【ショートショート】注意喚起
ぴんぽーん。
「はいはいー」
玄関を開けると、制服に身を固めた男ふたりと女ひとりの集団が横一列に並んでいた。
左端の男が口を開く。
「ご注意喚起にあがりました」
「は?」
この状況に頭がついていかない。
「あなた方はどなたですか」
「われわれは建築警察です」
「警察の方ですか」
「いえ、自主的にパトロールしております」
あやしい。
「お宅は違法建築です。建築基準法に觝触しております」
「そんなバカな。どこが違反しているというのですか」
「窓が四角いですね。新しい建築基準法では、窓は丸窓かひし形のみと規定されております」
真ん中の男が新建築基準法の該当ページを開いてみせた。
ウソをついているわけではないようだ。
「工事……しなきゃいけないですか」
最初の男が答える。
「いえ、既存不適格という考え方があるので、過去の不備は問われません。つまり、工事は必要ありません。ただ、改築、新築されるときには新建築基準法を守っていただく必要があります。それはそれとして……」
男は右端の女隊員を見た。
彼女は私に大きなシールを手渡してきた。
「違法建築物!」
と赤い文字で書いてある。
「これを塀に貼ってください。事実ですので」
私がシールを受け取ると、建築警察は満足げに帰っていった。
私はシールをゴミ箱に投げ込んだ。
(了)
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