喜びは謙虚な上に口下手だ
中学生の僕は嫌いな先生の教科は予習復習をしっかりとしておき、授業中はぼんやりと過ごすことにしていた嫌な生徒だった。
ぼんやりしている割に前へ出て問題を解くパターンでは普通に正解が出せているので、そのうち教師からもあきれられて空気のように姿を消すことができていた。
だが、これは単純にめんどくさい生徒の一丁出来上がりということにしかならないので、学生のみなさんにはおすすめしない。だって評価はダダ下がりだ。人間が下すしかない評価ならば素直が一番である。全くおすすめしない。
他の教科の先生からはすこぶる評判が悪かった僕だが、中学2年の英語のエトー先生だけは時折フォローをしてくれていた。いとこのよっちゃんの友だちの親類ということもあって、なんとなく身近に感じられる先生でもあった。
「君は理解に関しては問題ないのだけど。これ、解答欄間違い。満点だったのにもったいないな。」
解答用紙の曖昧さがすごく嫌いなのだ。左の上から下に向かって書き込んでいくパターンと左上から右に向かって書き込んでいくパターンと、先生によって解答欄の設え方が全く違うから。解答欄が密集していると、こんぐらがってしまう上にあわてんぼうの僕にとってはなかなかの壁だった。
僕は板書を書き写すだけのノートの取り方も苦手だったこともあり、ポイントだけを黒板に書き込んでくれるタイプのエトー先生にはとてもストレスが少なかった。テストの度に分析を施してくれたり基本的なノートの取り方や予習の仕方も丁寧に教えてくれて、僕にしては珍しく「教師」としてリスペクトできる先生だった。苦手だった教科控室にも出入りするようになっていた。
そんな控室からなんとなく足が遠のき始めた。いつのころからかエトー先生の周りには生徒が密集するようになっていたからだ。カネダもダイちゃんも教科担当違うのに質問に来てるし、そのうち違う学年の生徒さえも出入りするようになっていた。
中学生男子分かりやすよな。
エトー先生は大学を卒業したばかりのショートカットの似合う小柄な美人教師だった。
採用条件をこうやって絞っていけば、日本の学力レベルも向上するんではないかと、よこしまな考えがよぎった。
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