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【ショートショート】禁断の惑星

 巨大な宇宙船が渋谷の上空に浮かんでいる。ステルス技術のため、姿は見えない。
「あれが第三惑星の生命体か」
「われわれとはかなり異なる存在のようです」
 岩石から進化した宇宙人は半永久的な生命を持つ。
「至急、相違点を調査するように」
 レポートが提出された。
 生命体は自らのことを「人間」と称している。
 二種類の性別があること。生殖の方法。感情の起伏の激しさ。成長の速さ。コミュニケーション方法。群れを作る習性。
 すべて岩石星人にはないものだ。
「われわれとは根本的に生命のあり方が異なるように思える」
 とリーダーは断じた。
「人間の生命をシミュレーションすることは可能か?」
「可能です。さっそくプログラミングを開始します」
 人間をインストールすると、船内の様子が一変した。岩石星人たちに喜怒哀楽が生まれ、プライドや自己肯定感や嫉妬や仲間ハズレや依怙贔屓やいつメンなど、さまざまなものが生まれた。
 第三惑星は岩石星人にとって有害なのか、有益なのか。
 議論は沸騰した。
 議論が沸騰すること自体、かれらには例のないことだ。
 母星に送るレポートは両意見併記となった。
 母星の分析員が出した結論は「理解不能」。
 調査艇には帰還命令が下った。乗員たちは母星に着陸する前に人間をアンインストールされ、徹底的に浄化された。
 第三惑星は「禁断の惑星」に指定された。

(了)

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