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そろそろ、管理職という制度を廃止してはどうでしょう。

管理職への疑問

私は浮世の出世栄達とはいっさい無縁な立場なのでまったく無責任な感想なのですが、それでも働いていると「管理職って本当に必要なのか」「むしろいないほうがみんなラクなんじゃ…」という疑惑がふつふつと涌いてきます。

現場の事情がわからない管理職に説明するためにえんえんと時間を取られ、しかも結局よくわかってはもらえないまま、形だけハンコをもらっているだけの「決裁」や「承認」という業務。
「管理職が存在するために存在する仕事」のために残業する現場の人々。
そこまでしても管理職のみなさんが幸せならまだいいのですが、どう見てもそうは思えず、「給料は高いかもしれないけどひとつもうらやましくはないな。自分はああなりたくない」と部下に思われている状態。

もちろん管理業務そのものは本当に必要でしょうが、「管理業務を特定個人の管理職に固定して行わせ、その人物に高い給与を支払う」制度は本当に必要なのでしょうか。

よく「管理職に女性が少ないのは問題だ!女性の割合を増やそう!」とか「女性が管理職になりたがらないのは育児との両立が難しいからだ、育児支援が充実すれば管理職志望の女性は増えるはずだ!」という声が上がりますが、そもそもそんな女性がやりたがらないようなポジション自体に問題があるのでは、とは誰も考えないようです。

そりゃ育児支援は充実するに越したことはないですが、すくなくとも私は至れり尽くせりの育児支援があってもぜんぜん管理職になりたくはないし、一方で育児との両立は困難であっても女性がやりたがる仕事はたくさんあります。

たぶん「人間はみんな管理職になりたいはず→なりたくないのは何か問題があるから→問題を解決すれば管理職になりたがる」という発想なのでしょうが、管理職になりたがるのは決して普通の人間ではありません。
人類の中でもかなり偏った層(おもにおじさんとおじいさん)の、さらに一握りの人々です。

私からしたら「おじさんとおじいさんはどうしてこんなに権力が好きな人が多いのか。何か問題があるのでは」ということのほうが気になります。

私が管理職になりたくないのは「権力で人を支配することに魅力を感じないから」です。

よく管理職への勧誘で「管理職になれば権限も増えるし、自分の裁量の範囲が広がるから仕事が楽しくなるよ」と言う人がいますが、そもそも管理職だけ仕事が楽しくて、平社員はつまらないような会社は問題あるのではないでしょうか。

私も人間なので「公の場で自分の意見を聞いてほしい」「意思決定に参加したい」「いくらかは私の意見を通してほしい」とは思います。その意味では私にも権力への欲求はあります。
ただそれは「私の意見に説得力があり、正しいと思うから」という理由で通ってほしいので「私がえらい人だから納得してないけど渋々従う」というのはひとつも嬉しくありません。

ではどうすればいいのか

提案するのは「管理職当番制」です。
たとえば庶務課の課員が12名だとすれば、12カ月のうち1カ月は全員に庶務課長当番が回ってきます。これは派遣やバイトも含め、12カ月以上勤務する人全員が平等に勤めます。新入社員も「来年の今頃は君が課長だから」となります。当番の月だけ「課長手当」が付きます。これは掃除当番や給食当番同様、誰かがやらなければいけないからやるだけなのでそれほど高額にしてはなりませんが、あまり低額だと回避しようとする人が出るので、業務量に対して納得できる額が必要です。
課長当番を経験した人の中から、また人数割りで「部長当番」が回ってきます。

この方式には以下のようなメリットがあります。

・管理業務のスリム化。当然現場の仕事と並行してこなさなければいけないので、徹底的に無駄を省き、管理職でなくてもできることは他の社員にやってもらう、という見直しが行われます。
・ジェンダー平等と世代間平等。「働かないおじさんのために安い給料でこきつかわれる若手」問題の解決です。出産育児で働けない時期がある人も、その時だけ当番をパスすればいいだけなので、育児のために出世コースから外れて一生安い賃金に甘んじなければならない、ということがなくなります。
・人材リスクの低減。現状ではうっかり問題のある人物を昇進させてしまうと、長期に渡ってその人物に高い給料を払い続け、部下は苦しみ続けることになりますが、この制度では1カ月我慢すればいいだけです。また昨日の部下は今日の上司なので、セクハラ・パワハラも起こりにくくなります。誰かが急に辞めたり休んだりしてもカバーしやすいです。

デメリットとしては毎月引き継ぎの手間がかかる、というところですが、逆に透明性が増して癒着や背任の抑止効果も期待できますし、常に別の視点が入ることで改善も期待できるとも言えます。

この方式は会社以外でも応用できそうです。

オーケストラで、楽団員全員の当番制で指揮者(これはそんなに突飛な発想でもなく、ある時代までは西洋音楽でも指揮者という職はなくて第一バイオリンがリードしたり、合唱団の一人が一歩前に出て拍子をとったりしていたようです)。
出演者とスタッフ当番制で映画監督(よくある、監督が女優にセクハラしたりができなくなりますね)。
野球部で、全部員当番制で監督(高校野球なのになんで監督だけおじさんなのか、昔から不思議でした…)。

とにかく「支配する役割を固定しない」という発想は多くの可能性を秘めていると思います。メンバーにとっても現場の視点とマネジメントの視点を行き来することで、成長する面もあるのではないでしょうか。

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