いつまでも心の中に【#教科書で出会った物語】
活字中毒の私は、国語の教科書が大好きだった。
春、新しい季節。
見知らぬ教室、はじめましてのお友だちに、
「怖い先生だったら、どうしよう」だとか、
「仲良くなれるかな」など、
不安は尽きない。
けれど真新しい教科書が配られると、物語を読んでいる間だけは心細さを忘れさせてくれた。
メディアパルさんが、 #教科書で出会った物語
というステキな企画を開催されている。
(他の方たちの投稿を読むのも楽しみ!)
たくさん国語の教科書を読んできたというのに、思い出されるのは不思議と小学校低学年に教わった物語ばかりだ。
ある程度年齢が上になると、自分のおこづかいで好きな本を買えたから、
自分で買った本 〉 教科書
の構図が出来上がったからかも知れない。
記憶に残っている作品というと、
中川李枝子・著『くじらぐも』
神沢利子・著『くまの子ウーフ』
レオ=レイニ・著『スイミー』
などなど。
かわいらしい挿し絵と共に広がるやさしい世界に、どれだけ不安な気持ちがなぐさめられたことだろう。
印象深いお話はたくさんあれど、一番記憶に残っているのは、
アメリカの絵本作家、アーノルド・ローベル・著『お手紙』
である。
物語は玄関先で、がまがえるくんとかえるくんが遭遇するところからはじまる。
なんと、がまくんはこれまで一度もお手紙をもらったことがないと告白するのでした。
それを聞いた、かえるくんがとった行動ははたして!?という物語。
三木卓の、とぼけた味わいの訳文も良くて、なんともユーモラスで心あたたまる作品だ。
お手紙が来ないことに拗ねる、がまくん。
「自分は孤独である!」ということを全力アピールするのである。
えー、そんなことないよう。
見守ってくれている友だち、いるじゃん、
"かまってちゃん"かよー。
と、がまくんは読者をやきもきさせて、でもなんだかんだ放っておけないキモチにさせるヤツなのだ。
そんながまくんの話をやさしく聞いて、なぐさめたり、サプライズを用意したり。
かえるくんは、なかなかのナイスガイである。
かえるくん、いいヤツだなぁ。
友だちって、いいなぁ。
作者曰く、がまくんとかえるくんは、相反する自分の心を反映した姿だそう。
ポジティブになれる自分、ネガティブな自分。
二面性を持つ自分の心って、なんかわかる気がする。
なんでこの小さな物語が、長く私の心をつかんではなさないんだろう。
がまくんの叫びが、胸にきゅっとくる。
何かに期待したり、その気持ちを裏切られたり。
大人になった今も一喜一憂の連続だ。
でもささやかに楽しいことを見つけて暮らしている。
この物語は、日常を生きるってそんな毎日の連続だということを、子どもの私にわかりやすく、押し付けがましくなく教えてくれた物語だった。
いろいろあってラスト、しあわせな気持ちになる、がまくんとかえるくん。
やなこともあるけれど、いいことだってあるよねと、希望を与えてくれるのだ。
この作品をきっかけに、クラスでは手紙を送りあうのがブームになった。その頃には「お友だち出来るかな」って不安な気持ちも私の心にはなくなっていた。
週明けから、いよいよ学校(仕事)。
やだな、なんて気持ちを、うっすら和らげてくれる作品だと思う。
書籍でも、かえるくん、がまくんコンビを楽しむことが出来る。
『ふたりはともだち』
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