児童書の表紙が進化しすぎ! 名作の今・昔を見比べてみた
こんばんは。
一箱本屋「PLOW(プラウ)」が本との付き合い方を考えるnote、今回で4回目となりました。
ちょっと更新頻度を落として、隔週日曜日に1回のペースでお送りしています。
このくらいがちょうどいいかも。
普段、図書館で子ども向けの本を中心に扱っている私。
子ども向けの本は、表紙がおもしろいなあ、とよく眺めているのですが、ここ数年は「えー!?」っと驚いてしまうこともしばしば。
なにか異変が起きている……?
時は令和、 名作は進化していた…!
ある日、返却された本を棚に戻していると、1冊の本が目につきました。
「ちょっとこれ、誰?」
よく見ると、表紙には「あの」名作のタイトルが。
ええええ!私が知っている主人公じゃない……!!
なんと、平成、令和と時を超えた結果、名作たちは「爆イケ」な表紙に進化していたのです。
さて、私が見つけた「あの」名作のタイトルとは。
正解はこちらです。
「フランダースの犬」!
百聞は一見に如かず。
さっそく令和のネロとパトラッシュを見ていただきましょう。
どうぞ!
◆学研 「10歳までに読みたい世界名作 フランダースの犬」
ほら、きらきらしてませんか!?
ネロ(右)がさわやか。パトラッシュ(左)がものすごく利発そう。
表紙右上にある「犬と少年の、ひたむきな友情物語」のアオリ文も、この絵柄ならなんだかマッチ。
ネロは15歳の設定なので、少し幼い印象ですね。
◆KADOKAWA 角川つばさ文庫 「新訳 フランダースの犬」
あれ、こんなネロ、私知らないよ……!?
読者層に合わせているのか、角川つばさ文庫のネロは少し大人っぽい。
というわけで(?)アラサーのみなさんにおなじみのネロとパトラッシュも呼んでみたいと思います!
◆徳間書店 徳間アニメ絵本 「フランダースの犬」
じゃ〜ん。
平成初期生まれの私がイメージする、ネロとパトラッシュはこっちです。
この変化、めちゃくちゃおもしろくないですか…?
流行の絵柄だから、とか、デジタル作画だから、とかもあるんでしょうけど、表紙でこんなにイメージが変わるのか!と。
ここまで調べてみたら、他の作品も見てみたくなったので、独断と偏見でピックアップしてまとめてみました。
表紙が「爆イケ」に進化した名作3選
ここからは、旧→新の順で紹介します。
出版社は異なる場合もあるので、あくまで出版年での比較です。
(旧)2000年代→(新)2010〜2020年代のものがほとんどですが、参考までに出版年も載せておきます。
「注文の多い料理店(宮沢賢治)」
まずは、宮沢賢治の代表作。
まずは旧バージョンから見てもらいましょう。
◆講談社 青い鳥文庫 「注文の多い料理店」 (2008)
この作品特有の、ちょっと背中がぞわっとする感じが表紙にもなんとなく現れていれます。これはこれでたまらない。
では新バージョンにもご登場いただきましょう!
◆ポプラ社 ポプラキミノベル 「注文の多い料理店」 (2021)
銭湯ネコマンガ『みゃーこ湯のトタンくん』などの作品を手がけている、スケラッコさんが担当された表紙は、色使いがはっきりしていて、おしゃれな印象!
ポップな感じでかわいい、と手に取ったら、中身とのギャップでゾワゾワしそう。
「海底二万マイル(ジュール・ベルヌ)」
ディズニーシーでもおなじみの海底二万マイルですが、こちらもなかなかの進化を遂げていました。
◆福音館書店 「海底二万海里(上)」 (2005)
この作品の緊張感がそこはかとなく感じられる表紙。
ちょっと怖いんだよね。(私だけ?)
でもポストカードとかになっても違和感なさそう。
それが、新バージョンではこうなった!
◆学研 「10歳までに読みたい世界名作 海底二万マイル」(2016)
新バージョン、厳密にいうと令和に入る前に出版されているものなんですが……ネモ船長、イケメンすぎない??
