顔の湿疹と首の血流の関係性
アレルギーとたたかう理学療法士
及川文宏 より
患者さんの身体の状態と顔の湿疹の関係性において、頚部の血流というのはとても大きな要因の一つだと私も日々、臨床で感じています。
顔の肌の状態に何らかの問題がある方は、頚椎・頚部の筋緊張・頚部の血流(特に静脈)などの評価が必要不可欠です!
以下、山本先生の文章を載せさせていただきます。
顔の湿疹の原因は?
前回、頭の脂漏(しろう)性皮膚炎、頭の湿疹は、首の後ろがつぶれているのが原因と解説しました。今回は、患者さんの悩みの種になりやすい、顔の脂漏性皮膚炎や湿疹について考えていきましょう。
脂漏性皮膚炎は頭皮だけでなく、顔にも生じます。顔の脂漏性皮膚炎がひどい人や顔の湿疹を繰り返す人は、「首の谷折り線」が首の前にあります。首の前のシワが異常に目立つ人やあご下から首との境目にざらつきがある人は、この「首の前の谷折り線タイプ」であるといえます。
ちなみにこの首の前の谷折り線タイプ、スマートフォンやタブレット端末が普及してから、増加傾向にあるようです。電車でスマートフォンなどの画面を見ている人々の姿勢を観察してみると、画面を胸の下のほうに置いている人と、顔の高さ近くまで持ち上げている人の2種類がいます。首の前の谷折り線ができてしまうのは、視線を下に向けすぎている前者のタイプです。顎が胸にくっついてしまうほど、首の前に隙間がなくなっているのですね。首をそれほど深く折り曲げているわけですから、その部分がうっ血しても不思議ではありません。
まるで首を絞められたかのように深いシワ。年齢によるものだと思うかもしれませんが、幼児でも顔の湿疹がひどい場合は、深いシワが首の前にあるということがよくあります。幼児が親より深いシワ……となると、さすがに年齢のせいとは言えないですよね。
前回、解説しましたが、首だけをぐっと前に曲げて顎を胸につけるように下を向くことは、首の本来のカーブ(前にゆるやかに凸)と逆で、非常に身体に負担がかかる姿勢です。首の筋肉は正常の位置からずれることにより硬くなり、首の血管をつぶしてしまいます。
血液は心臓から送り出され、静脈を通って心臓へ戻ってきます。四肢の静脈は逆流を防ぐために、弁が発達していますが、頭部の静脈には弁がありません。これは頭は心臓より上にあり、重力に従って逆流することなく心臓へ血液が戻りやすいからだと考えられます。しかし「谷折り線=深いシワ」として認められるほどに、ぐっと無理に首を曲げてしまうと、血液が心臓に向かってスムーズに戻れなくなり、溜まってしまうのですね。
顔の脂漏性皮膚炎も、頭の脂漏性皮膚炎と同様に、症状がひどい場合は、お腹の谷折り線がしっかりとあります。お腹が潰され、腸管でのビタミンB2、B6産生が不足して、皮膚がオイリーになるのは、顔も頭も同じ仕組みなのです。
うっ血があると皮膚炎になりやすい!?
さて前回から、首の前や後ろがぐっと押さえつけられるために「うっ血(=血が溜まる)」が起こると、皮膚がカサカサしたり、湿疹ができたりすると解説してきました。
この「うっ血があると皮膚炎になりやすい」という現象は、実は皮膚科の教科書にも、ある有名な病名でしっかりと記載されています。
「鬱滞性皮膚炎(うったいせいひふえん)」。皮膚科医でなくても医学部では必ず習う、どんな医師も知っている有名な病名です。「下肢静脈瘤や静脈血流の鬱滞を基盤にして、下腿に湿疹や色素沈着を形成するもの」と、教科書では説明されています。
体内の血液は重力に従って、体の下のほうに溜まりやすい状況にあります。だから、夕方になると足がむくみやすくなるのですよね。正常であれば、下肢静脈に溜まった血液も下肢の筋肉を動かすことによって、筋肉のポンプの作用で心臓に戻し、下肢静脈に血液が溜まりすぎる状態にはなりません。しかし、立ち仕事(特に動かず立ったまま)が非常に長いなどの条件により、下肢に溜まった血液を心臓に戻す力が弱まり、下肢に湿疹ができるというわけです。
鬱滞性皮膚炎は下肢に限定された病名です。しかしこの病気の本態は「血液が溜まって、その部位にとどまっていると、湿疹になりやすい」ということになりますね。下肢と首で部位は違えども、これは「首でうっ血があると顔や頭の湿疹になりやすい」ということと同じですね!
