500円さんぽ
人は、いつでも優しく出来るわけではない。
幾ばくかの心の余裕が必要である。
どのくらいの優しさが必要かは人によって異なるが、
心の荷物ゲージが一定を超えると
大抵の人は人に優しくできないのだ。
かく言うぼくも、ご多分に漏れない。
汚い言葉を使うことに嫌悪感を抱くぼくも、
放送禁止用語を羅列しかねなくなる。
その日、
「あ、無理。」
と言う心の声が聞こえたので、
ぼくは夜の散歩に出掛けた。
自由になるのだ。
音楽をイヤホン通して爆音で鳴らしながら
どこに行くでもなく歩く。
とは言っても、無意識に知っている道を選んでしまう。
冒険したいのに、結局レールの上に乗っている。
恥ずかしい。
そう言うところに人の生き方も出るのだろうか。
なんとなく知っている道に導かれて、TSUTAYAに辿り着いた。
サブスクやネットレンタルが普及して、客足が極端に減ったレンタルビデオ屋。
ほとんど来なくなったなあとエモい気持ちになったので入ることにした。
コロナの影響もあってか、ほとんど人が居ない。
目に止まったのは星野源のエッセイ本だった。
変態のなんちゃらみたいなタイトル。
最初の話しのタイトルは、「おっぱい」。
好感しか持たない。
読んでみると、おっぱいについて真面目にいろいろ論じてあった。
中に、
辛い時は「おっぱい揉みたい」って言えばストレス軽減するよ
と書いてあったので試してみることにした。
いや、試さなかった。
恥ずかしかったので辞めた。
中古のCDが安くで売ってあるコーナーがあった。
高校生の頃よく買ってたなあ。
今はサブスクで聴き放題なので、お世話になることがなくなったのだ。
このとき、ぼくの財布の中には500円あった。
今日は、最高に自由な使い方をしたい。
中古のCDでは、、ないか、、
ぼくはTSUTAYAを後にした。
また目的なく歩き始めた。
流す曲を自分のアルバムに変える。
いいアルバムだ。
そろそろ帰るかなあ。
目的なく歩くのはもう飽きてしまったので、
ものすごく遠回りになるが
マクドナルドに寄って帰ることにした。
家に居る人が
ポテトを食べたいって言っていたから。
まあ、しょうがない、
良い500円の使い方だろう。
少し早歩きでマクドナルドに行くと
サーバーの掃除かなんかをするため、イレギュラーで1時間早く閉まっていた。
まじかよ、である。
しょうがないので、普通にコンビニに寄って帰った。
家では、
散歩をしてぼくのゲージは下回ったので、また元に戻ることができた。
彼女も落ち着き寝静まった。
次の日、彼女は上機嫌に歌っていた。
人生とはそういうものであるらしい。