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10年ごしで推し劇団が復活してた話(ザ・プレイボーイズあれこれ)
推し劇団が20周年
こんにちは。とつぜんですが私は十数年前にとある小劇団にドはまりしました。ザ・プレイボーイズという劇団です。
その推し劇団と久々に再会した話を書こうかと思います。
(バッチバチに忙しい合間で書いたので情報不正確かもです!)
泣ける体験
20代のころ、平日休みの仕事をしていて、たまの休日に何かイベントでもやってないか検索をかけてヒットしたのが、とあるお芝居でした。お芝居なんて見たこと無いけど、チケ代も手頃だし、いいかな。
それが『僕の彼女はAVアイドル』という作品。これが設定もタイトルから連想できる通りの易しい筋の作品で、小難しくなくコミカルで勢いもあり。…要するに、めちゃくちゃツボったのです。
小劇場に行ったことがある人なら分かると思うけど、舞台が近い。息遣いが聞こえる。手を伸ばせば届くくらい(伸ばさないけど)。
そんな近くでめちゃくちゃ面白い話が展開して生きて動いて語ってる人がいる。お芝居最高。気づけば悲しいストーリーでもないのに、涙が流れてました。
観劇ライフの始まり
世界には、東京には、こんな面白いことがあったのか。感動冷めやらぬまま、次はどうしたものかと探しました。ドラマや漫画と違って、お芝居の「次」は時間がかかる。じゃぁ他の劇団の作品はと探して、会場でもらった大量のパンフから探して観るのを繰り返しました。
それを1週間~2週間に1度くらいの頻度で続けていたら、その当時の小劇団やアングラカルチャーをほんのり知ることができました。
小劇団というのはどうやら閉じた世界のようで(そこも魅力)劇団関係者に知り合いのいない私が情報を得るのはすんなりいかなかったけれど、調べるのも楽しかったです。
特別な劇団、特別な作品
いろいろなお芝居を観ても、私の中で最初に観た一作品目を超えるものはありませんでした。
ザ・プレイボーイズの作品はどの人物もいじらしく愛おしく、お話も力まず易しく、泣かせるところと笑わせるところがあって。その次と次々も観に行きましたが、どの作品も特別な楽しさがありました。
(なんでかどんどんタイトルがスラッと読めない感じのものになって言ったけど、それもそれで好きでした。)
でも中でもやっぱり好きだったのが最初に観た『僕の彼女はAVアイドル』でした。あれが唯一、しっかり恋愛モノだったからです。
誰かの来歴を反映してるのかなんなのか。当時のザ・プレイボーイズは女っけない男性たちのちょっと(いや、かなり)情けないところを赤裸々に描いていて、そこが抜群に愛おしかった。でも、当時20代でOLだった私にとっては、やっぱりしっかり片思いを描いてくれた”僕カノ”が一番のお気に入りで。最初って、どうあっても特別ですよね。
観劇の終わり
いろいろな劇団、いろいろな会場、いろいろな役者さんを見つつザ・プレイボーイズの公演を待つ生活も、10年前の『解散公演』が巡ってきて終わりを迎えました。
解散公演。あのときどんな気持ちだっただろう。あまり驚かなかった気がします。平凡な会社員の自分からすれば、役者さんや演出家さんの苦労は大変なものだろうと思っていたし。(記憶が正しければ主宰の堀さんは腰痛たいへん、みたいな呟きをずっとしてたような?)
あんなに楽しいものを数千円で見せてくれて、それを維持していくのって大変な事だろうと思っていたから、これで最後と言われても、あぁそっか…。という感じでした。
それで毎週のように劇場に足を運んでいたのも辞めました。何かあれば観よう、と思ってたけど。
世の中にはたくさんの素晴らしい劇団があるけれど、好きで好きで待ち望んで1つの公演をリピするほどの劇団は、ザ・プレイボーイズだけだったし、仕事や結婚などいろいろなことが重なった時期でもあったし。
観劇のない10年
お芝居を見なくなって10年以上が経ちました。嘘みたいに何も見ませんでした。舞台はもちろん、映画もドラマも観ませんでした。
先に書いた通り恋愛ストーリーが好きだったけど、どれもが何か足りなかった。
映画はスクリーンが遠すぎたし、ドラマはおしゃれすぎたし、小説はハートフルすぎたり詩的すぎたりした。あれが足りないこれが足りないと思ってまで観たいものが無かった。
だって30代の10年って、ほんとに忙しいじゃないですか。「あ~暇~」って瞬間がない。寝る時間とか削ってまで観たいほど、さまざまな都合をつけてまで観たいものがない。
そんなこんなで、お芝居は嫌いになってないし好きだけど、もういっか。おばあちゃんになったら死ぬまでに宝塚と劇団四季は観たいな。それくらいでいいな、私の観劇人生は。
…と、思っていたんです。
推しが劇団が再開してた
きっかけは…。そう。数年前に結婚した妹の旦那さんが下北界隈でお芝居を観る人で。「私も嵌ってた時期ありましたよ」って喋ってたんです。
あの時はほんと楽しかったな。ふふ。もう10年も経っちゃって、あれだけたくさん観て感動したこともほとんど忘れちゃったけど…
そういえば、あんなこともあったな…。
その時私の脳裏をかすめたのはこんなセリフでした
『エデュプスコンプレックスを、感じてぇぇぇぇーーーー!!!』
たしか…オカマの母ちゃんが息子に対して吐いたわけわかんないセリフの一つです。「なぜにエデュプス出してくるし(笑)」ってじわっとウケた、当時のセリフとシーンが脳裏をかすめました。
そういえば、主宰の堀さんは今ごろどうしてるのかな。善雄善雄さんに改名してゴジゲンで役者さんしてるとこまでは追ってたけど…。と、そこでやっと知ったわけです。
は?ザ・プレイボーイズ、復活してんの?はぁぁぁぁっ???