血液は心臓から送り出され、きちんと心臓に戻ってくるからこそ、皮膚や臓器は健康な状態で保たれるようにできています。それなのに、きちんと戻るべきところに戻らず、皮膚で溜まったままになっていたら、皮膚が健康でなくなり、カサカサしたり、湿疹になったりしてしまう。何だか、当たり前のことに思えてきませんか?
湿疹は赤いのですが、この「赤」が何の色かといえば、血の色なんですね。湿疹は「血液が溜まっているから赤く見える」のです。実際、皮膚の病理組織学では、「紅斑(=皮膚の潮紅)」は「毛細血管拡張」であると教科書にも書かれています。スムーズに血液が流れずに溜まってしまうと、「血液を入れている毛細血管が広がる=毛細血管拡張」となるわけです。
湿疹と言えば、赤くてカサカサしているもの。そう誰もが知っているこの現象を「なぜ赤い?」「なぜカサカサする?」と掘り下げて考えることで、湿疹を根本的に治療するヒントが得られるのです。
顔や頭の湿疹がひどい人は、歩き方に要注意!
前回からここまでで、顔や頭の脂漏性皮膚炎、繰り返す湿疹では、首の位置に問題があるということを解説してきました。下を向きすぎていたり、首の後ろがつぶれていたり、どちらの場合も問題が生じます。
では、顔や頭の湿疹は、首の位置や姿勢だけを改善すれば完全に治るのでしょうか?
顔や頭の湿疹が非常にひどいケース(特に真っ赤になるほどの症状の人)では、「足先が冷える」と訴える人が非常に多いです。アトピー性皮膚炎で、顔の症状はとてもひどいのに、下半身はほとんど湿疹がない、というケースも同様です。
実はこれ、更年期の女性の「のぼせ冷え」と同じような症状で、「手足が冷えるのに、顔がほてる」状態なのです。
このような人たちに共通するのは、「歩き方に問題がある」ということです。正しい歩き方をしていないため、下半身に十分量の血液が回らず、上半身とくに顔にばかり血液が溜まって、顔が真っ赤になったり、顔が火照ってしまうのですね(歩き方に関しては連載2回目参照)。
顔や頭の脂漏性皮膚炎や慢性湿疹に悩んでいたら、是非、首の位置だけでなく、歩き方にも注意してみてください。
赤ちゃんの脂漏性皮膚炎も首の位置の問題!?
ここまでは大人の脂漏性皮膚炎についてお話してきました。赤ちゃんの脂漏性皮膚炎と大人の脂漏性皮膚炎では、臨床経過も違いますし、赤ちゃんでは生理的に皮脂分泌が多いというベースがあり、全く違うもののように思われがちです。
しかし、ひどい脂漏性皮膚炎の赤ちゃんをよく観察してみると、首が詰まっているということがわかります。もちろん、赤ちゃんは大人に比べ首が短く、埋もれがちです。
上記2枚の写真は別の赤ちゃんです。どちらの場合も、これくらい首が埋もれてしまうということは、首を絞められているのとほとんど変わらない状態だと言っても過言ではないと思います。
だから、こんなにも顔が真っ赤になってしまうのです。このような場合は、首が埋もれるのを軽減してあげる体操をしばらく続け、首が埋もれないような抱っこや授乳の仕方などをすることによって、首の周りに隙間ができるようになり、湿疹ができなくなります。
別物と思われがちな赤ちゃんの脂漏性皮膚炎と大人の脂漏性皮膚炎。身体の大きさや身体の特徴が年齢で違えども、背骨があるという基本的身体構造は同じですから、同じような原因で症状が出ていることも、当然かもしれませんね。
湿疹が片側だけにできるのはなぜ?
