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【ショートショート】神様計画

「タカシー」
「あ、おじさん」
 ぼくのおじさんはマッドサイエンティストだ。
「ちょっとペロちゃんを借りるぞ」
「え、それはちょっと」
 とぼくがもそもそ言っているうちに、おじさんは猫をケージに入れて風のように去っていった。
 ペロちゃんがうちに戻ってきたのは三日後。
「ペロちゃんになにかしたでしょ」
「ふふん」
 と笑って、おじさんは帰っていった。
 ペロちゃんは顔をぺろぺろと洗っている。
「おかえり、ペロちゃん」
「おかえり、ペロちゃん」
「えっ」
「えっ」
「どうしたのペロちゃん」
「どうしたのペロちゃん」
 オウム返しだ。
「ペロちゃんになにしたの!」
 おじさんに抗議の電話をいれると、
「うむ。ちょっと遺伝子操作をな」
 とかもぐもぐ言ってすぐに電話を切ってしまった。
 いっしょに暮らすうちに、ペロちゃんはオウム返し以上の言葉をしゃべるようになった。
 ピンポンと音がすると、玄関に飛んでいき、
「こんにちはこんにちは」
 と鳴いている。
「こんにちは。お荷物です」
「置き配にしてください」
 ちゃんと宅配便に対応している。知能が上がっているのだ。
 ある日、おじさんが様子を見にきた。
「どうだい。ペロちゃんの様子は」
「めっちゃ賢いよ。いまは古典文学を読んでる。源氏物語とか万葉集とか」
「ふふふ。予測通りだ。オウムの遺伝子も入ってるからな。あと五十年は生きるな」
「たった一ヶ月でこんなに賢くなっちゃったのに、五十年もたったらどうなるの」
「神の領域だ」
「おじさん、神様を作ろうとしているの?」
「オレの寿命はそんなに長くないから、あとはタカシに任せた」
 神様を託されてもなあ。ぼくはどうしたらいいのだろう。

(了)

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