開演なう?
Xにたまたまチケ情報が流れてきて今が公演中だと知る。
は?どこの?ザ・プレイボーイズの?関連劇団とかじゃなくて?いつの?今の?
何なの???
気づけば何年か前に復活公演があり、今やってるのは20周年公演でした。
えぇーー!!!そんなんアリ!??
その翌々日、下北に現着。
間に合った。私は間に合ったんだ。
大学4年生の後期に単位がギリギリ足りたときや、台湾旅行の帰りに飛行機にギリギリ飛び乗ったときのを越える安堵感。
今回は!見逃さなかったよ!!涙
涙が止まらない
久々の劇場におそるおそる入って、ちょっと身の置所に迷うような緊張感。日常がすべて遠ざかる、開演のあの瞬間。
初めて舞台を観たときの感情を、ふたたび味わいました。
前説で久々に観る堀さんはあんまり変わってなかった。
(余談ですけど、善雄善雄さんって呼ぶの躊躇います。下の名前呼んでるみたいな気がしちゃって。)
(さらに超早口の余談ですけど、顔かっこいいですよね。でも私、役者さんとしての堀さんも好きだけど、ザ・プレイボーイズへの愛と比べたらキャラメルとホールケーキくらいの違いがあって、どっちも好きなんですが。
だってこのお芝居が観たい。ひとかけらずつも魅力的だけど、どこもかしこも見どころがあって、余所見する暇が本当にないわけで。堀さん1人観るより、堀さんが生み出した舞台全体を観たほうがお得ですよね?(←何基準。))
最前列で、すっごい観ました。すんっごごい集中力で観ました。(←語彙力の崩壊。)
どのセリフもじっくり覚えておきたいのに、あとからあとから上書きしてくるみたいに印象的なことが起こって。
恋する3人の女性が車に飛び乗って、相手をとっ捕まえに行ったとき
クライマックスに差し掛かる興奮と、このお芝居が終わってしまう予感とに、感情がぐちゃぐちゃでした。
感情がブチ切れそう
人の感情って何種類くらい存在するんですかね?
喜怒哀楽とか驚き興奮、激情とか焦りとか…
人それぞれ感情の在り方って違うじゃないですか。
じゃあ仮に私の中に、感情スイッチが20個…いや、多めに見積もって50個くらい並んでるとするじゃないですか。それが日々、その場その場で着いたり消えたりしてるわけです。
その50個のスイッチがね、たった1時間のあいだにね、ぜんぶオンオンオンオンオンになったら、どうなると思います?
自分の中のスイッチ…たまにしか使わないのとか、存在を忘れてるのとか、知らない物も含めてですよ?
全部がオンオンオンオンオンオンオンオンオンオンオンオンオンオンオンオンですよ?
死ぬわ!殺されるわ!息の根止まるわ!!
感情が決壊して涙が止まらない。公演が終わった後もしばらく、観れて「嬉しい」とか演目終わっちゃって「さみしい」とかのスイッチがバリバリにオンのままで。家のリビングでしとしと泣いてましたよ。その日はなかなか眠れませんでした。
さて、今回みた作品は『パラレルワールドでも恋に落ちて』と、『パラレルワールドより愛をこめて』、の2連作。平日に1人でパラ恋を観て家で号泣。その後の日曜日、妹と2人でパラ愛パラ恋と観ました。その日曜日がラスト公演でした。
妹と2人で遊ぶのも久々で楽しみで。こんな休日の過ごし方いいな、と思いつつ下北に着くとまた緊張しました。
舞台が始まる。そして、終わってしまう…。
動員数1003!
そして日曜日。
パラ愛が、パラ恋が、どちらも瑞々しく感動的だった。一番泣けたのはパラ愛でバランが、自分の世界も悪くないと語ったシーン。一番嬉しかったのはパラ恋でみっちゃん達の恋がちゃんと生き抜いたこと。めちゃくちゃ楽しかった。
最後のカーテンコールで堀さんが動員数を発表すると言い出しました。
何これ?何の演出??と、軽いパニック。堀さんの演技はいつも方向性が分かるようで分からない。演技なのかそうじゃないのかもよく分からない。ちょっと、溜めないで!
明かされた数字は 1003 !1003?
