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故郷の言葉に支えられた海外生活「困ったらフリーマントルに行きなさい」


上記ポストをもう少し追記したいなと思い、noteに綴ります。



「フリーマントルってところに焼津の漁船が入るから、困ったら行ってみなさい。漁師が助けてくれる」

この言葉を聞いたのは、20年以上も前のこと。

夢と不安を抱えシドニーへ旅立つ前、親戚や友人たちがわたしに投げかけたものだった。

その言葉は漁師の力強さと優しさが詰まった、どこか頼もしいものに感じられた。たとえ知らない土地であっても、遠く離れた焼津の人々の存在がわたしを支えてくれるかもしれない、そう思うことで勇気をもらっていたのだ。

しかし、シドニーでの生活が始まると、思い描いていた異国の地での挑戦や冒険は、現実の厳しさと隣り合わせであることを痛感した。

新しい環境、新しい言葉、新しい人々――すべてが新しく、それが刺激的であると同時に、時折わたしを孤独にさせた。

そんな時、ふとまだ見ぬ街の名前が心に浮かぶ。

フリーマントル。

シドニーからフリーマントルまで飛行機で約5時間。

その距離の先に、焼津の漁師たちがいるかもしれないという考えは、どこか心を温めるものだった。

それから年月が流れ、わたしはシドニーの街にすっかり溶け込んだ。

仕事も見つけ、人との繋がりもでき、日常の中に小さな幸せを見つける術も身につけた。

それでも、時折、心が揺らぎ、ふと自分の居場所に疑問を感じる瞬間が訪れる。そんな時、いつもあの言葉が胸に蘇るのだ。

「フリーマントルってところに焼津の漁船が入るから、困ったら行ってみなさい。漁師が助けてくれる」

焼津の漁師たちはフリーマントルの港でわたしを助けてくれることはないかもしれない。

しかし、それはもう重要なことではない。大切なのは、わたしがその言葉を心の中で持ち続けてきたという事実であり、ここまで支えてくれたということだ。

故郷の力は、距離を越えて、時間を越えて、わたしに寄り添い続ける。



焼津名物「黒はんぺん」
恋しくなる故郷の味です。



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