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【ショートショート】連絡方法
私の業務は電話をかけることだ。
年々環境が厳しくなっている。
仕事で電話をかけても、出てもらえないか、ガチャ切りされる。電話番号の頭に050がついているだけで詐欺か迷惑営業だと判断されるのだ。
最近はAI応答も増えてきた。知らない番号からの電話は自動的に留守番モードに切り替わる。私はしかたなくメッセージを吹き込む。
「もしもし、エックスカード株式会社のタナカと申します。お客様が申し込みなさった分割支払いの審判の件でご連絡いたしました。お心当たりがあれば、この番号にご返事いただけますでしょうか」
返事を返してくれる人は十人にひとりもいない。誰も留守電なんて聞いていないのだ。
私は何回も同じ文言を吹き込み続ける。
虚しい。
お客様はいつまでたっても商品が届かないので苛立つ。通販会社にクレームの電話を入れ、そこでようやく審判の電話を受けなければ分割できないと知るのだ。
制度設計が間違っている。
いまの時代、もはや電話では連絡できないと知るべきだ。
ほどなくシステムの改修が行われ、私は弓道の研修を受けた。
正確に矢文を放つためだ。
朝、お客様の住所リストを確認すると、私は書面を印刷し、営業車で受け持ち地区を回る。
書面は小さく折り畳み、先端がゴムの吸盤になった矢に巻き付ける。
玄関のドアに向けて矢を放つと、ぷるるんと震えて、ドアに突き刺さる。
矢文の効果は絶大で、これを読まない人はほとんどいない。
返信率は格段に向上したが、これがデジタル時代の連絡手段として最適解といえるのだろうか?
(了)
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