きっとその場の誰もが思ったはず。
もし、自分が観にこなければ。もし、途中で誰かがやめてしまったら出せなかった数字…。
つらい。感動が、つらい。
人って感動しすぎるとツラいんですね。全部のスイッチが千切れるくらいにオンオンオンオンオンになっていて。頭の中が並行世界でぐちゃぐちゃになってる。
もし、今日、ここに来なかったら。
もし、ザ・プレイボーイズに出会えなかったら…。
全ての関係者の方はもちろんのこと。
肩がぶつからないように気遣いながら座ってた隣の男性や、同時にチケ列に並んでた見知らぬ人にさえ、「ほんとありがとう!!マジでありがとう!!」と言いたくなるような感謝が沸きました。
推しと推し以外
なんでこんなにザ・プレイボーイズが好きなのかな?
私の中で、ザ・プレイボーイズの舞台は本物の世界なんです。
なんというか… 堀さんが頭の中でこんなことを考えて、それを身近な人たちと語り合ってやってみたらこうなった、みたいな。きっと頭の中ではこういう出来事が本当にあったんだろう。だから、現実。(←論理の崩壊)
他の舞台は、頭の中で考えたことを、さまざまな『試み』として実現した結果が『作品』。
小劇団をいろいろ見て思ったのは『新たな試み』みたいなのがお仕事になっていて、斬新さとか新鮮さとかがたいせつ。わりと違う言語で喋ってる、と感じることも多かったです。(それもそれで醍醐味)
ザ・プレイボーイズは、そういう試みや企みが見え隠れしないので、
変な人は変
ダサい人はダサい
しょうもない人はしょうもない。
ダサい設定を纏ったイケメンは出てこない。
イケメンもちゃんとダサい。「この人イケメンなのにこんなにダサいんだ」そこが良いな、…って思わせてくれる。
この人ふつうに良いな、って感じで登場した人物が、舞台の最後、脳に刻みこまれるような光を放っちゃってる。
人物が発する、溜息から指先の所作や衣装が身体に沿うところまで…顔の皺やホクロや左右非対称な何かさえ、ぜんぶが特別。
最初の登場シーンでこの人はカッコいいとか綺麗とかアンニュイとか思った顔面の第一印象は、別のものでガッツリ上書きされて、「あ、この人ってこういう人なんだ」良いな、好きだな、そんな人がこの世界に存在してくれて嬉しいな。間近で観れて良かったな、…って。
堀さんにも実はさまざまな企みや試みがあるのかもしれない。月並みな表現を使えば、それが作品に昇華されてる、ってことなのかもしれない。
まぁ、そんなのは知らないよ。ホールケーキのどこの層に何の手技が使われてるかとか、色々あるんだろうけど単に美味いから。
ザ・プレイボーイズの舞台はこんなに情緒をぐちゃぐちゃにしてくれる。そんな存在に出会ったことって、しんどく幸せですね。
これからの舞台は?
さてさて、あんなに感動的な千秋楽が終わり、家でも泣いて、夜まで泣いて、しばらく経ちました。
気づいてたけど次回の公演予定、流れてないですね…。
アンケートとかに散々「次も楽しみです」って書いたけど、でも実はあれがラストだったという可能性も?
それもそれで良い、というか、望んではないけど納得はします。ふんわり終わって、ずっと何年もしてから、ああ、あれが最後だったんだねって気づくパターンもまた良い。
カーテンコールで堀さんが過去の苦労エピを披露してたけど、やっぱり舞台に携わる方々は心血注いで作品を作っているんだろうし。TikTok動画みたいにハイ次!どんどん次!ってわけには、いきませんよね。
推しよ、幸せに!
舞台を観てこちらが幸せになったのと同じくらい、舞台を作る方々にも幸せになって欲しい。幸せになってくれなきゃ…あの感動は、あの楽しさ喜びは何だったの!?って話になっちゃうじゃないですか。
幸せに幸せに幸せになって、ぜんぶがホンモノの感情であったことを証明してほしい
…って願ってしまいます。
そうそう、妹と開演前にこんな会話。
私 「あのね、演劇関係者は恋の出会いも素敵であってほしいの。スタバで脚本書いてたらたまたま店員さんと仲良くなる…みたいな!」
妹 「いや現実は、居酒屋の客と店員くらいのもんじゃない(笑)」
どっちでもいい!真実は知りたくない!とにかく愛する人と幸せになってくれ!!
と、いうわけで。推しの幸せを願うという、ファンのテンプレ行動に着地してこの観劇日記をしめくくります。
私の恋は、愛は、この劇団でした。
おわりに
ここまで読んでくださりありがとうございます。推しとか言いつつリスペクト足りなくない?というツッコミもアリアリです。(忖度ゼロでファン、ということを表したらこうなった!)
今後の観劇ライフはというと、ザ・プレイボーイズの新作があれば観るし、なければ死ぬまでに劇団四季と宝塚を観ます。
ということで、一つの作品を通じた世界線でつながることができて、嬉しく思います。
読んでくださったあなたにも、感情オンオンオン!!な、出来事がありますように。