ところで、湿疹がいつも身体の右側だけにできるとか、いつも左側だけにできるという経験はないでしょうか? たいてい湿疹は左右両方にできることが多いのですが、片方ばかりにできてしまうことがあります。なぜでしょう?
ヒントを示す写真がここにあります。
この赤ちゃんは、顔の右半分ばかりに湿疹ができるとのことで受診しました。しばらく赤ちゃんの動きを見ていると、首をぐっと右真横に(真正面から右にほぼ90度)向けました。そんなにも真横を向けるなんて柔らかいなぁと思うかもしれません。
ところがこの赤ちゃん、左方向を向こうとすると、右ほどしっかり真横を向かず、真正面から左に60度程度しか回りませんでした。つまりこの赤ちゃんは、首がいつも右下側にねじれているため、左側にはあまり回らなかったのです(これを証明するかのように、右後頭部がつぶされたような頭の形になっていました)。
首がいつも右下を向いているということは、首の右側を通る血管を潰してしまうということですね。だから、右半分ばかりうっ血しやすくなって、顔の右側ばかりに湿疹ができていたのです。
「繰り返す湿疹は、なぜAという部位にばかりできるのか?」。
これには、アトピー性皮膚炎であっても、脂漏性皮膚炎であっても、必ず解剖学的な原因が隠されているものなのです。
上記の項目について詳しくは、下記にリンクに記載されておりますので、ご覧ください🍀
日本アレルギーリハビリテーション協会オフィシャルブログ
【アトピー発生機序理論】
(1)冬のカサカサ肌・かゆみ肌は悪い姿勢が原因だった!?
(2)その歩き方で大丈夫? 脛・踵が荒れる原因とは
(3)腹筋を鍛えるとアトピーが治る!?
(4)フケじゃなかった!脱毛にもつながる脂漏性皮膚炎のナゾ
(5)スマホの普及で顔の湿疹が増えた?
(6)“自然派ハンドクリーム”にも落とし穴!? 「手湿疹」の原因とは
【著者】
山本綾子(やまもと あやこ)
山本ファミリア皮膚科 駒沢公園 皮膚科専門医
最後までお読みいただきありがとうございました。
アレルギーとたたかう理学療法士
及川文宏より
日本アレルギーリハビリテーション協会
アレルコア
福のしま研究会
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アレルギーや自律神経に対するリハビリテーションの講習会情報につきましては、以下のHPをご覧ください。
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【今後の研修会予定】
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『自律神経を整えるライフスタイルの実践』
日時 9月8日(日) 10:00〜16:30
(アーカイブ配信:9月11日〜9月30日まで)
会場 神奈川県
各タイトル・講師
『自律神経を整えるために必要な身体の使い方』
理学療法士 及川 文宏
『トレーニング種目から組み立てる自律神経アプローチ』
理学療法士 石井 りえ
『自律神経と体内水と入浴』
理学療法士 後藤 和樹
『自律神経を整えるヨガ的生活』
作業療法士 高橋 志帆
『山登り理学療法士が伝える、歩行と自律神経』
理学療法士 寺島 佑
『自律神経を整えるための睡眠の知識』
理学療法士 本塚 貴裕
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※アーカイブ動画配信:8月21日~9月15日
講師 理学療法士 及川文宏
一般社団法人日本アレルギーリハビリテーション協会
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自律神経セラピストBasicコース(第9期)
【オンライン座学 全9講座】
全9回講座(90分 × 9回)
①-1「概論:自律神経の解剖生理学」
①-2「自律神経を変化させる要因」
①-3「ストレスと自律神経」
②-1「血流(血管)と自律神経」
②-2「内臓と自律神経」
②-3「睡眠と自律神経」
③-1「神経・筋膜の機能解剖」
③-2「排便の運動学」
③-3「便秘の原因」
※自律神経セラピストBasicコースの概要や講座の内容につきましては、こちらからご確認ください。
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自律神経セラピストBasicコース実技研修 in 東京(第9期)
申込受付中:定員になり次第受付終了
<日時> 場所:東京都内
①-4:11月16・17日(土・日)
『脊椎・胸郭・骨盤の評価と介入』
②-4 1月18・19日(土・日)
『血管・内臓の評価と介入』
③-4 3月15・16日(土・日)
『神経・筋・筋膜の評価と介入』
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