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「海と山のオムレツ」!!!、カルミネ・アバーテ

 ・・・やられた!と思った。このタイトルはニクすぎる・・・。(あ、卵だけど)
 タイトルを聞くだけでおいしそう、おまけに見るだけでよだれの出そうなカバー・・・。
イタリアの、カラブリア州の中のアルバレシュ、アルバニア・コミュニティで生まれ育ち、イタリア語で小説を書くかルミネ・アバーテ氏の作品は、これまで日本語に翻訳されている4冊いずれも、夢中で読んだ。戸籍上は100%イタリア人、だが、500年も前に祖国を追われ海路この地にたどり着き、脈々と生を繋いできたアルバレシュの物語は、なんというのだろう、複雑な歴史や心の機微を繊細に描きつつも、どれもジリジリと太陽の照りつける酷暑のカラブリアにいまもなお熱くほとばしる血の匂いの濃い、骨太で重厚なストーリーという印象を受けた。
 そのアバーテ氏の最新刊が「海と山のオムレツ」!???すでにさまざまな文学賞も得ている作者の息抜き的な、ちょっと軽めな食にまつわるエッセイだろうか・・・???

 気になる「海と山のオムレツ」は、すぐに登場した。小さな少年の心を虜にするお祖母ちゃんのオムレツ。シンプルだけど、カラブリアとアルバレシュの香りたっぷりの、具だくさんのオムレツ。パンにはさんで、お祖母ちゃんと海辺へ・・・。う〜ん、かぶりつきたいっ!!!

 原題は、「婚礼の宴とそのほかの味覚(Il banchetto di nozze e altri sapori)」。「海と山のオムレツ」を皮切り、いや前菜に、第一の皿(パスタ類)、第二の皿(メイン)、デザート、とご馳走、いや短編が並ぶ。まるでフルコースの食事のように、カルミネ・アバーテという人の幼少期から青年にいたるまでの様子が、その時々の「味覚」とともにつまびらかにされる。どのお料理もおいしそうで、どのエピソードも味わい深く、食い入るように読んだ。
 そう、「味」もまた、重要な記憶の1つ。彼のあの作品たちのバックグラウンドには、郷里の、そして行く先々で出会った強烈で忘れ難き「味」があった。この本はだから、少なくとも二重に味わえる。まず単純に、「味」をテーマにした小説として。第2に、カルミネ・アバーテ氏の(一風変わった)自叙伝として。そして、このオムレツを自分でも見よう見まねで作ってみたりして。

 実は、カルミネ氏は先日、イタリア文化会館で開催されたトークイベント「食とアイデンティティ」にオンラインで登壇した。この本についてのご本人裏話のほか、一部朗読もある。作家の楊逸さんとともに、イベントのテーマでもある「食」から始まり、後半は表現する言語についてのお話もあり大変興味深かった。
https://www.youtube.com/watch?v=tpO7p0zDAJY&t=636s

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海と山のオムレツ
カルミネ・アバーテ
関口 英子 訳
新潮社
https://www.shinchosha.co.jp/book/590168/

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Fumie M. 11.23.2020

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