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貧血の流れ:鉄の貯蔵と流通
アレルギーとたたかう理学療法士
及川文宏 より
貧血を知る上で、“鉄”について、知っておく必要がありますね。
貧血は、血液が薄くなり赤血球数やメモグロビン濃度が正常範囲から外れて減少した状態を表します。
この赤血球数やヘモグロビン濃度を正常範囲に維持するために必要不可欠であるものが “鉄" ですね。
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貧血の定義や生理学については以前のブログに記載していますので、気になる方は以下の記事より。
自分の体に鉄が十分にあるかどうかを大まかに知るには、「ヘモグロビン」と「フェリチン」の2つの値を見る必要があります。(※正確に鉄の状態を確認するには、複数の項目を調べる必要があります。)
✅「ヘモグロビン」
すぐに機能することのできる鉄:『機能鉄』を示します。
例えると持ち歩いている現金のこと
✅「フェリチン」
たくさんの量が必要になった時のために貯めておく鉄:『貯蔵鉄』を示します。
例えると必要時のためにお金を銀行に預けていること
“鉄”の貯蔵と流通 ①
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このフェリチンとヘモグロビンの量を測定することで、大まかな鉄の状態を把握することができます。
“鉄”の貯蔵と流通②
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・両方とも少ないはっきりとした貧血
・貯蔵鉄(フェリチン)が少ない状態(隠れ貧血)
・フェリチンもヘモグロビンも減少傾向の状態(潜在的な貧血)
など、鉄の状態、そして貧血の状態を知ることができます。
この他にも、血清鉄、トランスフェリチン、トランスフェリチン飽和度、網状赤血球の値などを調べることで、より詳しい状態を知ることができます。
・血清鉄:血液を流れている鉄
・鉄結合能(総鉄結合能、不飽和鉄結合能):鉄を運ぶトラック
・フェリチン:銀行に貯めてある鉄分
例えば、
①鉄欠乏状態の時は、血清鉄低下、鉄結合能上昇、フェリチン低下となります。
銀行の鉄分も空になり、運ぶ鉄もなくなり、空のトラックだけ増えた状態となります。
②赤血球産生が低下した時 or 赤血球輸血を繰り返した時は、鉄過剰の病態を示し、フェリチンが高値となります。
赤血球産生に影響するものとして、食事から摂取されるものだと、鉄とビタミン(ビタミンB12と葉酸)があります。ヘモグロビンが作られるには、鉄が必須です。ビタミンB12と葉酸は、 DNA合成に必要で、細胞増殖に関わります。この2つは、「造血のビタミン」と言われています。
【鉄は厳密にコントロールされている】
鉄は、酸素運搬だけでなく、細胞の分裂や呼吸などに必須の金属元素です。しかし、鉄過剰状態に陥ると強い毒性を発揮します。そこで、体の中の鉄量が一定になるように厳密に制御されています。体内に3~4gの鉄があり、多くは赤血球の中に、 一部は組織鉄として存在しています。古くなった赤血球が壊されることでできた鉄は、新しい赤血球を造る材料として再利用されます。1日あたり1mgの鉄が小腸から吸収され、ほぼ同量の鉄が粘膜や皮膚の剥離によって失われます。通常、食事の中には約10 ~ 20mgの鉄が含まれ、そのうち5 ~ 10%が吸収されます。体内における鉄の動向を制御する分子が肝臓から分泌されるヘプシジンです。
◆ 鉄が過剰にある時(感染症時も同様)◆
肝臓からヘプシジンが分泌される
↓↓↓
腸管からの鉄吸収が低下する
古くなった赤血球を処理したマクロファージからの鉄排出が低下
↓↓↓
血液中の鉄が減少し、鉄利用が抑えられる
逆に
◆鉄欠乏時◆
ヘプシジンの分泌が低下
↓↓↓
腸管からの鉄吸収は増加
【鉄欠乏の原因】
・偏食やダイエットによる鉄摂取不足
・胃切除などによる鉄吸収障害
・発育・妊娠・授乳・過激なスポー ツなどの鉄需要増大
・過多月経・消化管出血などの鉄排泄増大 など
一般に、1回の月経で約20mg、 妊娠で約1000mgの鉄が失われます。月経のある女性は、男性の2倍の鉄が必要であり、高率に鉄欠乏状態にあります。
どんな原因で、鉄が不足してしまっているかをしっかりと把握することが大事ですね!
ただの貧血と甘くみることなく、まずは、しっかりと自分の体を調べて、その原因に応じた対策をとっていくことが求められますね。
今回は、貧血、そして ”鉄” についてお伝えいたしました。
貧血についての他の記事も気になるものがあったら、ぜひご覧ください。
最後までお読みいただきありがとうございます🍀
アレルギーとたたかう理学療法士
及川文宏より
日本アレルギーリハビリテーション協会
アレルコア
福のしま研究会
YouTube(アレリハちゃんねる)とnoteでは、アレルギー疾患や自律神経に対する理学療法についてお伝えしています。
アレルギーや自律神経に対するリハビリテーションの講習会情報につきましては、以下のHPをご覧ください。
無料のLINEチャットでは、自律神経についての情報発信をしています。
LINEオープンチャット「自律神経の知識箱🎁」
【今後の研修会予定】
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『アレルギー疾患と理学療法』
✅ アーカイブ配信あり
実際の患者さんの評価介入の様子も含めた講義内容の動画を10日間限定(10月10日~10月20日)で公開します。
講師 一般社団法人日本アレルギーリハビリテーション協会
理学療法士 及川文宏
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『子供のケガと運動発達』
〜小児科看護師と理学療法士が運動発達から考える〜
日時 10月14日(土) 16:00〜17:00
会場 zoom(オンラインのみ)
※アーカイブ動画視聴:10月16日〜10月31日まで配信
講師 小児科看護師 合津 裕子 氏
理学療法士 及川文宏 氏
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主催:山形県理学療法士会
『自律神経に対する評価と介入』〜実技編〜
日時 11月11日(土) 10:00〜15:30
※対面のみ(アーカイブ無し)
会場 山形県立保健医療大学
講師 及川文宏
内容 人々の身体は自律神経が大きく関与しており、女性の身体のみならず様々な患者様に対して、その評価と介入が重要となります。昨年度、及川文宏先生を講師に「自律神経に対する評価・介入」と題して、オンライン研修会を開催しました。好評につき今年度は実技編を企画し、実際に対面形式で実技を通し、臨床で活かせるような知識と技術を学べる研修会です。
申込
・セミナー番号 115507
・講義番号 242057
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自律神経セラピストBasicコース
【アーカイブ配信全9講座】
全9回講座(90分 × 9回)
①-1「概論:自律神経の解剖生理学」
①-2「自律神経を変化させる要因」
①-3「ストレスと自律神経」
動画公開期間:2023年11月23日〜2024年 1月8日
②-1「血流(血管)と自律神経」
②-2「内臓と自律神経」
②-3「睡眠と自律神経」
動画公開期間:2024年1月17日〜2024年 3月3日
③-1「神経・筋膜の機能解剖」
③-2「排便の運動学」
③-3「便秘の原因」
動画公開期間:2024年3月13日〜2024年4月28日
※自律神経セラピストBasicコースの概要や講座の内容につきましては、こちらからご確認ください。
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