図書館司書が「それは書店さんに行った方が……」と思ってしまったお問い合わせの話
こんばんは、古河なつみです。
私が図書館司書をしていた時に利用者の方から質問されて調べると、「それは書店さんに行かれた方がすぐに解決できるのでは……」と思ってしまう事例に遭遇した事がありました。
その一例を今回ご紹介したいと思います。
Q.凪良ゆうさんの「イスパハン」が読みたいです。
凪良さんの近年の作品はどれも話題になるものばかりだったのに、聞きなれないタイトルだったのでインターネットで検索をすると……「『滅びの前のシャングリラ』の単行本の初版限定で「イスパハン」という小説の小冊子がついています」という文言がありました。その事をお伝えすると……
利用者さん「初版ってここの図書館にはないんですか?」
私「全て貸出中になっていて、予約になってしまうんですが……その……(言葉がどんどん小さくなっていく)」
当時の段階で図書館では8冊の『滅びの前のシャングリラ』を所蔵しており、購入の日付から初版と思しき本は2冊ありました。
しかし、予約待ちの方が100人以上いらっしゃったために「イスパハン」が収録されている初版本を確実に希望している利用者へ届ける術がなかったのです。
しどろもどろになりながらも何とか状況を説明すると、その方は「じゃあ全部の人の予約が消えた頃に取り寄せてみるわ」と仰ったのです。
多分2年後とかになっちゃいますが……
それより書店さんに行った方が早く解決できるし……
作家さんも嬉しいんじゃないだろうか……
様々な言葉が脳裏を過りましたが「調べてくれてありがとね」と言われてしまったのでそれきりになってしまった事例でした。
この事例を思い出したのには理由があって、実は最近司書をやっている友達から「『あなたのための短歌集』(木下龍也/ナナロク社)に載っているはずの谷川俊太郎さんの言葉が見つからなくて困っている」と相談があったのです。たまたま私はこの本を個人的に持っていたので首を傾げました。
私「え? 最後のページの谷川俊太郎さんの質問と木下さんの答えの短歌の所じゃないの?」
友達「それ利用者さんにも言われたんだけどウチの本に載ってないの~!」
私「もしかしてそっちの図書館で持ってるのって初版?」
友達「そう、これよこれ!(書影のURLを送ってくれる)」
私「ああ……買ったタイミングが悪かったねぇ……」
そして私は書店さんのHPのURLを友人に送り返しました。
その告知の中に「増刷記念として新たに谷川俊太郎さんとのやり取りの一首を収録」という文言があり、友人が探していた内容は版違いのため未収録だと判明したのです。
この101首目の木下さんと谷川さんのやり取りがすごく良くて私も購入した本だったので「初版にはほんとうにこの素晴らしいやり取りが入ってないんだ……」とちょっとびっくりしてしまいました。
最近は作家さんや出版社さんの素敵な取り組みで「初版限定」や「増刷記念」といった形で追加の付録(コンテンツ)をつけてくださる本が増えてきました。だからこそ、オタク気質な司書である私はやっぱり感じるのです。
好きな作家さん、創作者さんの本は書店さんで買った方がいいです!
後から手に入らない特別な付録は図書館ではどうする事も出来ないのです。
今回の紹介は以上になります。
ここまでお読みくださりありがとうございました。
それでは、またの夜に。
古河なつみ