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私のこと、一生覚えていてね。


あらすじ

 大学4回生の僕は、就職活動の中で自分の強みを見つけられず悩んでいた。現実逃避として始めたマッチングアプリで出会った彼女は、美しくも過去に苦しみを抱える女性だった。彼女は元ホストの暴力的な彼氏から逃れ、依存性の強い薬に頼って生きていた。彼女を助けたいと奔走する中で、彼女の依存と向き合い続けた僕。しかし、ある日限界を感じ、鴨川の夕暮れで彼女との別れを決意する。


 思い出の曲が流れてきたらその当時聞いてた時の記憶が蘇ったことはありますか?


たまたまスマホのアプリを整理してたら出てきたアマゾンミュージックを開いてみたら、昔聴いてた「憂、燦々」っていう曲が出てきて。
当時付き合ってたや彼女のこと思い出したので、思うままに書いていきたいと思います。よかったらお付き合いください。

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当時、
自分が大学4回生の時で就職活動真っ只中。
就職活動はかなり難航していた。

みんなも昔経験したかもしれない。
就活でよくする「自己分析」。
そこで自分の強みを見つけなさいって。
でも、いくら探しても探しても、他の人より優れてる強みなんて
見つからなかった。


子供の頃はたくさんの人を救うヒーローになる!とか
世界的なバンドマンになる!とか漠然と思っていて。

「俺はもしかしたら。」

みたいな希望があったけど、高校、大学と進学するにつれて、
「あれ?俺ってなんか普通じゃ・・・?」
ってうっすら気づき始める。

でもそのまま、見ないふりをしてた。
だけど、就活っていうやつはその現実を嫌でも突きつけてくる。
不合格メールの通知はまるで、自分の存在を否定されたような気持ちになる。


で、現実逃避した結果マッチングアプリを始めた。
今回出てくるその彼女は、そのアプリで出会った子。


アプリでその例の元カノを見つけて。
お互い気が合ってとんとん拍子で会うことになった。


ヒグラシが鳴き声始めた夏頃。
汗ダラダラで大阪駅の近くのヘップ前に向かう。
「黒い服着てます。」っていう通知が届く。
ふと入り口に目をやると
ただ一人だけ、汗ひとつかかず黒いドレスを着こなす綺麗な女性が
すっと立っていた。
一瞬そこだけ世界が止まっているように見えた。

ちょっと綺麗すぎて、怖い怖い。って声かけようか迷ったほどだった。

緊張しながら「こ、こんにちわ」っと挨拶を交わす。


でそのまま近くのカフェに。

二人はたまたまお互い邦ロックが好きなことがわかる。
そこから急に昔からの友達みたいに盛り上がって。


色々なことを聞いてわかったことは、
そのこは両親が小学校の時離婚して、
片親になって苦労して今まで生きてきたこと。
その中でも女手1つで大切に育ててきてくれた母親のことが大好きこと。
感謝の気持ちを大切にしていること。


彼氏は元ホストで私と会ってホストを卒業して円満だったけど
振られたこと。で、ちょうど一週間前に彼氏と別れて落ち込んでいたんだけどそれをみかねた友達がマッチングアプリをお勧めしてくれたこと。


純粋にすごく素敵な子だと思った。

邦楽が好きだから、一緒に歌いに行こうという話になりカラオケに行った。


カラオケって暗いし距離近いからなんかいい感じの雰囲気になったんやけど、

急に、彼女が「実は隠してることがある。」と言い始めた。
めちゃくちゃ気になる僕。

「すみません。嘘ついてた。実は、その元カレ結婚してたの。」

??マークが浮かぶ。

「ホストあがって(卒業すること)同棲してる時、毎日お金せびられてた。断ったり喧嘩したりするとすぐ殴ってきて、好きだったんだけど、めっちゃ怖かった。けど、なぜか離れられんくて。」

元彼ぜったり許さん。

「そのあと彼氏が青森の実家に帰ることになって遠距離恋愛になったんです。それでも毎月何十万も振り込んであげてました。」

理解が追いつかない。

「1年くらいたって、急に彼から電話が来たとおもたら、女の人が出てきて、お金振り込むのをやめてほしいって。理由を聞いたら、元カレ、実はその人と結婚してたんです。それが一週間前の話です。」

つまり、まとめると、その元カレ氏は実は結婚してて、そのまま大阪でそのことであって、付き合ったまま、地元に帰ったみたいなのね。


マッチ売りの少女レベルに不幸な女の子。
ドラマかよ。



僕は昔から、危なっかしい人がいたら放っておけない。

正直この時、だいぶ気持ちが惹かれてた。


ちょっと雰囲気も暗くなったから歌う流れに。


その子が最初に選曲したのがクリープハイプの憂、燦々だった。

DV男とその彼女の物語がテーマの曲。



歌いながら泣いていた。歌う姿がなんか儚くも美しい。

その時、

もうバキュンとか軽い感じじゃない。

心臓にズブブブブって感じのめちゃくちゃぶっとくて
重い槍を無理クリと胸に突き刺さしたような感じの音がした。



でひと段落してまた話し始めたんやけど、

「わたしこんなに人に自分の話したの人生で初めて。」

「俺も、これは運命かもね笑。付き合おう。」ってなって。


てなって最終的に付き合うことになったんだよね。(早い)


