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【ショートショート】超マスク

 福引きの一等賞で超マスクが当たった。正確には超高性能マスク。
 価格が高いせいもあってもあって、まだほとんど普及していない。
 超マスクは大きい。顔のほとんどの部分を覆ってしまうので、外からは目ぐらいしか見えない。
 街に出ると、半分くらいの人がマスクをしていなかった。
「いちおう感染症は終わったことになっているからなあ」
 と私は思った。患者数がちっとも減っていないことは公然の秘密だ。
 街では罹患リスクが上がるのか、マスクがぎゅっと顔に張りついてきた。
 息ができない。
 私がよろけて壁に手を突くと、黒いTシャツを着た若い男性が、
「大丈夫ですか」
 と言いながら近づいてきた。
 ぴゅっと音がして、マスクから液体が放射された。
 男性の目を直撃。
「わあああ」
 と叫んで彼は道を転げ回った。
 よくみると、男性はマスクをしていない。
 防御機能付きなのか。申し訳ないことをしてしまった。
 超マスクをした女性が私を、
「まだ馴れていないのね」
 と言いながら、駅まで連れていってくれた。
「もう大丈夫です」
 私は小刻みに呼吸しながら、女性にお礼を述べた。
 電車がやってきた。
 三密地帯だ。
 超マスクがなにをしでかすか、かなりの不安を覚えながら、私は電車の中に乗り込んでいった。

(了)

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