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negi_man
【ショートショート】カップル成立?
「別の部屋で呑もうか」
とわたしの左斜め前に座っていた小柄な男が言った。
わたしと男はグラスを持って二人席の個室に移った。
「なによ、いきなり」
とわたしは聞いた。
「酔っぱらいの相手は疲れた」
と男は言った。
「たしかに」
メンバーのなかでノンアルを呑んでいるのはわたしとこの男だけだ。
「話がつまらなくて、頭がクラクラするよ」
「推しの話、嫌い?」
「無難かもしれないけど、知らない有名人のことなんか、聞きたくないね」
「わたしの推しを教えてあげようか」
「やめてくれ」
男は頭を抱えた。
「冗談よ。わたしも推しはいないの」
「助かった」
「そろそろ戻らない? 勘違いされちゃうよ」
「そうかもな」
合コンの席に戻ると、八人掛けのシートは空っぽになっていた。
わたしたちの離脱がきっかけになったのか、バタバタとカップルが成立したらしい。
「こりゃいいや。このまま逃げよう」
「そうしましょう」
男は車でわたしのマンションまで送ってくれた。
「今日は楽しかった」
わたしは首をかしげた。そんなふうには見えなかったけど。
「きみがいたからだよ」
と男はうつむいて言った。
「今度、ノンアル・推しなしの合コンを企画するわ」
「ありがとう。だけど、合コンじゃないほうがいいな」
「え」
「次はサシ飲みしよう」
「それはどういう」
意味? というわたしの言葉を最後まで聞かず、車は闇の中に消え去っていった。
(了)
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