毎月同じ日に、いつものあなたに会いに行く〜雑誌の安心感〜
本屋PLOWでいつか取り扱いたいもの、「雑誌」。
わたしは、ぼーっとしたいときに雑誌を読む。逆にちょっと生活に変化が欲しいときにも雑誌を読む。
雑誌が売れないという時代だけど、もしかしたら本以上に雑誌への愛着が強いのかもしれない。
ということで、今日は雑誌の魅力をざっくばらんにお話したい。
「全部読まなくてもいい」保障
本は読み切らないといけないわけじゃない。飽きたら途中でやめてもいい。
わかってはいるが、実際のところ、どうせなら最初から順を追って読みたくなってしまう。読破したくなる。
けれど、雑誌には、「全部読まないといけない」というプレッシャーがない。
「全部読まなくていい」が保障されている、と言ったらいいのだろうか。
好きなところから読んでいい。本と違って、筆者が複数で、かつ筆者自身の存在は影(あえて出す雑誌もあるけどね)。
数ページの特集がたくさんまとまって一冊になっているから、小説でいえばアンソロジー短編集のようなもの。
飽きたら読むのをやめるハードルも低い。
気軽だ。その気軽さは単行本にはないもので、ときどきとても救われる。
紙である価値
ネットで情報収集ができるとはいえ、写真を大きいサイズで見られるという点ではまだまだ雑誌が強いと思っている。よーくディテールを確認したいしね。
過去のトレンドやカルチャーを探るにも、やはり雑誌をチェックしたい。
単行本やネットより「生っぽい」情報が手に入ると感じている。時代の空気感がダイレクトに伝わってくる。「スナップされたこの子は何を考えてるんだろう?」みたいに、好奇心をかきたてられるのがたまらない。
入門の入門的役割
新しい分野に触れたいときも雑誌は便利。
専門的な本をとるほどではない、でも少しかじっておきたい、と専門雑誌を手に取ることも多い。
「専門家の質の高い知識をコンパクトにまとめている」新書が入口だとしたら、さらに手前にある門が雑誌だと思う。
五感で感じる世界観
紙の薄さや紙のツヤ、触り心地、言葉のチョイス、紙の香り。五感で雑誌の世界観がなんとなくわかる。
複数の雑誌で違いを比べると、それぞれキャラが立っていて、なかなかおもしろい。
たとえば、「JJ」や「CanCam」のような雑誌は、ツヤがあって薄い紙で、でも雑誌自体は厚く重みがある。
普段読むことはないけど、あれもこれも欲しい欲望がぎゅっと濃縮されてる気がして、その重みが(物理的にも情報量的にも)好ましい。
一方で、ざらつく手触りと少し厚めの紙が多い「天然生活」「暮しの手帖」「うかたま」などは、紙の質感を感じながらのんびり読みたくなる。クラフト、ナチュラル、そんなキーワードがよく似合う。
紙質だけでもだいぶ世界観がわかるけど、フォントやデザインに着目してもおもしろいと思う。
1人の人格としての雑誌
たぶん、1番惹きつけられている理由は「らしさ」。キャッチフレーズや特集、デザイン、端々から滲み出る「らしさ」がある。
「らしさ」は架空の人格と呼んでもいいかもしれない。雑誌には、複数人が携わってるはずなのに、最終的には1人の人格としてまとまっているものが多いと思う。
マガジンハウス出版の「POPEYE」なんかは顕著な印象だ。読んでると、だんだんシティーボーイと話している?と錯覚するくらい。
その雑誌らしさを感じると、なんだか安心するのはわたしだけだろうか。知らない人だらけの集まりの中で、ぱっと知り合いに会えて安堵する、そんな安心感。
お店で「いつもの」と頼むと「いつもの」が出てくる関係性が近いかな(なお、わたしは実際にお店で「いつもの」と頼んだことはない)。
雑誌と「安心できる関係性」
そうか、結局わたしは「安心できる関係性」を雑誌に求めてるのかもしれないな……と書いていて気づいた。
毎月、発売されるたびに、ちょっと新しくなったいつものあなたに会いに行く。少し変わったけど、でもあなたはあなただね。
そんなあなたが大好きよ。
雑誌を買うのは、恋に似ている。
雑誌は特に電子書籍派の人が多いのかな、と思うのだけど、これを機にぜひ紙媒体にも触れてほしいな。
そのうち(いつ?)PLOWにも、雑誌を置きたいです。置き始めたらまたお知らせします。
P.S. いい感じのタイトル、と考えた末に、謎のタイトルができあがりました。〜〜でくくるの、90年代ぽくて嫌いじゃない。
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