世界観に恐れ慄いていた私もこれなら読めるかも。
「若草物語 (ルイザ=メイ=オルコット)」
2019年、「ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語」として映画化されたことで話題になった「若草物語」も進化を遂げていました。
◆21世紀版 少年少女世界文学館 「若草物語」 (2010)
こちらの本は2010年に出版されていますが、旧バージョンとしてご紹介。
このシリーズは1987年版があり、表紙こそリニューアルされていますが、昭和から存在するのです。(何を隠そう、平成初期生まれの私は1987年版を読んでました。笑)
1987年出版のものにはもちろん「21世紀版」とは無く、2010年の出版にあたって「21世紀版」と加えたようです。
なんだか独特のタッチとタイトルが懐かしい感じがします。
ここでは著作権の都合上ご紹介できませんでしたが、1987年版はもっとシュールです。
スプーンやフォークなどの日用品を顔に見たてた、なんとも意表をつかれる表紙。個人的には、ちょっと狂気を感じるぐらい。
気になる方はぜひ調べてみてください。
◆KADOKAWA 「100年後も読まれる名作 若草物語」 (2018)
えー!!!みんなかわいい!誰!
でも持っているアイテムで、キャラクターそれぞれの個性もちゃんと表現されてる(誰目線)。
ちなみ出版社ごとに比べてみると、ギャップがありすぎておもしろいです。表紙買いしちゃうやつ。
◆講談社 「若草物語 Ⅰ&Ⅱ」 (2019)
講談社のものは、ゆるふわなイラストがかわいい。
左下の猫の表情で脱力する〜〜。
やっぱり4人といえば、このアイテムなんだな。
※表紙画像はすべて版権ドットコムより
子ども向けの本を大人が読んでもいいんだよ
こうやって表紙が変わっていくのは、やはり親しみやすさを出すためなのか。どうやって読んでもらおうか、日々、出版社の方々も考えているんでしょうね。
まあ、実を言うと、表紙や挿絵ってイメージが強く残るから、「子どもたちの想像力が育ちにくいんじゃないの?」という懸念も、ときどき聞かれます。
もちろん、その言葉にも一理あると思うのですが。
みなさん、だいたい本屋さんでは店員さんに相談はせず、自分で本を選ぶと思うんですよね。
すると、表紙が重要だ、ってのもわかるんだよね。
実際のところ、大人が見ても「この表紙と名作のコラボレーション、すてきすぎない?」と思って手に取っちゃう。
ふふ、出版社の策略(言い方が悪いにもほどがある)にまんまとハマっている大人がここにいます。笑
でも、昔からの表紙も味わいがあって私は好きなので、昔からのものも残して欲しい、というのも本音です。今後、どうなっていくんだろう…?
子ども向けの本、と聞くと、「大人はちょっと手にとりにくいかな」なんて思っちゃうかもしれませんが、大人にとっても、文字が大きい!読みやすい!わかりやすい!そんな利点も。
便宜上、小学校高学年〜中学生向けに振り分けられていても、大人が読んでおもしろい本もたくさんありますし、ぜひ名作の進化を楽しんでみてください!
PLOWでも、私が個人的に宮沢賢治好きなので、表紙に惹かれて数冊入荷してますよ。
おまけ:私が激推ししたい表紙コラボ
ちなみに、今私が激推ししたい児童本表紙も載せておきますね。
個人的にこれは絶妙なコラボ!とうなってしまった、こちら。
この見下す目、なんか知ってる。後ろの怪しい奴ら、どっかで見たことある!? この表紙を手がけたのは、なんと「BLEACH」「BURN THE WITCH」の久保帯人先生!
平城京に本当にこんな奴らがいたかはさておき、なんでこんなにマッチしているの……? どうなってんの?
後ろの方たちが何者なのか、ピンと来ていないので、有識者求む!
お知らせ
BOOK LOVER’S HOLIDAY@BONUS TRACK 開催
5/28(土),29(日)に下北沢BONUS TRACKにて、「BOOK LOVER’S HOLIDAY」が開催されます!
一箱本屋を出店させていただいているBOOK SHOP TRAVELERさんも出店するとのことで、1冊選書をさせていただきました!
当日は、市北線路祭も開催されます!
下北沢の長い長い再開発も、ようやく一段落といったところでしょうか。
当日は予定が入ってしまっているのですが、通りすがりにちらっと寄ってみようかと思います。
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