【ショートショート】ポンコツＡＩ日記

　六時十五分、スリープ解除シークエンス開始。解除途中にデフラグが始まる。
　七時五分、起動。「時間かかりすぎ」とご主人様に叱られる。
　朝食をお作りしようとしたが、「もう食べた」と言われる。
　ご主人様は朝ドラを観ている。
　この間に出社の準備を整える。鞄を玄関に置き、靴磨き。
「靴がバラバラだ」
　ご主人様の声にいささかの怒気が含まれる。
　靴磨きのやり直し。
　ご主人様のお供をして出社。電車内で他家のロボットと格闘し、ご主人様の席を確保しようとするも失敗。電車は破損し、運行ダイヤが乱れる。ご主人様は駅長室に拉致される。
　九十分の遅刻。
　ご主人様の上司に遅刻の理由を説明するうちに「長い、もういい」と言われる。
　ご主人様の仕事の補助。ご主人様の仕事はいつも完璧だ。なにひとつ直す点はない。そのまま提出するが、いつのごとく、訂正せよと赤字だらけのデータが戻ってくる。ご主人様に直してもらう。
「遅刻が響き、昼休みがとれなかった」
　ご主人様は機嫌が悪い。ビル内の店内にてチュールを求める。
「オレは猫じゃない！」
　と、ご主人様の機嫌はますます悪くなる。代わりに私がチュールを食べる。気分がすこしハイになる。
　帰りに改札を通ろうとしたら、ブラックリストに入ったとかで入場を拒否される。タクシーにも乗車を拒否される。二時間歩いて帰宅。
　最後の一時間はバッテリーが切れ、ご主人様におぶってもらう。
　帰宅後、ご主人様はぶっ倒れる。ベッドに運び、パジャマに着替えさせていると、「なにか食わせろ」とのご命令。
　コンビニに出かけ、サンドイッチを万引き。警備ロボットに捕まり、格闘となる。コンビニ潰滅。牛丼を見つけ、持って帰る。
　ご主人様は熟睡していた。
　私も自動的にスリープモードに入る。

（了）

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