、、、上手くいってないのかな』と推測することができますね。逆にひとどころに留まっていると順調に操業できているんだなとわかります」
難航しているときは何か連絡したりアドバイスをすることはありますか?と聞くと「そんな野暮なことはしない」とのこと。
川越さん「操業中は集中していますし、特に難航していると船上はピリッとしています。漁業無線でコンタクトを取ることはできるけど、煙たがられるのであくまで見守っています。それも自分が漁師だったからこそ分かることですね」
イチダケ30導入以前は漁の状況などもわからなかったため、安全はもとより漁の成果も心配だったとのことですが、状況を捉えられるだけでも気持ちが楽になったと話してくださいました。
シンプルさがウケている
そんなサービスだからこそ、スピーディーに進化させていきたい
インタビューを進めていく中で同時に様々な要望が川越さんから豊福さんに伝えられています。これまでもリリース以降、顧客要望を取り入れ様々な改良を繰り返してきたそう。その中でも従来のフルノ製品ではあまり例がなかったメッセージアプリ連携などは顧客から好評価を得ているといいます。
豊福さん「船が操業を終えて帰港する際、漁港から指定した範囲内まで帰ってきたときにLINEでお知らせを通知する機能を導入しました。以前までは無線電話などを使ってやり取りをしていたそうですが、その手間も省け、陸側の受け入れ準備(入港時のフォローや魚を水揚げする準備)のタイミングが共有しやすくなったと言っていただけています」
川越さん「もうひとつ大切なのがそのタイミングでこちらから一度連絡を入れることで事故防止にも繋がります。漁船の事故はやっぱり帰港時が多い。操業で疲れてつい居眠りしてしまい、そのまま岸壁や浅瀬に乗り上げてしまうようなことも過去発生してきました。電話するタイミングを自動的に教えてもらえたら、こちらもミスがなくなりますね」
他にもビューアーに漁区のラインが入ったり、運航レポートなど日々アプリケーションが進化していると豊福さんは話します。
豊福さん「私が所属しているデジタライゼーション推進部は開発のスピード感を大切にしています。イチダケ30もクラウドサービスの利点を活かしてより良いものにしていきたいと考えています。今回のお話の中でも川越さんから改良のヒントを多くいただきましたので、早速仲間たちに共有して機能向上に取り掛かりたいと思います」
道下さん「これまでも川越さんのご要望を豊福さんに報告させてもらっていました。こういった追加機能に関してのレスポンスの速さはフルノ随一だと感じています。要望に早く回答すること=お客様の信頼に直結すると感じていますので、このまま良い連携を取り続けていきたいですね。
新しいニーズにも気付きましたので、色んなお客様に推していきたいですし、新しい要望や私自身気付いたことがあれば積極的にアイディアの提案をしていきたいですね」
彼らの意気込みに「シンプルで頼むぞ!使いやすいのも気に入っているからな!」と川越さんから期待が込められたツッコミが入ります。
船に乗る人だけでなく、陸で帰りを待つ人たちの笑顔を守るために航海の安心・安全に寄与していく。開発のスピード感は変わってもフルノとして大切にしている考えは変わっていません。
・価格改定のお知らせ
このたび、2023年10月5日に新プラン「イチダケ05プラン」の発表に伴い、イチダケ30プランの価格改定(値下げ)を実施させていただくこととなりました。
詳細はこちら
執筆:高津 みなと