まるで未来予知!児童文学の名手・ロアルト・ダールの考えた「AI小説」の物語
こんばんは、古河なつみです。
ロアルト・ダールというイギリスの作家の短編集にAI小説(あるいはAI芸術)が生まれる未来を予言していたかのような興味深い物語が収録されていたので、紹介したいと思います。
ロアルト・ダールという作家について
「ロアルト・ダールコレクション」と呼ばれる児童書シリーズが出版されており(『チョコレート工場の秘密』『マチルダは小さな大天才』など)映画化されている作品も多いことから、海外の児童文学作家として認知されています。短編の名手としても名高く、大人向けの小説ではブラックユーモアが炸裂した作品も見受けられます。今回紹介する短編小説「偉大なる自動文章製造機」は後者に該当する作品でしょう。
「偉大なる自動文章製造機」のあらすじ
この物語は『あなたに似た人[新訳版]Ⅱ』(田口俊樹訳/早川書房)に収録されている短編です。
アドルフ・ナイプという青年は画期的な電子計算機の設計に携わり、上司であるボーレン氏にベタ褒めされても、どこか浮かない顔をしています。
実はナイプ青年は作家になるのが夢だったのですが、出版社からはすげない返事しかもらえません。そこで彼は「自動文章製造機」を考案しました。最初は上司に却下されそうになりますが、彼は必死に訴えます。
出版界から認められないナイプ青年の恨みは深く、しかし彼は研究熱心で各文学雑誌に載る小説のデータを調べ上げて、それぞれの文学雑誌が好みそうな文章を製造する機械を実現させたいと熱心に上司であるボーレン氏に訴えます。
(※原文ママで掲載しましたが、最後の「ボーデン」はおそらく上司の「ボーレン」のことだと思われます)
現代(2022~2023年)のAI芸術の台頭を予想したかのようなセリフ回しに驚かされました。ナイプ青年とボーレン氏のやり取りはコミカルで読みやすいのですが、機械が生み出した芸術には価値がないのか? 資本主義的な考えであれば「小説」もローコストでそこそこの「商品」であれば構わないのか? 文学や芸術に対する美学について鋭く切り込まれているシーンが多くありました。
ロアルト・ダールは1990年に亡くなっているので、彼の生きた時代は個人向けコンピュータ技術についてはまだ黎明期だったはずです。しかし、自動で芸術を生み出す機械を求める一部の人の心理を正確に言い当てています。
この後、ナイプ青年の行動はエスカレートしていき、とんでもないブラックな結末を迎えてしまいます。
果たして、機械に芸術は生みだせるのでしょうか?
永遠の命題に、現実的な答えが出せる日が近づいているのかもしれません。
ここまで読んでくださりありがとうございました。
それでは、またの夜に。
古河なつみ