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【読書記録】 「繊細さん」の本/武田友紀

 この本を最初に読んだのは2年ぐらい前でした。当時はそこまでHSP(Highly Sensitive Person:とても敏感な人、繊細さん)という言葉は一般的ではなかった気がしますが、今はHSPと公表されている芸能人の方もいたり、雑誌やテレビで取り上げられている様子も時々見かけます。
 自分はこの本を読んで気持ちがとても楽になったので、自分にとっては読んで良かった大切な一冊です。今も気持ちがしんどくなったら時々手に取ります。
 ただ最近は「私はHSPです!」という主張のようなものを目にすると、なんとなく違和感も感じています。HSPであるというのが何かのブランドかのように一人歩きしているのではないかな…と。

エレイン・アーロン博士が行った調査により「生まれつき繊細な人」が5人に1人の割合で存在することがわかってきました。繊細さは性格や環境によるものではなく生まれ持った気質であり、生まれつき背の高い人がいるように、「生まれつき繊細な人」がいることが明らかになったのです。

武田友紀:「気がつきすぎて疲れる」が驚くほどなくなる「繊細さん」の本

 5人に1人がHSPとは、かなりの高頻度です。アーロン博士や著者の武田さんが言っているようにHSPとは何もそんなに特別なことではないのだと思います。私が感じる違和感は、「私はA型です!」とか「私は生まれつき背が高いです!」ということを主張する人はほとんどないのに、何かのブームかのように「私はHSPです!」と強めに主張されると無意識に「HSPだから配慮してほしい」というメッセージのようなものを感じ取ってしまうからなのかもしれません。この本は、そういう観点から書かれたものではなくて、HSPの人がストレスを出来るだけ減らし、強みを活かして楽に生きていくためのヒントを与えてくれる内容です。

 私自身もHSPの特徴に当てはまるところがとても多くあったのですが、この本を読んで一番良かったなと思うのは、「長所は短所の裏返し」という発想の転換ができたこと。今まで「辛いな」「どうして自分はこうなんだろう」というネガティブ思考に陥りがちだった部分に対しても、「こんな辛さはあるけど、そのおかげでこんな長所があるんだ」と自信を持つことができました。繊細に感じ取れる力があることで、人の気持ちや刺激に敏感になりすぎてグッタリすることもあるけれど、本や映画や音楽や絵画など様々な文化や芸術を奥深く楽しむことができる。日常の些細なことで大きな幸せを感じることができる。仕事は少し遅いけれど、細かく地道に丁寧に進めることができるなど。

 そして自分の特性について家族と話し合えたのも良かったです。
 私の夫はHSPの気質をほとんど持っていません。この本の内容を伝えても、共感できるところはほとんどなかったようで、そういう人もいるのかと逆に新鮮でした。でも、だからこそ一緒にいて安心するというか、救われる部分が多いなと思います。話を聞いてもらって、「それは自分が思い悩む必要がないことだ」と頭を整理できたり、違う解釈から自分の思考の癖を見直すことができたり。(時には共感してほしいときもありますが。)
 私は昔から石橋を叩いて渡るタイプです。行動を起こす前の情報収集はしつこいぐらいに念入りだし、本当に安全じゃないと踏み出さないし、これまでの人生は出来るだけ失敗しない方法で堅実に計画的に歩みを進めてきました。それなのに夫と結婚してから、やれ転勤だー、転職だー、もう一回転職だー、と私のキャリアプランや人生プランはどこ行った?というように、夫の都合で既に引っ越し6回目で現在に至ります。先日、そんな13年の結婚生活を振り返りながら「私が毎回一生懸命叩いて渡ろうとしている石橋を、その都度あなたがゴジラのように全部踏み潰して壊している」と話したら、その比喩があまりにもぴったりだと二人でしばらく大笑いしました。変化に弱い私は、振り回されてその都度辛い思いもしてきているのですが、今はそれを笑い飛ばせる程度に鍛えられてきてるのかなと思います。

 小6の長女も可愛いイラストのこの本に興味を持ち、「繊細さんって何?」と質問してきたので、本の内容を詳しく説明したところ、「へー、それママのことじゃん」と笑っていました。最近は小さなことを気にしてあーだこーだ考えている私の様子を見て「それ、繊細さんだから考えすぎなんじゃない?みんなそんなこと気にしないから大丈夫だよ。」なんて生意気にアドバイスをくれたりもします。
 こうやって、自分の特性を笑い飛ばしたり、それをネタに気軽に家族と話したりすることで、自分が受け入れられている感覚があり、「ああ、私は私のままでいいんだな」という気持ちになりました。

 家族も、社会も、それぞれの特性を活かしたり補い合いながら過ごしていくことが大切なんだなと感じています。


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