何回かデートした後に彼女の家に行くことになった。

でピンク一色で女の子っぽい部屋だなーと思って部屋を眺めてたら
机の下に大量の錠剤。


ざわざわざわ。。。

「睡眠薬だよ。危ない薬とかじゃ無いよ笑」

と彼女がいう。


違和感を感じながらもその日は普通に解散。


当時、バーテンダーをしてて、その子がバーに遊びに行きたいと
言い出してバーに来ることになった。



当日、深夜1時。バーにフラット元カノが入ってくる。

へべれけによっぱらったような千鳥足で席に座る。

「え?そんな飲んだの?飲みすぎ。」

「デパス(睡眠薬の名前)とお酒飲んだらめっちゃ決まるんだー。」


※後で調べたんだけど
どうやら、デパスは依存性が強くて筋肉やゆるまって楽しい気分になる効果があり、酒と飲むとより効果が強まるらしい。

やばいなーと思ってたら、他の女のお客さんめちゃくちゃ睨んだり、ドンペリ開けるねとか言い出して。

もしかしてこの子はやばいやつかも?という疑念が湧き始める。

よくよく話を聞くと

睡眠薬に依存していて10錠とか20錠とか一気に飲んでしまう様子。



※今は睡眠薬と言ってもベルソムラなど安全なものがあるが、10年前とかは依存性強い危険な睡眠薬もいっぱいあり、眠剤と呼ばれて社会問題にもなっていた。


3か月が過ぎた。その女の子について改めてわかってきたことは

1つ目、眠剤の中毒だということ。
それを飲んだらフワフワして幸せになるらしい。ほとんど麻薬と一緒だ。

2つ目は、そんな子だけど性格はめちゃくちゃ良くて、思いやりもあるし、考え方すごく素敵な人だった。何より、笑顔がかわいい。


「いつもありがとう。」
それがその子の口癖で、

付き合った年の秋くらいだったと思う。二人で紅葉のライトアップを見に行って、その帰り道、ほろ酔いで夜道を歩いていた。

「本当にありがとうね。」

「なにが??」

「私、イヌマキに会って、人生で初めて幸せ!っておもえたんだよ。」

「それは嬉しい。でもこれって普通のことなんやで。当たり前にしていこうな。」

「ううん、当たり前にしたらだめだと思う。特別なことだから。」




今まで本当に苦労してきたんだ。

だから薬に逃げでしまった。

俺が絶対にこの子守っていかないと。

その時強く思った。



それから、1年ほど時が経ち、薬を克服するために一緒に薬を克服するためのNPO団体に一緒に行ったり、病院で一緒に相談を受けたりしていた。

いっときは順調に見えた。病院からもうらう薬も減っていっていた。
その時はそう思っていた。


二人はびっくりするくらい順調で、ゆくゆくは結婚かな・・・?とか勝手に妄想していた。笑



事件が起きた。



付き合って1年経った真夏の日。

いつも通りバーで働いていると、電話が掛かってきた。



プルルルル、、、、
出たら彼女だった。

「どうした?」

「あのねえ、、男の人がねえ、部屋の天井から立ってこっち見ててるの。」

呂律が回っていない。


実は、一月のほどの間に、こういうことが起き始めていて、その度に彼女を迎え行くと言ったことが起こり始めていた。しかし、仕事で迎えに行けないこともあった。そうなると彼女は1日中、音信不通になった。

実は僕自身、ちょっとおかしくなってしまっていてその事件の前日、
病院でノイローゼだと診断受けていた。


「おさけ飲んだんだな。くすり何錠のんだの?」

「50錠くらい、のんじゃったぁ、、、」


言葉を失った。

完全に頭がおかしくなっていた。

「でも、家に50錠も薬なかったよな?」

「海外から輸入したのー。」


絶句した。
「もう潮時かな。」

そう思った。
思ってしまった。



その次の日、京都で遊ぶ約束をしていた。
それを最後のデートにするつもりだった。


次の日、おしゃれなカフェでご飯を食べた後、

夕暮れが見える時間に鴨川に向かった。


いつも通りカップルが等間隔に並ぶ河川敷。




「今日もたのしかったなぁ。ずっと続けばいいのにね。」

とても幸せそうな顔をして君は言った。すごくニコニこしてて
昨日、薬をのんでラリっていた人とは思えない。


今からこの子を僕は見捨てるんだ。

ふと、涙が出そうになる。



「どうしたの??」
と、気づいて彼女が言う。


「なあ、俺たちもう別れよう。」
「え、、??なんでなんで?」
「ちょっともう限界。」

彼女も昨日のことがきっかけだと察したみたい。



「薬はやめるから。絶対やめるから。」
彼女は涙目になった。

「・・・・・・。」

無言を貫く僕。



「・・・・わかった。じゃあ、今日で最後だね・・・。」
「一つお願いしていい?」
と彼女は俯きながら言った。

涙がポタポタと落ちるのが見えた。



「いいよ。なんでも言って。」
そういって見えないフリをする僕。

「・・・私のこと、一生おぼえていてね。」
そう言いながら彼女はニコッと笑った。


「わかった。忘れない。約束するよ。」




「じゃあ、、、さようなら。」
彼女は、いつもなら何度もニコニコして振り返り手を振って笑っていた。


最後の別れは、一度も振り返ることは無かった。





僕の中で何かが消えて行くのを感じた。
それは、おそらくとても大切なもの。



でもその時、あえて気付かないふりをした。

正確には"今も気づかないふり"をし続けているのかもしれない。



僕は昔からたくさんの人を救うスーパーマンになりたかった。

でも、叶わないことはよくわかっていた。

だから僕はただ、君だけのスーパーマンになりたかったのかもしれない。






1人で川沿いを歩いて帰る。

ヒグラシのどこか寂しい鳴き声が、
夏の終わりを告げていたー。




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僕は、睡眠不足で目を擦りながら、
パソコン向かってnoteを書いている。




「今でも覚えてるよ。」




僕はそうつぶやいやいて、パソコンの電源を落とした。


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inukaki vlog
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