【ショートショート】トモダチ
タツユキはお爺ちゃん子だ。
両親は離婚して、この町に住むお爺ちゃんに引き取られたと聞いている。
タツユキはぼくの唯一の友人だ。
ぼくは変人らしい。学校で仲よくしてくれるのは彼だけだ。
タツユキは将棋が下手だ。
ぼくも将棋が下手だ。下手同士なので、勝負をしているととても楽しい。
タツユキが入院した。
ぼくは毎日のようにお見舞いに行った。病室でも将棋をさした。
「おかしいよ。こんなに僕が勝つはずがない」
「どうもダメなんだ。頭がぼんやりする」
タツユキの顔色は日々、悪くなっていく。
ある日、タツユキのベッドの横に爺ちゃんとロボットが座っていた。
「どうもはじめまして。トモダチです」
とロボットは言った。
タツユキは面会謝絶になった。
葬式が行われたのは、その一ヶ月後だ。
ぼくが学校でぽつんと座っていると、トモダチが登校してきた。タツユキの席に座る。
飾ってあった花瓶と花を片づけ、教科書を取り出した。
「ひさしぶりだね、トモダチ」
「ぼくのことはタツユキと呼んで」
とロボットは言った。
ぼくはタツユキの家に行き、タツユキと将棋をさした。その姿を見て、タツユキの爺ちゃんが涙を流していた。
(了)
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