【ショートショート】宇宙戦争
「始まったみたいだな」
と私は言った。
「うん。全面戦争だね」
と言って、妹は窓ガラスを開けた。
明るい夜空が広がる。
ときどき小さな光が明滅している。
「あれは人工衛星だろうな」
「まるで流星みたいね」
私たちはインターネットテレビをつけた。
解説者が、
「いまや戦争の舞台は宇宙空間に移っております」
と言ったところで、画面がブラックアウトした。
人工衛星が壊れたら、当然、電波も消える。
「そのうち、復元するわよね?」
と妹が聞くので、
「無理だね」
と私は答えた。
地上のネット回線はずいぶん前にコスト競争で敗れ、なくなったはずである。
すべての情報網は人工衛星をもとに構築されていたから、宇宙戦争が始まってしまえば、私たちは目や耳はなくなってじまったのに等しい。
私たちは夜空を見つめ続けた。
いつ戦争が終わったのかもわからなかった。
(了)
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