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【ショートショート】得意分野

「あら」
 と妻が言った。
「ミシンが壊れたみたい」
「もう古いからなあ」
「タロウのために雑巾を縫わなきゃいけないのに」
「手縫いは無理か」
「あなたできるの」
 夫は黙って、ミシン会社に連絡した。
「修理してくれるって」
 しばらく待っていると、玄関のチャイムが鳴った。
 黒鞄を持ったロボットが立っていた。
「ミシンの修理に参りました」
「やあ、待っていたよ」
 ロボットはミシンの前に行くと、状態を分析してから分解しはじめた。
 部品がテーブルの上に並んでいく。
「あ、すみません」
 急にロボットの動きが止まった。
「体が動かなくなってしまいました」
 故障らしい。
「代わりの者を呼びます」
「その必要はないよ」
 夫は自分の黒鞄を持ってくると、ロボットの胸を開いた。
「君ならぼくが修理できる。ロボットは得意なんだ」

(了)

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