【ショートショート】彫刻パレード

　郵便受けに町内会からのお知らせが入っていた。
　私の住んでいる街で彫刻パレードが行われるらしい。
　彫刻？
　コスプレではなく？
　イメージが湧かず、私は首をひねった。
　事前準備は必要なく、千五百円を支払えば専門家がパレードをできる状態にしてくれるそうだ。
　当日、私は冷やかしのつもりで出かけてみた。
　準備を行う会館がある。地下に彫刻部屋がいくつも用意されていた。千五百円を払うと、
「この液体をお飲みください」
　と白濁した液体を渡された。
　ごくんと飲み干して数分。
　徐々に体が動かなくなってきた。
　皮膚が石になったみたいだ。
「こちらへどうぞ」
　私は彫刻室に案内された。
　ノミを持った彫刻家が私の体を削り始めた。贅肉をどんどん落としていく。
　三十分後、私はロダンの「考える人」みたいな彫刻になっていた。
　関節部分は動くみたいで、私はぎくしゃくと外に出た。
　パレードが始まった。私のような彫刻が列をなして坂を下っている。楽団や屋台も出て、あたりは大賑わいだ。
　奇妙なパレードが終了し、私はまた準備会館に戻ってきた。
　今度は透明な液体を渡され、体が元に戻った。いや、その言い方は正しくない。私の体は贅肉の落ちた見事な筋肉質に変わっていたのである。

（了）

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