【ショートショート】読めない手紙
手紙が届いた。しかも手書きだ。
中身がよくわからない。
アルファベットではない。漢字っぽいが、どうにも解読できない。
父さんも母さんも、
「そんないたずらをする友だちはいない。おまえ宛だ」
と決めつける。
ぼくにだっていないのに!
手紙は、何通も来た。週に一度のこともあれば、三日に一度のことも。
束ねた手紙に目を通し、誰からの手紙だろうかと考える。
ふと、未来からではないか? と思いついた。
だって、未来なら言葉が変わっていることもありうる。まるで瞬間移動のように郵便ポストに到着することを考えても未来っぽい。
ぼくは大学で未知の言語の研究をした。幸い、データはどんどん増えていく。
数字が判明した。
「2032年6月3日」
この日になにか起きるのか。もうすぐじゃないか。
「よく出てくるこの文字は交通事故じゃないかな」
と教授が言った。
その日、ぼくは家に引きこもった。
なにも起きなかった。
手紙もぱたりと止んだ。
死ぬはずのぼくが死ななかったことによって、未来が切り替わったのかもしれない。
あなたの家には読めない手紙は届きませんか?
(了)
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